
J.ディーヴァー/ソウル・コレクター 上 文春文庫

J.ディーヴァー/ソウル・コレクター 下 文春文庫
↑本作では、狡猾極まりない難敵を向こうに回すことになるのだが…或いは「非常に怖い話し」でもある…
冒頭…或る事件の様子が描かれる…少し親しくなった男性と、自宅で過ごしている女性が、豹変した男性に襲撃され、購入したばかりの絵画を奪われるという事件だった…
冒頭の事件から少し経った頃…リンカーン・ライムは、苛々としながら電話連絡を待っていた。一度ニューヨークで取り逃がした経過の在る殺し屋の“ローガン”が、何やら英国で“仕事”をしようとしているらしいという情報が在った。アフリカでの不正な武器取引等の事案の重要証人である牧師が、移動の途中にも襲撃されて命を狙われるという危険な状況で英国入りしたのだが、問題の“ローガン”はその人物を狙っていると言われ、英国の捜査陣を中心に、フランスの捜査員や英国駐在のFBIの要員も参画して対策が講じられているところだった。ライムはその窓口となっている英国の捜査員がらの連絡を待っていたのだった。
と、そこに待っていたものとは異なる情報が寄せられる。従兄弟のアーサーが逮捕され、その身は拘置所に在るという。罪状は、有罪であれば「25年の懲役」も在る得る強盗殺人で、数々の証拠も在り、有罪は免れ悪い状況なのだという。この従兄弟のアーサーやその妻とは疎遠になっていたのだが、従兄弟の妻のジュディ―が訪ねて来て、事案に関して可能で在れば調べて欲しいという依頼を受けた。
とりあえずアーサーが逮捕された事件に関して調べた。女性が殺害され、絵画が奪われた直後、「悲鳴を聞いた」という旨と、「男が車で逃げたように見えた」という旨に車のナンバーの一部を添えた匿名の警察への通報が入り、ライムの眼で視て「揃い過ぎている…」程の証拠が続々と出て来て、アーサーの逮捕に至ってしまったのだという…アーサーは「全く身に覚えが無い!!」と強く訴え、未だに犯行を否認しているという…
ライムのパートナーであるアメリア・サックスは、過去の事件をよく記憶していることで部内に知られている楼刑事に電話連絡をしてみた。①事件直後に通報、②通報に基づいて捜査を始めると、続々と証拠が出る、③証拠に基づいて逮捕に至った容疑者は犯行を強く否認という特徴に該当する事件に関して尋ねた。すると老刑事は直ぐに思い当る事例を挙げた。
ここでライム達は、被害者に巧みに近付いて犯行に及んだ後、容疑から逃れ難い証拠を準備して第三者の犯行ということにしてしまう、恐るべき犯罪者の存在に思い至った。そしてプラスキー巡査を警察の資料室に送り込み、「他にも類似事例は?」と調べ始めると“事件”は起こった…
事件の起こった5月22日に因み、“未詳522号”と仮称、通称されることになった犯人の影をライム達は必死に追うが、他方で“522号”は反撃を試みる…捜査の過程で登場する<SSD>という、途轍もない情報関係企業…“情報”を武器に、異様な犯行を繰り返す“522号”の正体は?
という物語なのだが、例によって二転三転しながら、ライム達は“522号”の正体に迫ろうとする…或いはこの“522号”…ライムのシリーズに登場する犯人達の中で「極めつけにとんでもない奴…」かもしれない…
“522号”を追う展開の他方、ライムが従兄弟と疎遠になってしまった経過等、本人の過去の物語が綴られるのも少し興味深い…
本作では、ライムが“ルーキー”と呼ぶ若い巡査、プラスキーが活躍する。プラスキー…気に入っている劇中人物なので、少し力が入った…
各種の個人情報を操って、様々な犯罪を繰り返す“522号”の暗躍と、それを追うライム達捜査陣という物語の他方…「“情報”が盲目的に信用されるようなことになっていないか?」とか、「“情報”に囚われて、真摯に人間と向き合っていない傾向は無いか?」とか、「安全や平和のため、何処まで“情報”は利用して差し支えないのか?」というような、何か「現代社会の少し大きなテーマ」を考える材料のような要素も在るように思った…



