『スカーフェイス4 デストラップ 警視庁特別捜査第三係・淵神律子』

“淵神律子”というヒロイン…格闘技や射撃に優れ、車の運転も上手く、「アクションドラマのヒロイン」という感の女性刑事なのだが、周囲との折り合いが悪く“左遷部署”と陰で揶揄される係に在る。“敏腕刑事”という表向きの顔の他方で「些かのアル中の傾向…」という個人的な悩み、父親との不和、同居している看護師女性との微妙な関係や、看護師女性が抱える個人的な問題の件等、色々と在る。そういう中、“左遷部署”という中で独特な存在感を示す年長の円や、同期で最も冴えない感じながら彼女を慕って行動を共にする「実はキャリア…」という若い藤平と共に様々な難事件に挑んでいる。“淵神律子”というヒロインは、凶悪な連続殺人犯と組み合う羽目になり、顔に負傷してしまった経過も在り、半ば揶揄的に「スカーフェイス」というニックネームも在るという設定も在る…

そんな“淵神律子”というヒロインに第一作で出くわし、難題に挑む感の第二作を愉しみ、“相方”の藤平が個人的に受けた頼まれ事が契機にとんでもない事件の真相を暴くことになる第三作を愉しく読了した経過が在る。

↓「シリーズの第四作」という本作の登場を知り、本に出くわして手にし、夢中で素早く読了に至った。

スカーフェイス4 デストラップ 警視庁特別捜査第三係・淵神律子 (講談社文庫)



↑この作者の作品が原案になったテレビドラマは幾分在るようだが、本作もそういうような感じ、何か「映像が何となく思い浮かぶ」というような物語だった…

形式的には捜査一課の傘下ということになっているが、庁舎地下の書庫脇にオフィスが設けられ、古い資料の整理を専らとするということになっている<第三係>である。定年間際で、数年間の身の置き所が無いような者が回される“左遷部署”と揶揄されている。

この<第三係>に坂東という男が在る。日頃、株式の情報に関心を寄せていてイヤホンで株式情報のラジオを聞いてばかりいるというような男なのだが、この男が淵神律子や藤平に「頼まれて欲しい事が在る」と言い出した。淵神律子や藤平、更に円も驚いた様子が伺えるが、坂東は近所の児童養護施設に個人ボランティアとして、少し熱心に協力していた。虐待を受けるなど、家庭的に恵まれない児童生徒を支援して自立して社会に出ることを支援するという施設である。坂東は少額ながら永年に亘って寄付を続けていて、催事の際には足を運んで手伝うというようなこともしていたのだ。この坂東が、真剣に悩んでいる施設の園長を何とか助けたいと言い出したのだ。

この施設の卒業生である鷺沢鈴音が連絡を絶ってしまって少し時間が経つのだという。出生届も出ずに戸籍が無いという虐待被害児童であった鷺沢鈴音については、児童養護施設の園長が「鈴音」という名を与えて戸籍を作って懸命に面倒を見ていた。学校に通う機会を得られずに育ったという不幸を負い、漢字の読み書きが不得手というようなことは在ったものの、明るく素直な若い女性に育ち、施設を卒業して勤めていたパン屋では評判も好かった。その鈴音が連絡を絶ってしまって時間を経て、施設の園長は酷く哀しみ、安否を案じているのだという。それを聞いた坂東は、淵神律子や藤平に「頼まれて欲しい事が在る」と言い出したのだった。

淵神律子や藤平は、坂東の申し出を契機に児童養護施設の園長に話しを聞いて、この鷺沢鈴音の件を何とかしてみようと強く思う。そこで「個人的に受けた頼まれ事」という体で、この鷺沢鈴音の件を調べ始めた。

調べて程無く、パン屋勤務の鷺沢鈴音は夜の店で週末にアルバイトを始め、アルバイトを始めた場所で別な場所に移るというようなこともしていたという事実に淵神律子や藤平は出くわした。そして、程無く別な殺人事件の現場に鷺沢鈴音に連なる情報が出ている事を知る羽目に陥る…

淵神律子は同じ係で仕事をしている者の「意外(!?)な一面」を介して或る不幸な若い女性の人生に触れることになるが、この女性と行動を共にすることになった人物、そしてその人物の周辺の様々な事柄と向き合って行くことになる。

或いは、このシリーズの過去作を通じて「最も拡がりが…」という事案かもしれない…なかなか面白く読了し、同時に次回作以降が酷く愉しみになった…

『土方歳三』

“時代モノ”に出て来る「史上の人物をモデルにした劇中人物」というのは多々在るが、そういう中に「人気の高い人物」という存在が在る。

「土方歳三」は間違いなくそういう「人気の高い人物」の例として挙げられると思う。そして、彼の周囲や同時代の人達も自ずと登場頻度が低くはない…

↓その「土方歳三」に正面から向き合った時代モノの小説に出逢った…

土方歳三 上 (角川文庫) [ 富樫 倫太郎 ]



↑極若かった時代に試衛館に出入するようになり、<浪士組>ということで京都に出る辺りまでの上巻…

↓<浪士組>が<新選組>ということになって、その<新選組>の経過が描かれる中巻…

土方歳三 中 (角川文庫) [ 富樫 倫太郎 ]




↓戊辰戦争の局面に至り、箱館での戦いに身を投じて行く経過が描かれる下巻…

土方歳三 下 (角川文庫) [ 富樫 倫太郎 ]



↑3冊で1作を成す、土方歳三の半生の物語…一気呵成に読了した!

土方歳三が出て来るような物語…幕末期の物語ということになるが、そういうモノには種々触れている。だから「史上の土方歳三が辿る経過」は粗方記憶している…そして土方歳三の周辺の、或いは同時代の様々な人物に関して「あの人はこういうような経過を辿る」というのも粗方知っている。それでも時代モノの小説は、各々の作者による創造の余地が多々残っていて、色々な描かれ方が在るのが面白い…

聞けば、土方歳三の半生を辿るような物語に関しては、過去に人気が高い作品が幾つも在ることから、作者は土方歳三を作中人物として取上げた過去作品は在っても、敢えて中心にして正面から描く作品を綴っていなかったらしいが…「やってみよう…」と思い至ったようだ。その試み…成功している!

作者の側にそんな意図は全く無いとは思うが、偶々同じ作者による、幕末の長州に関する作品を読んでから日が浅かったので、「同じ時代を“表裏”の双方から観る」というような感覚も少し沸き起こった…

>>『風の如く』

本作の土方歳三…「こういうようになっているものなのだ!」ということになっても納得出来ないということが多く、そのうちに喧嘩になってしまう。喧嘩になってしまえば絶対に負けたくないと戦う。器用に世の中を渡ることが出来るでもない。そして「一人前の武士に…」というような思いを抱いて行く…

本作での土方歳三は、近藤勇と共に歩むが…近藤勇が刑場の露と消えてしまった後、榎本武揚が共に歩む同志というように描かれる。また箱館で散る伊庭八郎は、作中の早い時期から縁が在る人物として登場している…

或いは「土方歳三の半生」というようなモノは、古くからの時代モノのファンや歴史好きには「御馴染み」かもしれない。そして古くから在る様々な作品が引合いに出されることであろう…が…これは「現在の解釈」としての「土方歳三の半生」という作品で、「未来に至って引合いに出される名作」というようになって行くと思った…

非常に愉しく読んだ!!

『風の如く』

多少、分量が多目な“大河ドラマ”的な“時代モノ”の小説…紐解き始めて、何となく面白いということになると、頁を繰る手が停まらなくなり、休日等を利用して「一気に!!」という具合に読了に至ってしまう場合も在る…

↓3冊の文庫本から成る作品…或る程度、史実に依拠した内容で、史上の人物を明確にモデルとした劇中人物達が活躍する訳で…「あの件…あれはこういうことになって…」と「全く知らない訳でもない…」という内容が在るのだが…それでも、なかなかに魅力的な造形が施された各劇中人物達のことが気に掛かり、引き込まれてしまった…

風の如く 吉田松陰篇 (講談社文庫) [ 富樫 倫太郎 ]




風の如く 久坂玄瑞篇 (講談社文庫) [ 富樫 倫太郎 ]




風の如く 高杉晋作篇 (講談社文庫) [ 富樫 倫太郎 ]




↑近年の「嘗てより文字が大き目?」と思える文庫本で、各巻は厚目ではあるが…紐解けば存外に素早く読了に至ってしまう感だ…

上巻が「吉田松陰篇」、中巻が「久坂玄瑞篇」、下巻が「高杉晋作篇」と銘打たれている。何れも幕末期の長州の人達だが…各巻でキーパーソンとなるような人物の名が「〇〇篇」というように登場しているのだが…他方で吉田松陰の「憂国の激情」というようなモノが、門下でもある久坂玄瑞へ、彼が<蛤御門の変>で斃れた後は高杉晋作へと受け継がれたということを象徴しているのかもしれない…

各篇の呼称に取上げられている吉田松陰、久坂玄瑞、高杉晋作は作中で色々とその言動が綴られ、大きな存在感を示しているのだが、本作の主要視点人物、主人公的な存在は作者が創り出した「史上の人物として伝わっているでもない、長州のとある武士」という感の人物である風倉平九郎である…

風倉平九郎は、村々の事務を扱う代官を勤めた父親が処分を受けて一家が生活に窮したことから、城下を離れてとある村で百姓同然の暮しをしていたという若者である。彼は吉田松陰の年長の友人である白井小助と出くわしたことが切っ掛けで、松下村塾に学ぶことになる。

そういうような辺りから物語が起こり、平九郎が松下村塾で出会う人々や、或いは大変魅力的な教育者で、過ぎる程に純粋な思想家であった吉田松陰の行動等が描かれるのが「吉田松陰篇」である…

吉田松陰が刑死してしまった後、彼の「憂国の激情」というようなモノは、吉田松陰の妹である文を妻としているので“義弟”ということにもなる久坂玄瑞が引き継ぐような感になる…「大物の志士」というような感になって行く久坂玄瑞だが、<蛤御門の変>へ向かって行く動きの渦中で散ってしまう…そして平九郎は村田蔵六(後の大村益次郎)に師事する等、色々と身の回りの動きがあるが、久坂玄瑞と行動を共にし、京都での戦闘に参加したが…何とか生き残る…これが「久坂玄瑞篇」だ…

<蛤御門の変>の後、<四国艦隊下関砲撃>や<長州征伐>と長州の苦難は続く。そういう中で立ち上がって行くことになるのが高杉晋作である。色々な事態を乗り切ろうとする中、長州の中での激しい内訌も発生し、それを解決するという課題も生じる。更に幕府の「長州再征」という動きの中、<薩長同盟>に関連する動きが在り、そして病を得た高杉晋作が命を削って奮戦する<四境戦争>が在る…平九郎は、松下村塾時代には兄のような存在でもあった高杉晋作と行動を共にしている…これが「高杉晋作篇」だ…

ハッキリ言って「長州の人達の目線で語られる幕末の物語」としては…本作は「最も爽やかで読み易い」というような感じがする…本作を読んでいると…作中に出て来る萩や下関を訪ねてみたいというような気分も沸き起こった…

『スカーフェイス2 デッドリミット 警視庁特別捜査第三係・淵神律子』

↓これは昨年読んだ作品…「シリーズ??」と思わせる内容が在ったのだったが…
>>『スカーフェイス 警視庁特別捜査第三係・淵神律子』

↓ヒロインの淵神律子が還って来た!!

スカーフェイス2 デッドリミット 警視庁特別捜査第三係・淵神律子 (講談社文庫) [ 富樫 倫太郎 ]



↑「生き埋めにされているらしい被害者を救出?」と48時間というタイムリミットを意識しながら、全力で捜査を続ける顛末が描かれる物語で、頁を繰る手が停まらなくなってしまい、素早く読了に至ってしまった…

ヒロインの淵神律子…容疑者との格闘で負った傷が顔に残り、“スカーフェイス”という綽名も在る女性刑事だ。捜査一課に在ったが、実質的に資料整理係である“左遷部署”の「特別捜査第三係」に異動ということになっていた。前作では、この係で出会ったキャリア入庁で新人刑事同然の若手である藤平や、大ベテランの資料調査等の得意な円という仲間と独自に謎の連続殺人犯を追っていた…

本作…淵神律子は捜査中の負傷が癒えて、警視庁に出勤した初日だった…資料の書庫が在る地階に設けられた特別捜査第三係に顔を出すと、係の面々が歓迎してくれたのだが…「直ぐに捜査一課へ来るように」という伝言が在るので、とりあえず顔を出すという話しになった。

捜査に臨んでは荒っぽい手法も厭わずに、独断専行で動くという、行動が問題視される場合も在った淵神律子だが、負傷治療から戻ったばかりであり、捜査一課に呼ばれる事由が思い当たらなかった。行ってみると、取調中の容疑者の面通しをする小部屋に案内された。取調室に中年の男が在ったが、その男を知っているかと尋ねられた。淵神律子には、全く記憶に無い人物だった。

淵神律子が事情を聴けば、取調室に在る中年男はその朝早く「淵神律子に渡せ」とモノを持って警視庁現れた。モノは遺体から切り取られたと見受けられる人体の一部であり、ノートパソコンとイヤホンだった。ノートパソコンの画面には、生き埋めになっているらしい女性の様子が映し出されていた。

この生き埋めにされているらしい被害者を救出し、取調室に在る男の正体や、起こっている事態の解明のために捜査体制が組まれ、淵神律子は藤平や円にも手伝わせることを認めるという条件で捜査に参加することになった。

ノートパソコンの画面が示すモノを視る限り、女性を埋めている犯人は48時間で酸素が無くなってしまうようにしているように見受けられたので、何とか2日で解決を目指さなくてはならないということになった。淵神律子は活動を開始する…

埋められた被害者の身元、正体不明の中年男が持ち込んだ人体の一部の身元というものが、存外に速く明らかになった。多少不思議な感だったが、そこから突破口を開こうとする。奇怪な事態の背後に在る、犯行に及んでいる者の意図は何か?淵神律子がのめり込むように捜査に打ち込む他方、彼女の身近な人達の身にも普通ではない状況が発生していた…

というような物語である…概ね時系列で2日間の出来事が、淵神律子達が解き明かして行く事件の事情が綴られている…

前作では…「かなり個性的な女性捜査官」という感の淵神律子の人物像を打ち出しながら、謎の連続殺人犯の意図を読み解いて正体に近付いて行くという趣きだったが…今作はその淵神律子の人物像を巡るような部分は殆ど無く、数少ない感でもあり、敢えて示されている感でもある手掛かりから事件の背景を解き明かして行くという部分が殆どである…その展開に引き込まれてしまう…

恐らく…「次」も在るような最終盤の描写も在ったので、そのうちにヒロインの淵神律子と再会出来るかもしれない…

『白頭の人 大谷刑部吉継の生涯』

「史上の人物」には色々な人達が在って、それをモデルにした劇中人物が活躍する“時代モノ”の小説等にも様々な作品が在る。そういう作品を介して、様々な人生、生き様に出逢うことが興味深い…

↓こういう作品に出会った!!

白頭の人 大谷刑部吉継の生涯 (中公文庫) [ 富樫倫太郎 ]



↑連休の最中に見付けた一冊で、なかなかに引き込まれるモノが在った…

大谷吉継…或いは官名に因んで大谷刑部…(同時代の人達には、多分「刑部殿」、「刑部様」という具合に呼ばれていたのだと想像する…)かの石田三成と親しかったとされ、<関ヶ原合戦>では石田三成の西軍に参画して活躍し、討死してしまったと伝わる…怜悧な能吏だったとされる石田三成に対し、なかなかの好人物であったともされる…そして、病を得て面貌が崩れてしまうという状況であったために、頭巾や覆面を何時も着用していたとも伝わる…

そういう大谷刑部吉継は、“時代モノ”に色々な形で登場している。主人公格になっていた作品も記憶に在るのだが…本作は彼を主役にした物語としては、最も深くこの人物を描いているかもしれない…

本作は「大谷刑部吉継の生涯」と在るが、近江で大名となった羽柴秀吉に仕えるようになる頃から、<関ヶ原合戦>で討死するまでの事柄が展開し、病を得たことで揺れ動く内面と合わせて劇的に綴られている…

病を得たのは、若き日に使いに出た先で捕えられて不潔な環境に幽閉されてしまったという原因が在ったらしいという描写が在る…そして彼は、若くして髪が薄くなって白髪も多くなっていたことから<白頭>という号を時々用いるようになる。それが本作の題名の「白頭の人」である。

病を得て、「生き続けること」に苦悩するのだが、「それでも力尽きるまで生き続けよう」ということになって行く…彼の病は不運だが「そういう状況でも!」と思うようになって行く辺りが、本作の面白さだ…

加えて…羽柴秀吉(豊臣秀吉)の下に少年時代から在って、後年活躍した人達の中には勇猛な武将も能吏も在るが、その中で大谷刑部吉継は「誰よりも勝るのでもないが、誰にも劣るのでもない」という独特な存在感、そして誠実さによって頭角を現すことになる…そういう辺りも面白い…

本作を読んで…不運な状態であっても「力尽きるまで生き続けよう」ということになる主人公や、彼を支える周囲の人々に何か共鳴するものが在った…「生かされていることに感謝」というような境地と表現すれば善いだろうか?勇壮な合戦が展開する戦国時代モノというよりも、人生を問う物語という感だ…

『スカーフェイス 警視庁特別捜査第三係・淵神律子』

↓書店で見掛けて…「女性刑事が活躍する事件モノ…」と直ぐに思い、同時に幾多の作品を読んでいる作者の作品と気付き、入手して読み始めた…

スカーフェイス 警視庁特別捜査第三係・淵神律子 (講談社文庫) [ 富樫 倫太郎 ]



↑紐解き始めると…ページを繰る手がなかなか停められない…という感じになり、「続き!」が気になってドンドン読み進めてしまい、素早く読了に至った…

警視庁捜査一課の女性捜査員である淵神律子は、連続殺人の容疑者と見受けられる人物と格闘して切り付けられて負傷してしまった際、頬に傷を受けてしまったことから“スカーフェイス”というニックネームを持っている…傷跡が判り悪いような整形という手段は在ったが、「ベガ」と呼び習わされるようになっていた容疑者を逮捕したいという想いを忘れぬため、そういう措置を拒んでいた…

淵神律子は、格闘術や射撃に優れ、自動車の運転も巧い行動派だが、行動を共にする同僚が重い怪我を負ってしまうというジンクスが在った…自身が顔に傷を受けた際には、同僚が深刻な負傷で歩けなくなり、退職してしまったという経過さえ在った…

そんな淵神律子…“特別捜査第三係”に「左遷」されたことを契機に「ベガ」の謎を解くことに挑み始める…

一口に言えばこういうような感じで…「ネタばれ」が迷惑千万な物語なので、これ以上は仔細を綴ることは、寧ろ忌避すべきであろう…

ヒロインの「複雑な造形」が、御本人の目線や、ルームシェアの同居人の目線等で描き込まれ、他方で謎が多い事件の推理が進む…

本作は「“シリーズ”にもなり得る?」という具合で終わっている…或いはこの淵神律子との「再会」も在るかもしれない…

<SRO episode 0 房子という女>

↓人気シリーズの、「半ばスピンオフ」で「半ば外伝」というような存在感を持つ作品だ…

SRO(episode 0) [ 富樫倫太郎 ]



↑非常に興味深く読了した…

<SRO>のシリーズは、現時点で6作在る。“時系列”としては5作目と6作目との間の出来事なのだが、内容は<SRO>の物語の以前に遡っている。そこで<episode 0>というように銘打たれているのであろう。

本作だが、多分<SRO>シリーズに親しんでいた方が興味深いとは思うのだが…単発作品としても、負傷して拘置所内の医療施設に横たわる凶悪な女性犯罪者の所へ捜査員が訪ねて、その謎に包まれた人物像を知ろうと本人の過去について尋ね、本人がそれを語っているような内容だ…非常にダークな内容の物語として、単発での面白さも在る…

本作の主人公は、<SRO>シリーズに登場する「最凶の敵」とでも言うべき“近藤房子”である。第5作の物語で捜査班の面々に挑み、負傷して逮捕されたという状況で、拘置所内の厳重に警備された医療施設に収容されている訳である…

<SRO>?これは「広域捜査専任特別調査室」という、室長を務める山根新九郎の発案で設けられた捜査班だ。各県警の管轄を越えて発生している可能性が在る連続殺人等の事件を調査するということで始められたのだが、捜査班は「はみ出し…」という按配になっているキャリアの刑事ばかりが集まっていて、7名の小さな部署に階級がかなり高い者ばかりが集まってしまっているという異色なチームだ…

この<SRO>が発足し、調査活動が開始された中、山根は各県警の管轄を度外視して、共通の特徴を有するような身元不明遺体の発見事案を調べ始める。調べてみるとそういうケースが在って、「広域的に殺人を繰り返している連続殺人犯(シリアルキラー)の存在」という可能性を発見してしまう…

この「広域的に殺人を繰り返している連続殺人犯(シリアルキラー)」を探して捕えなければならないと活動する中、<SRO>が発見したのが薬剤師の近藤一郎・房子夫妻だった。<SRO>は近藤一郎が凶悪な犯罪を繰り返していると視て、逮捕を目指す。

<SRO>は近藤一郎の凶行を食い止めようと彼を追い詰めたが、止む無く彼を射殺してしまう。そういう出来事等が在った中、犯行は夫妻の手で行われていて、寧ろ妻の房子が主導的に行っていたということに<SRO>は気付き、やがて房子が逮捕された。

近藤夫妻の禍々しい犯罪が伝えられる中、房子は一部から<キラークイーン>等と呼ばれ、妙なカリスマのような存在になっていた。そうした中、護送の際に協力する者が現れて房子は脱走してしまった…

近藤房子は、逮捕に至る道筋を着けた<SRO>を憎み、彼らに挑みかかる。そして対決し、負傷した状態で逮捕されてしまう訳だ…

こういうような「<SRO>VS近藤房子」というのが、シリーズの“柱”のようになっている側面が在り、その近藤房子を掘り下げたのが、本作<SRO episode 0 房子という女>だ…

最初の方は…幸せでもない生い立ちの中、犯罪に問われるということから逃れるような型で事件を起こしてしまうのだが、次第にそこに“快楽”のようなモノを見出して行動をするようになって行く…そして、そういう最中に近藤一郎とも出会い、行動を共にするようになる…何か「不気味な力」に引き込まれるようにして、勢いよく読み進んでしまった物語だった…

「生活安全課0係」シリーズ

「愉しいシリーズ」に出くわし、何やら文庫で既刊の4作品を入手し、連休の前から連休の期間で一気に読了してしまった…

ユニークな設定のミステリーという感じだ…

↓第1作

ファイヤーボール [ 富樫倫太郎 ]




↓第2作

ヘッドゲーム [ 富樫倫太郎 ]




↓第3作

バタフライ [ 富樫倫太郎 ]




↓第4作

生活安全課0係 スローダンサー [ 富樫倫太郎 ]




杉並中央警察署に生活安全課総務補助係、通称「何でも相談室」という妙な部署が、年度途中の不自然な時期に設立された。署内では「0係」、「“0”なモノは幾つ掛け合わせても“0”」と揶揄される、一種の“左遷部署”の様相を呈していた。警察署に持ち込まれる、市民からの苦情めいた雑用を足す係となっていたのだ。ここに、「現場勤務」を熱望していた20代半ばで警部というキャリア警察官、小早川冬彦が赴任して来る。

冬彦は科警研で研究職ということになっていたのだったが、警察の裏金に関することを報道等から考察してレポートを纏めた。それを「会心の出来!」と上司に提示したところ、警察庁に呼び出され、レポートに関しては忘れてくれと言われる。「その代わり…」と希望する現場の仕事に就けるということで杉並中央署に赴任したのだった。

冬彦は「どういう経緯か判らないが“島流し”なキャリアの警部殿」と見られるのだが、本人としてはそんなことは一向に気にならず、「望んだ現場の仕事」と張り切る…

冬彦は犯罪学の様々な深い知識を有していて、対峙した人物の反応から心情や人物の背景等を読み取るようなことを得意としている。他方で、所謂「空気が読めない」ような一面が在り、思うことを正直に口にし過ぎて摩擦も多い。また車の運転は完全なペーパードライバーで、「危ないから運転はさせるな!」という具合で、武道や逮捕術も苦手で、射撃は練習時に1発目の発射音に驚いて、2発目を壁に撃ち込んでしまい、練習場で「信じ難い奴が居た…」と伝説になっている程に下手くそだ…実に極端で、何か飄然とした若きキャリア警部なのだが、係の仲間達と共に色々な出来事に関わって行くことになる。

第1作では、連続放火事件や、暴力団幹部が背後に居る違法カジノを巡る捜査情報の漏洩というような案件に取組んでいる…

第2作では、「高校生だった娘は自殺したが、彼女に自殺する理由など無かった!」と相談に訪れた母親の話しを切っ掛けに、同じ学校で生徒の自殺が相次いでいることを不審に思い、思わぬ事件を暴いている…加えて、「ストーカー被害」なるものを訴える女性が現れ、その件に関しても謎を解き明かす…

第3作では、どういう訳かマンションの新聞受けに投げ込まれた現金という出来事から、古い事件の真相を明かし、加えて猫の虐待という事件を解決する…

第4作では、「自殺」ということになっている友人の死から立ち直れない女性の相談を受け、事の真相を解き明かす…

極々簡単な紹介に止めたが…型破りな冬彦の活躍…非常に愉しい!!

『SRO VI 四重人格』

↓「御無沙汰の友人や知人の近況を知る…」という感で愉しむことが出来る「気に入っているシリーズ」の新作が登場した!!些か、登場までに時間を要した感で、少し待ちかねていたのだったが…

SRO 6 四重人格 中公文庫 / 富樫倫太郎 【文庫】

価格:950円
(2015/9/28 08:06時点)



↑最も近所の書店で入荷が見受けられず…少し離れた書店に立寄ると在った!!入手直後から、ファーストフード店のテーブルに陣取って読み始め…何か夢中になって、断続的にどんどん読み進め、夜遅くまでに読了してしまった次第である…

“SRO”というのは「警視庁広域捜査専任特別調査室」と呼ばれる捜査班のことだ。県警の管轄を超える事件を発掘し、解決を目指す、或いは各地の県警の捜査に協力をする「FBI的なモノ」を目指して設立された捜査班である。が、出来上がってみた捜査班は、少し「はみ出し者」的なキャリアの刑事達が集まった、事務職員を含めて7名と小規模な、やや風変わりな部署となった。

その“SRO”は、これまでの5作を通じて、幾つもの事件に取組んでいる。最大の事件は…「或いは連続殺人を実行している者が在るのでは?」と気付いたことが切っ掛けで正体を知るに至り、一旦逮捕した後に逃走し、再び対決に及んだ「史上最狂の連続殺人犯?」という感の近藤房子関係の事件である。

第5作で“SRO”は近藤房子の挑戦を受ける型となり、捜査員達は彼女との激しい戦いに身を投じることとなった。そして、その事件とは別な次元の事情が発生した者も在った。

本作では、前作(第5作)の後日譚的な内容から入りながら、新たな事件が発生し、SROのメンバーは新たな事件に取組んで行くこととなる…

東京と秋田県内で、トリカブト毒を使用した殺人と見受けられる事件が相次いだ。トリカブト毒は、心臓に問題が生じて急死したと看做されてしまう場合が多く、保険金殺人で使用される事例も多い代物だ。東京の事件は、健康診断を受けたばかりで、特段に問題が無かった女性が急死したことから、遺族が申し出て解剖が行われたことで毒の使用が明らかになった。秋田県の事件は、同じ日に死亡した2人が、或る事情で実は互いに関係が在ったことから警察が不審なモノを感じ、遺体を各々解剖したことから毒の使用が明らかになった。

SROの山根室長は、東京の事件と秋田の事件の関連を危惧し、SROとしての独自捜査活動も始まる…緻密な計画に基づく殺害と見受けられる事件と、何か深い計画が感じられない事件とが立て続けに発生しているが、何れもトリカブト毒という凶器が共通している不思議な事態である…

一連の事件の犯人…こちらの側でも「思わぬ事態」が発生し、犯人は生き残りを賭けた行動に走る。そうした犯人の行動により、思いもかけぬ“連続事件”という様相を見せ始め、SROの面々は必死に犯人を探す。

追われる側の思わぬ行動…それを追うSRO…やがてSROは、思わぬ行動をする犯人を待ち伏せることとなって行くが…思い掛けないような展開に夢中になってしまう…

タイトルや、物語の前半の辺りで示唆されてはいるが…犯人は途轍もなく不思議な人物である…或いは、かの“近藤房子”のように、この犯人はシリーズが続く中で“強敵”として再登場、再々登場ということも在るのかもしれない…

『謙信の軍配者』

“足利学校”で出逢った3人の若者は、“軍配者”と呼び習わされた「軍事行動等のコンサルタント」として各々に回り逢った主君に仕えて戦国の世の年月を過ごしていたが、その3人を描く3部作の3作目が文庫で登場した。

↓登場を心待ちにしていた“第3部”である!!

富樫倫太郎/謙信の軍配者 上 中公文庫


富樫倫太郎/謙信の軍配者 下 中公文庫
↑大変に愉しく読了した!!

↓この第3部の以前の作品が下記である…
>>『早雲の軍配者』(第1部)
>>『信玄の軍配者』(第2部)

そして『謙信の軍配者』に至る。何かタイトルを視ると、3人の人物を各々に主人公とした別々の3作品のようにも見えるが…実は1つの長編を3部構成に仕上げ直していったような感じの作風で、各作品を各々にも愉しめるのだが、「一連の大河ドラマ」として非常に面白いモノになっていると思う。

『謙信の軍配者』とは宇佐美冬之助だ。元は曾我冬之助として関東管領上杉家の陣営に在ったが、第2部の終盤で戦に敗れて囚われの身になってしまったところから逃れ、越後に至って長尾景虎(後の上杉謙信)に仕えることになる。『謙信の軍配者』は、この宇佐美冬之助の物語という建前だが…本音は『信玄の軍配者』の主人公であった四郎佐こと山本勘助の“その後”という色彩が濃いような印象を受ける…或いは…3部作の3人の主役級の中で「真の主役」は、この四郎佐こと山本勘助なのかもしれない…

『謙信の軍配者』では、“型破り”な長尾景虎に仕えるようになった冬之助のその後、彼と何度も干戈を交えることになる信玄こと武田晴信との因縁、両者の互いに対する想い、その武田晴信に使え続ける山本勘助のその後、家族を得た山本勘助の人生が鮮やかに描かれる。

本作では「家族を得た山本勘助の人生」に纏わる部分が強い印象を残す。母親が病を得てしまったことにしょげ返る四郎(長じて武田勝頼となる…)を諭しながら、赤子の間に失ってしまった初めての息子の一件が夫婦間で“陰”になっていたことに思い至る様…やがて産れた2番目の息子に最初の息子と同じ名を与えて慈しむ様…“逆境を負う”という共通項から深く理解し合い、互いを敬愛する夫婦の様…そうした様子に心打たれるものが在る…

本作では冬之助の“軍配者”としての印象がやや薄い…彼が仕える長尾景虎は正しく“型破り”で、「毘沙門天の化身」と言われるような、「定石というものを外して、敗戦らしい敗戦が殆ど無い」という勇将である。が…本作の最終盤では「山本勘助の最後にして最強の敵」として、武田陣営の状況に鑑みて、更に“四郎佐”時代からの友人として知り得る山本勘助の性格や考え方の傾向に鑑みて、「山本勘助の献策」を鋭く読み解く様子を見せる…

足利学校で回り逢って、互いをかけがえの無い友と思う風摩小太郎、山本勘助、曾我冬之助の3人が「何時か戦場で、互いの陣営を率いた状態で見えよう」という“約束”が果たされる日を願い続けていた訳だが、各々が人生の終焉に向かって行く様が描かれて、この壮大な物語は幕を閉じて行く…非常に強い余韻が残る…

『信玄の軍配者』

“三部作”として登場した作品の“第一部”を愉しく読了した経過が在ると…“第二部”が待ち遠しいのが道理というものだが…

↓その“三部作”の“第二部”が登場した!!

富樫倫太郎/信玄の軍配者 上 中公文庫


富樫倫太郎/信玄の軍配者 下 中公文庫
↑非常に愉しいので、休日の一日を費やして…否…時間を「費やす」というのではなく、時間を「半ば忘れる」感じであっという間に読了してしまった…

↓愉しく読了した“第一部”はこれである…
>>『早雲の軍配者』
↑“第二部”は独立した作品として愉しいが、この“第一部”から年月を経た「続き」という面も在る作品だ…

“第一部”では、北条早雲に見出された風摩小太郎が主人公で、学問を修めるべく送り出された足利学校で山本勘助、曾我冬之助と出逢う。3人は互いをかけがえの無い友と思うようになる。

好青年の小太郎、天才肌な冬之助、苦労人で訳ありな勘助とそれぞれに好い劇中人物達だが…“第一部”では小太郎が予定どおり北条家中で活躍するようになっていくのに対し、冬之助は北条家と対立する扇谷上杉家中の実家で活躍し、勘助は活躍の場を求めて何処へともなく去って行った…

“第二部”は、“第一部”の終盤で小太郎と再会した後に何処へともなく去って行った勘助が主人公となる…

訳ありな勘助の本来の名は四郎佐である。四郎佐は本作の冒頭で駿河に居る…

四郎佐は、足利学校で学ぼうとする「本当の」山本勘助の従僕であった。足利へ向かう道中、盗賊の襲撃で一行が命を落とした中で四郎佐だけが生き残った。四郎佐は“山本勘助”を名乗り、学問を修めて名を成すことを思った。しかし…足利でそれが露見し、彼は京都で学問を継続した…諸国を巡り、駿河にやって来た時に大原雪斎と会い、今川家に推挙してくれることになったが、今川義元は不採用と言う…他方で、足利学校で「山本勘助」が四郎佐であると発見した者が「捕えて殺す!!」と騒ぎ立てる。しかし雪斎が、自身や義元と建仁寺の“相弟子”ということになる者を殺すことは許さぬ、と言い出した。そこで四郎佐は、駿河で“軟禁状態”的な暮らしを送る羽目になってしまう…

駿河で暮らす四郎佐は無人斎を名乗る人物と出会い、上述のような事情も明かされる。そして無人斎が四郎佐にある計画を打ち明けて参加を持ち掛けることから、物語は大きく動き始める…

そして物語は、四郎佐が武田晴信―かの武田信玄…―と回り逢い、陣営の軍配者“山本勘助”として名を成すまでの展開となる…

不幸な生い立ちで、容貌も醜く、片足が少々不自由という“逆境”を負う男である四郎佐…“逆境”を跳ね返すエネルギーを秘め、生への執着を見せ、色々な人達との出会いを経験し、成功を重ねながらも失敗も悔い、新たな境地を目指す…物語を読んでいると、そんな山本勘助こと四郎佐に惹かれずには居られない…

更に物語の底には、足利学校で回り逢って、互いをかけがえの無い友と思う風摩小太郎、山本勘助、曾我冬之助の3人が「何時か戦場で、互いの陣営を率いた状態で見えよう」という“約束”が果たされる日を願い続けている、というものが流れている。“青い”想いのようなものを大切に、それぞれの道を歩む互いを思いやり、年齢を重ねる男達…そういう趣が非常に好い!!

本を紹介する際、未読の方のお楽しみを妨げないよう、敢えてディーテールは綴らないようにしているのだが…一つだけ挙げたい…駿河を抜け出した四郎佐が、決死の脱出行で瀕死の状態になりながら小田原に流れ着いた。通り掛った人に教えられた「風摩小太郎様のお屋敷」の前で少年を視掛ける。「小太郎…」と少年に声を掛けてしまう。足利学校で出会った、少年のような面差しだった風摩小太郎にそっくりだった。息子だったのである。そして行き倒れてしまった四郎佐は風摩小太郎に助けられる。四郎佐は「最期にお前の顔でも視たかった…」と決死の状態だったことを語る。上巻の後半部に収められたエピソードだが、熱くなった…

“逆境”を負いながらも、生と成功への執着を見せ、それを語る山本勘助こと四郎佐…非常に魅力的だった…何か「力がもらえる」ような雰囲気も在る物語だと想った…

知られている戦国時代の歴史であれば…“第三部”は、かなり有名な合戦が出て来そうな気配だ…非常に愉しみだ!!

『早雲の軍配者』

必ずしも表立った記録に現れるでもないが、実在した可能性も高い、重要な役割を担ったであろう人物達を主役に据えて物語を展開…或いは“時代モノ”の「最も面白いパターンの一つ」のように思う…

↓そうした系譜の作品で、永く“名作”として読み継がれる可能性も在るような作品に出逢った…

富樫倫太郎/早雲の軍配者 上 中公文庫


富樫倫太郎/早雲の軍配者 下 中公文庫
↑「面白い小説は呆気ない程に速やかに…」とどんどん読み進み、夢中で読了に至ってしまった…

“軍配者”という存在は、戦国大名の家中に在って重要な役割を担っていた存在と言われるが、一部隊を率いる将というように表立った記録にハッキリと存在が示されているというのでもない。結局、彼らは今風の言い方をするならば、各種の知識を身に着けながら経験を積む“コンサルタント”のようなものである。

“軍配”と言うと、「相撲の行司が持っている、団扇のようなモノ」を思い浮かべる方が多いと思うが、あれは武将が率いる将兵の指揮を執る場面で振るっていたモノが起源である。故に“軍配者”とは、「軍配を預かる者」というような含意が在る呼称だ。ある種の“高級参謀将校”として、大将の傍らに在って戦術を練ったり、戦いに備える場面では戦略的活動の立案にも携わる。こう言うと寧ろ“軍師”という表現を思い浮かべるが、“軍配者”は戦術や戦略の立案に留まらず、吉凶の占いや、気象予報までこなしたと言われている。そして、非常に広く深い知識や勘、一軍の指揮を執るような場面で求められる度量や器量を要したことから、大名家の家中に在る色々な役職のように世襲されるような役目でもなかったという…

本作の主人公は、その“軍配者”となって行く若者である。かの北条早雲こと伊勢宗瑞に見出される若者、風摩小太郎が主人公だ。

“風摩小太郎”?色々な小説にも登場する「北条家の仕事を請けた忍者の棟梁、風魔小太郎」というのはお馴染みかもしれないが…その辺りの“事情”は是非本作で…

伊勢宗瑞は後継者である北条氏綱の更に次代を担う千代丸(後の北条氏康)を支える若者を求め、その眼鏡に叶う若者を見出した。それが小太郎である。小太郎は未来の“軍配者”たるための学問を修めようと、足利大学に学ぶことになる。“軍配者”たるための学問を修めようとすれば、関東の足利学校か京都の建仁時で学ばなければならないとされていたそうだ…現在も関東と関西に「東の○○、西の○○」というように、並び称される有名な学校というものが在るように思うが、戦国時代にもそういうものが在ったというのは面白い…

小太郎は足利学校で、山本勘助、曾我冬之助と出逢う。互いに競うように学ぶ、ある種の青春ストーリーという仕立てでもある物語が展開する…

やがて3人の若者は、「出くわすのは、互いに敵として、戦をする時か?」と別れ、各々の道を目指すことになるのだが…実に興味深い…

小太郎は「早雲の愛弟子」というようなことになるが、氏綱の下で仕事を始め、やがて氏康に仕えるようになる。その辺りで物語は幕を引く…北条家は、やがて関東一円を“王国”のようにして行く訳だが、そんな中で小太郎はどうなるのか?或いは、どうするのか?少し楽しみな場面で終わる…

本作の中で、他所から入ったにも拘らず、領国で確固とした基盤を築く北条陣営について、その「公正な統治」という特長を挙げている…何となく「示唆に富む」感を受けた…

作中、大変な好青年だった小太郎に対し、やや癖の在る人物の山本勘助や曾我冬之助がなかなかに好いのだが…実は本作は“シリーズ”の第1作で、彼らを主人公に据えた“続き”も在るらしい…それも文庫が登場したら是非読みたい。

『神威の矢』

“時代モノ”ということになる作品は、その“範囲”が非常に広いと思う。多くの作品は、「伝えられている史実の“隙間”を創る」側面が在って、そういう辺りから「“時代モノ”は或る種の“ファンタジー”…」と考える場合も多いのだが…中には「頭から“ファンタジー”」という例も在る。それが“伝奇”と呼ばれるモノだ…

↓本作はその“伝奇”ということになる。



神威の矢(上) 土方歳三蝦夷討伐奇譚(中公文庫)





神威の矢(下) 土方歳三蝦夷討伐奇譚(中公文庫)

↑あの箱館の戦いの時期を背景に展開する“伝奇”で、なかなか愉しく、一気に読了してしまった。

本作を一言で紹介するなら…戊辰戦争の時期、日本の何処かで封印されている魔物を甦らせようという思惑を持った外国人が紛れ込み、魔物を封印していた人物や、その時代の人々が絡まって、魔物を巡る密かな闘いが繰り広げられる…というようなことになるであろう。

日本の何処かで封印されている魔物を甦らせようという思惑を持つサン・ジェルマンは、配下のカリオストロと共に、幕府が迎えた軍事訓練の教官を務めるフランス人将兵になりすまして来日した。揺れ動く情勢の中、サン・ジェルマンとカリオストロは、魔物が「日本の北に封印されている」と気付く。

そうした中、館山の漁村の少年、雄吉は「大きな軍艦に乗りたい」と幕府艦隊の船員見習いとなる。開陽丸で仕事を始めるが、そこに彼の兄弟同然の幼馴染である善治が、一人で村を抜け出してやって来た。善治は雄吉と一緒に居たいと言い出し、彼も幕府艦隊の船員見習いとなった…

やがて幕府艦隊は蝦夷地に入る。幕府系の軍の幹部となっていた土方歳三は、兵を率いて転戦していたが、蝦夷地の人達がアイヌを虐待していた様に心を曇らせる。そして、滞在した村で、弱っている青年が野犬に襲われそうになっている場面に出くわした。土方は野犬の群れを斬り、アイヌの青年、タリコナを助けて箱館に高松凌雲が設けた診療所に連れ帰った。

タリコナは、自分を助けた土方達に恩義を感じながらも、高松凌雲の診療所を脱け出した。タリコナは、生き別れになった許嫁のホントルスや、その妹のイスカラヤを探し出し、安全に暮らせる場所に連れて行きたかったのだ。やがてイスカラヤの行方の情報を得て、タリコナは土方と再会する。

土方はタリコナに協力し、イスカラヤを救出した。イスカラヤを安全な村に連れて行ったタリコナはホントルスを探す。そして、ホントルスはアイヌ達が“シサム・カムイ”と呼ぶ、山に住む謎の人物の所に身を寄せていたことを知る。そして“シサム・カムイ”が密かに続けていた重大な役目についても知ることになった。

こうして“魔物”を巡る密かな決戦に突入していく…

“ネタばれ”を避けながら、大まかな物語を紹介した…不老不死の怪人が蠢く“ファンタジー”に戊辰戦争の情勢が絡まるという物語なのだが…何か「歴史の“闇”と“光”」を見詰めてみようとするような内容と、時代を超えても尊さが全く損なわれないモノが描かれているように思う。虐げられ、惨めな境涯になっても矜持を維持し、命を賭して護るべく者を護ろうとする勇士タリコナ…雄吉と善治の友情…無法には刃を向け、己を強く律し、困っている者を必死に助ける土方歳三…数多くの劇中人物達に心動かされる…

函館出身の作者による、箱館が関連する作品が3作在るということで、文庫化に際して“3部作”というような売り出し方がされているようだが…本作は他の2作品とかなり趣が異なる…

『松前の花』

↓読了後、多少時間が経ってしまった作品だ…一寸紹介するのが遅れた…

富樫倫太郎/松前の花 上 中公文庫


富樫倫太郎/松前の花 下 中公文庫
↑大変愉しく読了した作品である…

箱館の五稜郭に拠って闘った人達、その周囲に在った人達の物語ということになる…

有名な土方歳三や榎本武揚というような劇中人物も登場するが…主役格となるのは、松前の菓子職人である藤吉、松前家中の重臣の娘である蘭子、二人と関る榎本軍の将校ということになる人見勝太郎と言った劇中人物達が主役である。

人見勝太郎が「直接的な発注者」という型になったのだが、箱館の旧幕府系の勢力は“兵糧”としてパンを求める。そのパンを造る者として白羽の矢が立ったのが菓子職人の藤吉だった。藤吉を奨めたのが、蘭子だ。昔馴染みの“姫様”である蘭子の推薦と知り、藤吉は当時は知識が広く知られていた訳でもなかったパンを工夫して製造すべく奮戦を始める。

パン作りに奮戦する藤吉の物語の背後に、蘭子の物語が在る。松前家中は、幕末期に血生臭い内訌を経験する羽目となっていた。家中を掌握した主流派に排斥され、蘭子の父は命を落とし、母も失った。蘭子は、松前家中が新政府側になった中、それと闘うことになった五稜郭の旧幕府軍に協力、否、身を投じた。人見勝太郎は、何時しか蘭子に惹かれた…

両親を害した“仇敵”に立ち向かおうとする悲壮な蘭子の美しさ…それを見守り、惹かれる人見…義理が在る“姫様”に喜んで頂けると仕事に打ち込む藤吉…何か非常に美しい物語だ…

『箱館売ります』

史実の隙間に大きな想像の翼を拡げる…“時代モノ”の「在り方」の一つのように思う…

幕末期、欧米諸国の船が日本に入港するようになって、色々な事が在ったそうだが、それらは知られていたり、知られていなかったりである…

↓その「知られていなかった」に注目した、“時代モノ”の「在り方」を地で行くような作品に出会った!!

富樫倫太郎/箱館売ります 上 中公文庫


富樫倫太郎/箱館売ります 下 中公文庫
↑夢中で読み進み、大変愉しく読了した!!

函館港―往時は“箱館”―が開港されたのは古い…早速に欧米諸国の船が寄港するようになり、領事館も開設され始めたが、一つ不思議なことが起こった。農場経営を目的に、プロシア人に広大な土地が貸与されたのだ…これは場合によっては、“香港”や“マカオ”のような「列強の租借地」という型で植民地化されてしまう危惧を孕んだ内容のお話しだ…幕府、新政府、箱館政権と土地貸与は受け継がれ、明治時代に入ってから解消された案件であるという…

これは「余り知られていない」話しだが、“史実”である…本作はこの意外な“史実”に光を当てている物語だ…

箱館近郊の村で学問塾をやっていた平山金十郎は“お尋ね者”になってしまい、山中の洞窟に逃げ込んで潜伏していた。兄弟弟子の斎藤順三郎らと、“左幕”か“勤皇”かで激しく意見が分かれていたが、“左幕”を唱える金十郎は、五稜郭に入った新政府側の箱館府襲撃を目論む。しかし、事の重大さ故に仲間が密告に及び、逃げたのだった。そして高額な懸賞が掛けられた“お尋ね者”となってしまっていた…

その金十郎…榎本武揚の旧幕府軍が箱館にやって来たことを知り、山の洞窟から抜け出して活動を始める…彼は榎本の箱館政府の仕事をするようになる…箱館奉行並である中島三郎助の下で働く…

榎本ら旧幕府軍が箱館に来ようとしていた頃、「ロシア領事館の書記官」ということになっているユーリイ・ザレンスキーは荒んでいた…日本の内戦状態に乗じて、ロシアに利権をもたらそうと工作に勤しんでいた彼は、“第三部”と呼ばれる秘密警察の工作員だった…何らの利権を得ることも叶わないまま、帰国してシベリアや北極地方への左遷を待つ身だったのだ…そんな時、プロシア人のガルトネル兄弟が、巧く立ち回って農場の用地を拡げたことや、榎本らの箱館入りで戦局が動くことを知る…「好機到来」とザレンスキーは行動を開始する…

ザレンスキーが巡らせる陰謀…用地貸借交渉の行方…陰謀に嵌められそうな面々と、陰謀に疑念を抱いて戦う面々…事がどのように展開するのか?是非、本書を紐解いてみて頂きたい!!

陰謀に疑念を抱いて戦う面々の中には…あの土方歳三が居る!!戊辰戦争期の箱館を舞台に展開する、なかなかにスリリングなサスペンスであり、アクションも秀逸である…

『SRO ボディーファーム』

↓連休中に夢中になったシリーズの第5作で、連休が終わってからも読み続けて愉しく読了した…



SRO(5) ボディーファーム(中公文庫)

↑第4作を受けての第5作なのだが、直接的内容としては第3作の続きになる…

何処かに潜伏していたらしい近藤房子が、山根に電話を寄越して不敵な“宣戦布告”を行った…彼女を追う過程で捜査員を喪った経過の在る捜査一課と、SROが彼女を追う活動を始めた…

近藤房子は変装を駆使して市井に紛れ込み、次々に殺人事件を引き起こす…「異常な凶悪犯を野放し」という批判の矢面に立つ羽目に陥った警視庁…「手段を選ばず」という展開となった中、近藤房子が執着しているらしいSRO副室長の芝原を“囮”とすることが検討俎上に…

この事態に、山根が打つ手は?

本作は正しく“激闘篇”、“死闘篇”である…狡猾な凶悪犯と捜査陣の競い合い…そして、近藤房子が重ね続けていた恐るべき犯罪が明かされる…

この「SRO対近藤房子」の闘いの行方が本筋なのだが…「気になる脇の話し」も在るのが本作である…或いはこれらが第6作以降の材料の一部なのかもしれない…

とりあえず、現在出ている5作品を一気に…非常に面白いシリーズだ!!

『SRO 黒い羊』

↓連休に嵌っていたシリーズの第4作である…



SRO(4) 黒い羊(中公文庫)

↑第1作は「年度初めに新部署(SRO)が発足」という時季だったが、本作では夏休み時季になっている…

SROは、必要が在れば全国の何処へでも出向いて捜査活動を行うのだが、それでも“建前”としては「各都道府県警察等、関係官署の協力要請を受けて活動」ということになっている。その「関係官署の要請」が初めてもたらされた…

SROに協力を要請したのは法務省である。医療少年院に6年間居て退院した男が、富良野のペンションで働いていたのだが、行方不明になってしまっていた…この男は、中学生の頃に家族4人を殺害してしまった過去が在る…

法務省ではこの男をそれとなく観察し、定期的に担当者も面談する等のアフターケアをしていたが、突然に姿を消してしまったことで困惑している…また、男が姿を消した前夜までペンションに滞在していた学生グループの1人も、約1週間連絡が取れなくなっていて、家族が捜索願を出したところだった…山根は2つの行方不明に“関連”が在りそうであると考え、山根は富良野へ飛んだ…並行して、SROは姿を消した学生の周辺を調べ始める…

思いも寄らない行動に出る男の姿を求めて、SROの面々が奔走するのだが、そのプロセスが非常に面白い…本作のタイトルに在る「黒い羊」…キーワードだ…

『SRO キラークィーン』

↓連休中に夢中になってしまったシリーズの第3作である…



SRO(3) キラークィーン(中公文庫)

↑第1作の物語の後日談である…

逮捕された近藤房子容疑者は検察による連日の厳しい取調を受けていた…近藤房子容疑者は一部に“キラークィーン”と呼ばれ、彼女に関心を寄せる者も多く見受けられる状況だった…

そんな或る時、彼女の所へ「Mに従え」という謎めいたメッセージが舞い込み始める…そして拘置所から検察庁への押送の際、事態は発生した…

“死の天使”の一件を巡って、また部内的に一寸摩擦を起こしてしまっていたSROは地味に“投書”を読むなどしていたのだったが、緊急事態発生下で捜査に参加することになる…

本作では、正しく「身体を張る羽目になりながら異常な凶悪犯と闘う」という展開になって行く…副室長、芝原の「人知れぬ悩み」が、思わぬ事態で明らかに…

本作はなかなかに「手に汗握る」展開だ…

『SROⅡ 死の天使』

↓連休中に夢中になってしまったシリーズの第2作である…



SRO(2) 死の天使(中公文庫)

↑時間軸としては、第1作の半月程度後という具合になっている…

第1作の“ドクター”の一件で、SROは恐るべき凶悪事件の容疑者を確保したが、その手法が部内的に問題になり、「半ば謹慎」のような状況だった…他方、永く行方不明で在った人達に関する調査から凶悪犯に至ったという成果と能力が一定程度注目され、各地から行方不明者に関することや、余り関係の無いことまで含めて、色々な投書が舞い込むようになった…

「半ば謹慎」な状況下、SROの面々は投書に眼を通していたが、「気になる」モノが在った。形式的には依願退職ながらも、実質的には栃木県内の病院を解雇になった元看護師の投書で、「不審な死に方の患者が目立つ」という話しである。元看護師は看護協会にも訴えの投書をしたが、何らの動きも無いので、噂のSROに投書をしたという次第だった。

「不審な死に方」というのは、入院に至った疾患以外の事由で亡くなるというものである。更に、各々の事情で「長く生きたくはない」と考えているような患者がそういう例で亡くなっていて、「生きたくない」という願いを聞届ける“死の天使”が居るという都市伝説のような話しも在った…

山根はこの問題に関心を寄せて調査に着手するが、「半ば謹慎」な状況下、刑事部長に動きを封じられる…そこで山根が取った打開策は?

部内的に足を引っ張られるという状況も生じる中、各々の持ち味を活かして、長期に亘って恐ろしいことを繰り返していた容疑者を炙り出す物語…なかなか面白い!!

『SRO』

↓現時点で5作品が出ているシリーズの第1作である…愉しく読了した!!



SRO(1) 警視庁広域捜査専任特別調査室(中公文庫)

↑「先回り」な話しになってしまうが、連休前半に読んだこの第1作が愉しかったので「続き?」と思い、連休後半はシリーズの続作を次々と愉しんだ…それほどに面白い!!

これは警察の架空の―知られていないだけで、実は密かに実在するのかもしれない?!―部署の面々が、難事件に取組むというサスペンスである。雰囲気が、米国のテレビシリーズのようだ…実際、部署が新設された直後、室長が友人を訪ねた場面で「アメリカのテレビみたいじゃないか!?」という趣旨の事を口にする場面さえ在るのだが…

警視庁に「広域捜査専任特別調査室」という部署が新設された。室長の山根の発案で「米国のFBIのように、都道府県警察の管轄に囚われず、永く未解決になっているような重大事件を捜査する」ための部署ということだった。

室長の山根の下、「副室長として新部署に異動すると、同期では最速の昇進」ということでやって来た、警察庁の女性キャリアである芝原の他、3人のキャリア組の刑事達と2人の事務担当者が配属され、新部署がスタートした。計5人のキャリア組捜査官を擁する型の華々しいスタートだが、多数の部下を擁している訳ではない。7人だけである。そして3人のキャリア組の刑事達だが、各々に事情が在って、他に配置する部署が無かったというような事情で新部署にやって来た…

「広域捜査専任特別調査室」は芝原の発案で“SRO”という略称で呼ぶか、単に“調査室”と呼ぼうというようなことになって、とりあえずスタートした。当初は「何をするのか?」という状態であった…

新部署がスタートし、山根が着目したのは山梨県内で発見された白骨遺体だった。遺体が見付かった場合に身元が判明し難いよう、指紋が在る部分を切断したり、治療痕が在る(と推定される)歯を抜いてしまう等、妙な処理が施されていた。その種の白骨遺体が発見された例は幾つも在り、半ば都市伝説のように「恐るべき連続殺人犯が居て、遺体の身元が判り難くなるようにわざわざ処理をして埋めている?」と囁かれていた。その恐るべき連続殺人犯は、遺体に処理をする手口に因んで“ドクター”と仮称された…

山根は白骨遺体や行方不明者に関する調査に着手し、“ドクター”らしき者が「実在する」と考えるに至った…

ということで、SROの面々は「“ドクター”と仮称される連続殺人犯」を炙り出すことに取組んで行く…“トップダウン”で新設された部署で、発案者で室長の山根以外は「訳の判らない部署に流された…」という雰囲気に満ちていたのだが、次第に各々の個性を活かして一丸となって「謎の凶悪犯」を追跡することになる…

「各々に事情」という“曲者”が集まっていて、彼らが各々の“事情”に立ち向かって乗り越える様がシリーズを通じて描かれるのだが、この第1作は「集まったバラバラな男女」が目標を見出して一致団結して難敵に向かっていくようになるという展開が面白い。