↓文字どおりに「遠方の友人の消息を知る」という気分で愉しく読んだ一冊である。
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↑一般的な新書よりやや大きな版で、上下2段に文章が組まれている。文庫化すれば、多分上下巻の2冊になる分量だ。が、少し夢中になり、存外に早く読了に至った。
<特捜部Q>のシリーズは、デンマークの作品の翻訳である。コペンハーゲン警察のカール・マーク警部補は、捜査活動中の負傷で仕事を休んでいたが、復帰した時に与えられた役目は、新設される未解決事件担当の責任者ということであった。その担当が<特捜部Q>と呼び習わされることとなる。訳アリな中東系の移民であるアサドを相棒に、カールは<特捜部Q>の活動を始めた。警察本部の使われていなかった地下室が<特捜部Q>のオフィスとなる。やがて<特捜部Q>には、女性のローセや、少し若いゴードンというスタッフも順次配置された。それでも<特捜部Q>は小さなチームではある。カールとチームの面々が色々な事件に出会い、活動が続けられる様が描かれるのがシリーズ各作品の物語ということになる。
各作品共に、適宜視点人物を替えながら、時系列を基本に、時々時間を遡るというような具合で進む。これが何処か映像作品的なモノを思い浮かべながら読む感覚も覚える。実際、デンマークではシリーズ各作品を原案にした映画が何本も制作され、なかなかにヒットしたそうだ。本作でもそうした様式は踏襲されている。
本作の冒頭部では、1980年代の事故、または事件が描写される。そして2020年11月30日ということになり、12月の出来事が展開して行くことになる。
<特捜部Q>は、<殺人事件捜査課>が統括していて、課長のマークス・ヤコブスンがカールに話しを持ち掛けた。
或る女性が逝去したという報を受け、ヤコブスンは葬儀に足を運んで献花をしたという。女性は60歳の誕生日に自殺してしまったのだというが、32年前に爆発事故に巻き込まれて、当時3歳の息子を喪っていた。事故現場近くで活動中であったヤコブスンは現場に走ったのだったが、その少し前、最初に現場に入った警察関係者の中にカールが在ったという。ヤコブスンの話しを聴いたカールは「あの時の女性?」と思い出した。現場にヤコブスンが居たか否かは覚えていないが、吹き飛ばされた3歳の息子を求めて泣き喚く女性を必死に押さえて宥めていたというのは、カールにとっても忘れ難い出来事ではあった。
爆発は自動車修理工場で起こっていた。自家用車を修理工場に預けていた女性が、車を受け取ろうと息子を連れて訪ねたその時に爆発が起こり、息子が吹き飛ばされてしまったのだった。その爆発現場では、工場の経営者と従業員が全員死亡していて、激しく燃えてしまって色々な事が判らなくなっていた。が、如何いう訳か普通の食塩を盛ったモノが現場の一隅で見付かっていた。デンマーク等では冬季に融雪剤として塩を用いる場合が在るのだが、そういうモノとは明らかに異なっていた。
ヤコブスンは人為的な爆発、経営者と従業員の殺害ということを疑ったが、事故というようなことで一件は終始してしまっていた。これを調べることをカールに持ち掛け、カールの<特捜部Q>は様々な記録の検討を開始する。
吹き飛ばされてひっくり返った状態の女性の自家用車の写真、女性による自家用車を工場に預けた事情等の証言記録を詳細に検討した結果、工場の仕事の進め方に「問題」が在る可能性が浮かび上がった。不正が行われ、繰り返されていた可能性が浮上したのである。更に現場の「塩」である。事故とされた死亡事件の中に、似たような「塩」が発見された事例が他にも在ることが判明した。自動車修理工場の件が1988年で、以降の「偶数の年」、2年毎に「殺人」が繰り返されている可能性が浮上したのである。
<特捜部Q>が「恐るべき事態の可能性」を見出して懸命な活動をしていた頃、ヤコブスンは奇妙な連絡を受けた。麻薬事件担当の捜査員が、カールが捜査線上に在る旨を伝えて来たのだ。<特捜部Q>の担当となる以前、カールは捜査活動中に襲撃を受けて負傷したのだが、同行していた1人が死亡し、1人は身体が動かせなくなる重傷を負ってしまっている。このカールの事件も未解決である。この事件に纏わることのようだが、麻薬に関する嫌疑がカールに掛けられていて、カールを逮捕する場合が在るというのだ。
<特捜部Q>の面々の懸命な調査、捜査で「2年毎に殺人」が確度の高い話しであると判明し、被疑者らしき人物も具体化して行く。そして1988年以降の「偶数の年」に該当する2020年、事件が起ころうとしていると見受けられ、状況が緊迫して行く。
2020年12月はデンマークでも感染症の問題で社会が揺れていた。店舗の休業や様々な催事の中止ということも相次いでいる。そうした中、カールの嫌疑に関しても、カールの所有である家屋から発見されたモノで決定的になり、追跡の手が伸びる。そして「2年毎に殺人」の被疑者は、被害者を拉致して手を下そうとしていると見受けられる状況だった。被疑者の思惑を挫いて被害者を救うべく<特捜部Q>の面々が奔走する。
こういう展開で、最初から最後迄全く眼が離せない感じで、事態の展開を追い掛けずには居られない作品だ。シリーズ各作品を通じて、カールの事情も色々と変わり、訳アリなアサドのことも前作で明かされ、ローセにも色々と在ったのだが、小さなチームで懸命に事件に取組む中で培われた何かの力で難局に挑んでいる。作者はシリーズ全体で10作と構想しているらしい。本作は第9作で、「次回が最終回?如何なる?」という感じに纏まっている。
非常に面白いので御薦めだ!!









