↓興味を覚えて入手し、紐解き始めてみると頁を繰る手が停められなくなってしまった。「次?」が気になってしまい、昼、夕方、夜中、早朝とドンドン時間を設ける、或いは暇を惜しむように読み進め、実に素早く読了に至った。

↑作者はシリーズ作品でも知られるが、その限りでもない作品も色々と手掛けている。本作は何かのシリーズということでもない、独立したモノということになる。
本作は、第1部と第2部とで各々の出来事が描かれ、その背後に在った事柄が第3部で明かされるような感じに展開する。第3部が圧倒的に大きなボリュームになる。
基本的には、事件が発生して、捜査員達が活動をする刑事モノ、警察モノの物語ということになる。が、ここに敢えて「架空の部署」を挿し込んで、重厚な刑事モノ、警察モノの体裁で「現代社会の“問題”、“疑問”を提起」という内容になっている。
この作者の作品の多くは、適宜視点人物が切り替わりながら展開して行く場合が多いのだが、本作もそういうような感じである。
以下、些かの“ネタバレ”も含むかもしれない。気になる方は「そして第3部」という辺りまでを読み飛ばして頂きたい。
第1部に、この部分の大半、また後段に至っても視点人物となる本宮が登場する。
本宮は池袋署の刑事課で課長を務めている。50歳代の警視だ。課長代理ということになる各係長以下、捜査員達を指導しながら取り組む日頃の業務の様子から始まる。そして夕刻、若い頃に一緒に仕事をしていた後輩の上山から連絡を受けて会う約束であったことを思い起こす。池袋署を出て、新宿の街の居酒屋で会うことにした。
本宮が久し振りに会った上山は、研修ということで米国に行って何やら学び、一般的な所轄署でもなく、本部内の部署でもなく、他所の建物にオフィスを構える部門に配属されたということだった。
そんな近況の詳しい話しを聴く等、旧交を温めようとしたところ、本宮は連絡を受けた。事件である。本宮は「また今度…」と席を立って上山と別れ、急いで池袋署に戻った。
池袋署管内で発生していたのは殺人事件だった。男性が路上で刺殺されたという事件で、直ぐに本部の捜査一課が入り、池袋署に特捜本部が設置され、近隣署の応援要員も大勢集まって捜査活動が始まった。
特捜本部が設置された署の刑事課長は当然ながら特捜本部に参画はする。が、本部が入れば、捜査一課の管理官が実質的な現場指揮官となって、捜査一課長の支持を仰ぎながら捜査活動が進むため、署の刑事課長は特捜本部事案以外の、署で抱える様々な事柄を纏めて行くことに勤しまなければならない。本宮もそうしていた。
本宮が刑事課の自席で仕事をしていれば、捜査一課長が部屋を訪ねて来た。そして「聞かれないように話し合いたい」と示唆された。やがて本宮は密かに取組むようにと或る指示を受けた。そして捜査員を密かに動かすこととなった。何やら「タレコミ」が在ったと本宮は観た。そして捜査は動いた。
第2部である。
第1部では9月末から10月初めという時期の日付が出ている。第2部には「3月」と在るので、「半年程度を経ている時期」ということになる。
組織犯罪対策部の植木刑事や佐古刑事達は、違法薬物の売人であると見受けられる男の行動確認を続けていた。
対象の男は、即座に現行犯逮捕が出来るような行動に及ぶのでもない。そして各種の違法薬物を如何いうように入手し、如何いうように売っているのか、決定的な情況を掴めずに居た。
或る日、件の男は新木場の音楽イベントの会場に入り込もうとしていた。男を尾行していた植木刑事や佐古刑事等の捜査員達はその会場に潜り込んだ。
全面的に立席という方式のホールの後方にバー等が設えられ、辺りにロッカーが在った。件の男が近寄り、ロッカーの1つを開けようとする。違法薬物やその代金というような、逮捕に繋がるモノが出て来る可能性も在ると考え、植木刑事は男の背後に近寄った。
植木刑事の記憶はそこで途切れた。ロッカーに爆弾が仕掛けられていた。追っていた薬物の売人と見受けられた男は爆発物で即死し、植木刑事は爆発に巻き込まれて負傷し、2日間程というもの意識を失った状態で病院に収容されていたのだった。
植木刑事が意識を取り戻して数日の間に捜査が動いた。爆死した人物とは別な、違法薬物の売人であると見受けられる男が逮捕されたが、この人物が使われた爆弾の材料と見受けられるモノを自宅に隠し持っていたのだという。
病院を出て爆殺事件の捜査本部に出た植木刑事は、直ぐに被疑者と見受けられる人物が判ったことを少し訝しく思った。そして逮捕の場面で動いたという佐古刑事に質した。「タレコミ」が在ったのだという。
そこに、爆殺事件の特捜本部を預かる本部の捜査一課からやって来た管理官が現れる。本宮であった。
そして第3部だ。
第1部で池袋署の刑事課長であった本宮は、欠員が生じたということで、定期的な異動を少し外れて本部の捜査一課へ管理官として異動していた。異動して程無く、爆殺事件の特捜本部を預かることになって、本部が設置されている湾岸署へ現れたのだった。
本宮は、植木刑事と話し合うが、彼が「タレコミ」で被疑者を逮捕したという状況に抱いている疑念に同感だった。「ネタ元」は何処で、何が如何なって「タレコミ」に至ったのか、何かよく判らないのだ。本宮管理官は、植木刑事や佐古刑事に密かにその辺りを探るように指示をし、自らも可能な範囲で動く。
第1部、第2部の出来事の背後に在った秘密が少しずつ明らかになる他方、第3部の中でも何やらの事態が動いて行く。
こういうようなことだ。第1部と第2部とは、基本的に避ける意図ながらも些かの“ネタバレ”を綴ってしまったかもしれない。第3部についてはそういうことを巧く避けたと思う。
第1部と第2部とは、「第3部の前段」というのか「前回までのあらすじ」という感じかもしれない。第3部は、同じ作者の数々の作品―刑事モノ、警察モノのシリーズ等―で見受けられたような雰囲気が溢れていた。
「同じ作者の数々の作品―刑事モノ、警察モノのシリーズ等―で見受けられたような雰囲気」というのは?“事の真相”に迫ろうとする複数の人達が各々の持ち味等を活かしながら少しずつ事実を積み上げようと努力する他方、“核心”に近い辺りの人達の動きが描かれ、最終的に鍵を握る人物―謎めいた感じで現れる場合も多い―とその周囲に在る人達の何処か哀感溢れるような幾つかの挿話というような、様々なモノが螺旋状に組み合わさるような感じ、そこから醸し出される作中世界の空気感というようなモノである。
或いは「これからの時代の捜査活動?」というような事柄、「社会の安寧を護って行くという意味?」または「個々人の人生と社会と」というような事柄を考えさせるような内容が、第3部には満載だ。
作中世界に没入して「面白かった…」と本を閉じた少し後、「何か妙な事は無いよな…」と後ろを振り返ったり、手近な色々なモノに異常が無いのかを確かめてみたくなるような、そういう雰囲気も在る。