「翻訳の小説」というモノだが、「余り好きになれない作品」も多々在る他方、読み始めると「停まらなくなる!」という作品も多々在る。「翻訳が登場」というのは、「原語版が出ている国で好評を博している」ということ、更に「各国語版が登場して、各国で話題になっている」ということの“証明”のようなものかもしれない。だからと言って「好きになれない」可能性からは免れ得ないとは思うのだが、概して翻訳の小説は「評価が一定程度高いだけに面白い」という場合が多いと思う。
↓『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ』は、原語は英語だが、米国や英国でトップセラーになった他、翻訳版が各国で登場し、各国で話題になっているシリーズの第一作なのだそうだ…

フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ 上

フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ 下
↑「大ベストセラーで近く映画も…」と聞き付け、入手して読み始めたのだが、何か「嵌って」しまい、「それからどうした?どうする?」とどんどん読み進めてしまった…
基本的には…本作は“メロドラマ”というような物語だ。女性読者の支持が高いらしい…が、男性読者である私も一寸嵌った…本作は主に主人公の女性の目線で綴られている物語である…
アナことアナスタシア・スティールは、卒業を間近に控えた大学生である。試験等も行われている期間にも拘らず、アナは車を飛ばして出掛けていた。ルームメイトでもある親友のケイトから大切な用事を頼まれたのだ。
学生新聞の編集長としても活躍中でジャーナリスト志望のケイトは、ワシントン州ではなかなかに有名な若き実業家へのインタビューの約束を取り付けていた。若き実業家クリスチャン・グレイは、間もなく迎える卒業式で学位授与者の役目も頼まれていて、大学にも多額の寄付をしているという人物である。ケイトは何ヶ月間もクリスチャン・グレイの会社と連絡を取り続け、漸く約束を取り付けたが、肝心のインタビューの日に風邪でダウンしてしまったのだ。
何としてもクリスチャン・グレイの記事を学生新聞に書きたいケイトは、アナに“代役”を頼んだ。ICレコーダーとインタビューの質問リストを持たされ、アナはシアトルに在るクリスチャン・グレイの会社へ向かった。会社に着いてみて、風邪で動けなくなってパニックに陥ったケイトに、訳も解らずに“代役”として送り込まれてしまったことに思い至り、アナは焦る…
アナはクリスチャン・グレイに会うことが出来た。そして魅せられた。大変な成功を収めた実業家でありながら、未だ若く、不思議な魅力を湛えた素晴らしい美青年だった。が、アナは「住む世界が違う」としか思えないクリスチャン・グレイ―経済的には普通な家庭の出であるアナに対し、クリスチャン・グレイは想像し難い程の大金持ちである…―に会うことなど、二度とも無いであろうと思っていた。
何とか済ませたインタビューの代役の数日後、アナがアルバイト先のホームセンターで普段のように仕事をしていると、驚いたことに「二度と会うことも…」と思っていたクリスチャン・グレイが買物に現れたのだ。
これ以降、クリスチャン・グレイは頻繁にアナと接触することになる。そしてアナはクリスチャン・グレイに強く惹かれていることに思い至る。そしてクリスチャン・グレイは、アナに「とあるオファー」をする…
アナとクリスチャン・グレイがどうして行くのか?どうなって行くのか?というのが物語の軸である。クリスチャン・グレイの「オファー」とはどのようなものか?それを受けるアナはどう考えるか?アナが見出そうとするクリスチャン・グレイが秘めているものとは?
という具合に「読ませどころ満載」で、2人の物語が進むのである。これは「嵌る」ことを免れ悪い…
本作の物語はワシントン州のバンクーバーという街、シアトル、更にオレゴン州ポートランド等で展開している。本作を読んでいる途中に思わず調べてしまったのだが…“バンクーバー”は探検家の名前に因むもので、より広く知られているカナダの街よりも古い歴史を有しているそうだ。そして州境を跨いだポートランドの“近郊”とか“大都市圏”の一画を成している。そういう訳でポートランドが出て来る。そのポートランドとシアトルとは250km程度離れている。物語の冒頭で、アナは早朝にバンクーバーからシアトルに車を飛ばすことになった…そしてポートランド・シアトル間については、劇中に「ヘリコプターで移動」という場面も登場している。
本作を読んでいると…「“英語”ってこういうものだな…」と思えることが在った。例えば、“アナ”、“アナスタシア”、“ミス・スティール”とか、“ミスター・グレイ”、“クリスチャン”というような「“呼び方”の違いに滲む“ニュアンス”の変化」が多用されているように見えた。どんな言語の小説にも、多かれ少なかれ見受けられる事なのだが、本作はアナとクリスチャン・グレイの「“関係性”の進展」が物語の軸であるだけに、気付く程にこうした事が目立つのであろう。
或いは本作はクリスチャン・グレイの「オファー」に関連する描写等が話題になり易いのかもしれない。しかし本作は、寧ろ地味な、純朴な女子学生が、経済生活の上でも個人的嗜好の上でも「知られざる世界」の住人である青年実業家と出会ってしまったことで生じた“心の漣”、逆に青年実業家が「自身の経験や理解の範囲から逸脱している」若い女性に出会い、どうしようもなく惹かれていることに気付かされた“戸惑い”というようなものが、肝要な事柄と考えるべきであろう…
本作の展開を楽しんだ上は…既に登場しているという“続篇”が是非読みたい!!