↑8つの中篇が集められたかのような体裁に見えるのだが、これが「一連の物語」となっている。実質的には長篇だ…
本作は、「特異な状況」という程のモノが描かれているのではない…言ってみれば、「普通の働く人達やその家族」の物語ということになる…そういう「普通な物語」の中に“謎”めいた、「何か釈然としない」が残り、積み上げられて行く中で「大変だ!?」という事態が劇中人物達に突き付けられることになっていく。全体としては、「少し個性的な味付けのミステリー」ということになると思う。
本作の主要な舞台となっているのは“東京建電”という会社だ。大手家電メーカーの子会社で、色々なモノを製造して売っている会社だ…
第1話の視点人物は、“東京建電”の営業部で課長を務める男だ。同じ部の隣の課に、「トップセールスマン」と目され、最年少で課長に昇進したという人物が在る。その課には、“万年係長”で色々と評判の好くない曲者社員が居る。或る日、件の万年係長が「トップセールスマン」と目される課長を“パワハラ”で社内の委員会に訴えた。殆ど例が思い当たらないような出来事だった。そして、社内の委員会では「トップセールスマン」だった課長を“人事部付”という型で職から外してしまった。社内では驚きと共にその報せが知られた…何が在ったのか?
第2話の視点人物は、大阪の老舗の町工場を、父の急逝を契機に受け継いだ男である。“東京建電”の仕事を請け負っていたが、過酷に過ぎる価格を要求され、それが容れられなかったことから仕事を失って苦労していた。そこに“東京建電”の「新しい担当者」という人物が現れる。そして、止めてしまった取引を復活させ、それどころか増産を望むという思い掛けない話しになった。そこにどういう事情が在ったのか?
こういう具合に各話が積み上げられて行く…各話共に、劇中人物達の務め、人生、出くわしている出来事が描かれている。そして、第1話、第2話で提示される「一寸、妙??」な事態の真相に少しずつ近付いて行く…
実際に「とあるメーカーで、本作のような事態が在れば?相当に大変という表現では済まないような大騒ぎになるであろう…」というような事態が進展する他方、「人と仕事」、「仕事と社会」、「家族」、「それらの中での人間」というテーマが淡々と掘り下げられるような物語が展開している…
本作はテレビドラマ化された経過も在ったらしいが…或いはそういうモノの原案として妥当かもしれない…色々と考えながら、同時にかなり愉しく読了した…




