『不死鳥狩り』

↓本篇が10冊に及んだ『機動戦士ガンダムUC(ユニコーン)』の“補遺小説”であり、“11”という型で出版された作品だ。

機動戦士ガンダムUC (11) 不死鳥狩り (角川コミックス・エース 189-13)



↑本のサブタイトルになっている『不死鳥狩り』という作品と、『戦後の戦争』という作品の2篇が収められている。何れも愉しく読了した。

『機動戦士ガンダムUC』に関しては、原案小説が在って、アニメや漫画が登場し、登場するメカの模型や玩具やその他の様々なグッズも展開された経過が在る訳だが…私は何となく原案小説に触れて、非常に気に入った。作品は“あの(作中)世界”というモノは「こういう感じだよな…」という雰囲気に満ち溢れているのだ。

『機動戦士ガンダムUC』の本篇は、最初の『機動戦士ガンダム』から始まって『逆襲のシャア』に至るまでの時代の「少し後」と設定されている。人類が“宇宙世紀”という時代に足を踏み入れた最初の頃から、厳重に秘匿されていた機密事項の<ラプラスの箱>なるモノが存在し、地球圏の政治経済に隠然と影響力を行使する“ビスト財団”がそれを保有している。地球圏を統治する連邦政府に対し、“ネオジオン”が在った。<一年戦争>と呼ばれた大戦でジオン軍のエースパイロットとして活躍し、スペースコロニーの運動の指導者であったジオン・ダイクンの遺児でもあるシャア・アズナブルを指導者とした“ネオジオン”の軍事行動が鎮圧されても尚、“ネオジオン”の残党は活動を続けていた。この“ネオジオン”が“ビスト財団”に接触している。<ラプラスの箱>が“ネオジオン”に引き渡されるとの情報が出ている。“ビスト財団”の代表に会うべく隠密活動をしている“ネオジオン”の工作班の動き、そして動向を監視して機密の譲渡を阻止しようとする連邦軍部隊。彼らの衝突から、物語の幕が開く…

ということなのだが、この『機動戦士ガンダムUC』に関して、“前日譚”となる『戦後の戦争』と、本篇の物語の時期に別の場所で発生していた事態ということになる『不死鳥狩り』の2篇が登場し、書籍化された訳だ…

2篇の中、私が気に入ったのは『戦後の戦争』の方だ。後日に<シャアの叛乱>と呼ばれる“ネオジオン”の軍事行動が収束した後の、連邦政府、軍、巨大企業、“ネオジオン”の残党の複雑な関係性から、何やら不穏な事態が生じるという感じの物語だ。『機動戦士ガンダムUC』の本編で、“ネオジオン”残党の指導者が搭乗するメカが出て来た経緯が綴られる…

巨大企業と軍との“談合”が在り、試作機のモビルスーツ(人型機動兵器)に関して、「輸送中の宇宙艦から“ネオジオン”が奪取する」ことを「“黙認”してしまう」という情報が在った。これを聴いた軍情報部の男が、“談合”を度外視した行動を始める。その顛末が描かれるのが『戦後の戦争』である…

『不死鳥狩り』は、本篇の時期に別の場所で発生していた事態が描かれる…

『機動戦士ガンダムUC』の主役メカは、<RX-0>という型式番号を与えられたモビルスーツだ。主人公の少年、バナージは<ラプラスの箱>を巡る事変が勃発しようとしていた現場に居合わせ、自らの出自の秘密を知り、<RX-0>の1号機である<ユニコーン>を託される。そして<ユニコーン>と共に各所を巡って事変に関わって行くことになる。

本篇には、<ユニコーン>の他に<RX-0>の2号機である<バンシィ―>が登場している。<ユニコーン>が白い機体で、<バンシィ―>は黒い機体だ。(“ガンダム”シリーズのアニメでは、「黒い」と形容されるメカが、寧ろ「遠目に黒っぽく見える濃紺」という場合が多く在る。<バンシィ―>もそういうパターンだ…)

そして『不死鳥狩り』には、<RX-0>の3号機というモノが登場する。<フェネクス>と名付けられた金色の機体だ。この<フェネクス>は、性能試験の最中に、システムが暴走してしまい、何処かへ去ってしまっていた…そこで、この<フェネクス>を捕獲、または破壊する目的の特務部隊が急遽編制される。本作『不死鳥狩り』は、この特務部隊に入り込む男の物語である。この男の過去と、<フェネクス>を巡って展開する、進行中の不思議な一件とが折り重なりながら物語が展開する…

本篇の小説を愉しんだ経過が在れば、この2篇はかなり愉しい。そして最初の『機動戦士ガンダム』から始まって『逆襲のシャア』に至るまでのアニメ等に親しんだ経過が在れば、『戦後の戦争』の方は愉しいと思う。

或いは…「時には好い…」という感じの本というように思った…『機動戦士ガンダムUC』に関しては本篇が好い!!

機動戦士ガンダムUCバンデシネ 第1巻~第12巻

↓久々に漫画を12冊も纏めて入手…愉しく読了したところである…

【全巻】機動戦士ガンダムUC バンデシネ<1-12巻 最新刊>大森倖三

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↑とりあえずここの画は、“最新”の第12巻の表紙が採用されているが…12冊各々に美しいイラストのカバーが付いている…

“バンデシネ”というのは“bande dessinee”というフランス語で、カタカナでは“バンド・シネ”と書く場合も在るそうだ。「描かれた帯」という意味で「続きモノの漫画」という意味だ。

“バンデシネ”とやや見慣れない語が在るので「サイドストーリーのような感じ?」と思ったのだが、『機動戦士ガンダムUCバンデシネ』とは「UC(ユニコーン)の漫画版」ということであった…実際、読んでみた本作は「続きモノの漫画」という以上でも以下でもなく、小説やアニメで知っている物語であった…

『機動戦士ガンダムUC』については、原案の小説を大変愉しく読了し、アニメ化されたモノもDVDで観た…

↓読了した小説版はこちらで御紹介した…
>>ブック/『機動戦士ガンダムUC』

『機動戦士ガンダムUC』は小説を起源としているが、アニメ作品、漫画作品も登場している。各作品は、各々に各媒体が有する特長を活かして作品世界を見せてくれる。

「描かれている時点」に至るまでの出来事や劇中人物の経験や思考が精緻に描き込まれ、やや言葉が悪いが「くどい」のが小説であるとすれば、それらを整理して映像、音声で表現する「スッキリ」したのがアニメであろう。漫画は両者の中間でやや小説に寄っているように思った…

漫画に登場する劇中人物やメカは「アニメに登場したデザインを意識した作画」と見受けられた。或いは「アニメのファンに向けた」という要素が在ってそうしたのかもしれない…ストーリーづくりの方は、アニメ程の大胆な“整理”をせずに小説に寄り添っていて、更に言えば「画と台詞と説明的文」で見せる関係上、「膨らませている」かのように見える箇所も見受けられた…

本作の主人公であるバナージが搭乗員になって行く、“主役メカ”ということになる<ユニコーンガンダム>と呼ばれるようになって行く<RX-0>が作中に初めて現れる辺りだが、漫画は特徴的である。<RX-0>は「数年後の制式化を目指して試作された機動兵器で、目下のところ各種の試験が行われている」ということになっている代物だ。漫画では、この試験の模様が詳しく描かれ、「恐るべき新型」ということが読者に提示される。その上で、バナージがこれに巡り会う物語が進んでいる。この辺は小説よりも膨らんでいるように思えた…

本作では「永年の最高機密」であった“ラプラスの箱”なるものの争奪戦という状況が生じた中、<ユニコーンガンダム>は“中立”であるかのように争う陣営間を右往左往するのだが、宇宙空間で始まった物語の舞台は一旦地上に移る。この“地上”の部分だが、アニメでは「大胆な整理・再編」が生じていて、小説とはかなり違う感じがする箇所なのだが、アニメでは劇中人物の相関関係に「小さな整理」が加えられているに留まっている。或いは「小説より好い」感じかもしれない。

というような按配の漫画作品…手持ちのアニメ版サウンドトラックを少々聞きながら、夢中で読んだ…

第12巻は、“地上”―というよりも、巨大な「空飛ぶ要塞」という感の航空機の上で展開する“上空”の部分も面白いのだが…―の部分の最後辺りで終わっている。以降、物語は再び宇宙空間で展開する。多分“続き”も登場するであろう…気長に待ちたい感じだ…

ブクログ

『虹の彼方に』(上・下)

夢中になって読み進めた長編小説が終幕を迎え、本を静かに閉じた後、手元に飲み物が在ればそれを一口頂き、禁止されていなければ煙草を点ける…もの凄い勢いで頭の中に入り込んだ作品世界が、静かに整理整頓されるのが、少しばかり自覚出来る…ような気がする短い時間である…そんな時間に整理されたことを、何となく綴ってみることが、「面白かった作品を広く紹介してみたい」ということに通じるのだと思う。

↓どんなに長い物語にも終幕は在る…“最終章”は上下2冊の体裁になった『機動戦士ガンダムUC(ユニコーン)』である…



虹の彼方に(上) 機動戦士ガンダムUC9





虹の彼方に(下) 機動戦士ガンダムUC10

↑朝・昼・夜と読む時間を設け続けた―思わずそうしてしまったが…―この『機動戦士ガンダムUC(ユニコーン)』だったが、10冊目を読了した時は、時々ランチを愉しみに出掛ける近所のSホテル内に在るレストランのカウンターに居た…読み終わって、珈琲を啜り、煙草を点けたのだった…

『虹の彼方に』の副題の下、上下2冊で描かれるのは、<ユニコーン>の「最後の闘い」である…所謂“最終決戦”というやつだ…

探し続けた「ラプラスの箱」が在る場所の見当はついた…バナージはその「ラプラスの箱」を目指すが、彼と<ユニコーン>を搭載し、“独自行動”で進む宇宙艦<ネェル・アーガマ>の前には、“袖付き”ことネオ・ジオンの、全ての残存兵力が立ちはだかる。

<ネェル・アーガマ>と“袖付き”の戦力差は大きかったが、バナージの<ユニコーン>を先頭に、マリーダが乗る<クシャトリア>も出動し、彼らは必死に目標を目指す。

バナージの<ユニコーン>の前には、“袖付き”の領袖であるフル・フロンタルが乗る<シナンジュ>、彼に従うアンジェロが乗り、秘密兵器を搭載する<ローゼン・ズール>が迫る。更に<ユニコーン>の同型である<バンシィ>も迫る…

強敵との戦い…漸く辿り着く「ラプラスの箱」の真相…更にそれを抹殺してしまおうとする禍々しい暴威…それらに立ち向かうバナージ達…

ということで、「未読の方のお愉しみを妨げない」程度で筋書きに言及しようとすると、どうしてもぎこちない感じになってしまうことを免れられないのだが…

この『機動戦士ガンダムUC(ユニコーン)』はアニメーション作品も存在するのだが、それは「小説を原案に制作」というものである。これはDVDまたはブルーレイが順次発売されていて、未だ“フィナーレ”には至っていない…

実は“ガンダム”関係の小説は非常に多く在るのだが、相当数「アニメーション作品を原案に執筆の小説」というものが含まれている。「原案の小説が先行」したのは、シリーズの30年を超える歴史―最初の『機動戦士ガンダム』が登場したのは1978~1979年頃である…―の中で初めてかもしれない。

更に、その「初めての型」の中、“小説”として「宇宙世紀」なるものに「一定程度“普遍化”された文学的なもの」を与えることに成功した作品であるように思う。“ガンダム”と名が付いた瞬間に、「一部のファン」という「特殊な人々」の手中のモノであるかのように即断―佳いモノと出逢う可能性を狭めてしまう在り様であると思うが…―する人が在るかもしれないが、本作を読んでみると、「決してそうではない」ということに思い至る…

本作の人類は、“宇宙世紀”なるものを創造する。創造に際しての、想い、決断、祈りというような様々な要素が「遠い記憶」、「受止め方が変容」という状況に、或いは「封じ込められた記憶」というような型になる程に時間が経った頃…それらに関連した“謎”を投げ掛けようとする人が現れ、“謎”に首を突っ込むことになった群像が描かれるのが本作である。

本作では“モビルスーツ”なる巨人型の兵器がが宇宙空間を飛び交ってみたりする。「だから面白い」という面は在るが、それだけではない…「“封じ込められた記憶”に関する“謎”を投げ掛ける人が現れたことを契機に、作中の群像がそれを巡って動く」ということなら、舞台が時代劇の世界でも西部劇の世界でも、古代でも中世でも現代でも、遠い未来であっても、どういう状況でも物語を創り、綴ることが出来そうである…

“小説”と“映像”との決定的な違いは「ディーテール」であると思う。劇中人物が、そこに現れる時点までに積み上げてきた様々なもの―経験、思考、感情などなど―を濃密に描き込むことが叶うのが“小説”である。本作は、その“小説”の特長を活かし、各劇中人物が濃密に描き込まれている。当然ながら、劇中人物達は作中世界として想定されている“宇宙世紀“の中での経験を重ねている訳だが、そうしたものや、そこから紡がれる各々の想いは、「現代世界の何処か」、更に「自分が住む国の何処か」で誰かが紡いでいるものに重なり合うと思わせる“説得力”が在る…これに加えて、これは本作が採った“SF”という様式の面白さでもあると思うが、劇中人物達が生きる“宇宙世紀”というものの歴史や、その結果として作品世界の時点で在る状況に、「私達が生きている時代」が巧妙に仮託されてもいるように感じる…

本作は、各劇中人物が各々に“光”を追い求めて交錯しているような印象を抱かせる…“光”に関しては、「各々の劇中人物にとってのモノ」が在って必ずしも簡略に説くことも難しいが、究極的にはそれが「人類にとって?」に拡がり、「そして、あなたにとって?」と読者に跳ね返ってくるような感になっていると思う。

或いは「対照的な劇中人物」を提示することで、本作は上述のような印象を強めているかもしれない。例えば…工作船<ガランシェール>のジンネマン船長の下に居る女性パイロットのマリーダと、“袖付き”の領袖であるフル・フロンタルに従うアンジェロが在る…マリーダもアンジェロも「かなり悲惨な境遇」としか表現のしようが無い状況から、各々が仕えているジンネマンやフル・フロンタルに出逢っている。マリーダは、曲折を経ながらも最終的に“光”を見出すが、アンジェロはそういうようにはならなかった…更に彼らが仕えるジンネマンとフル・フロンタルも対照的だ。兵士としての矜持、一家の父親としての幸福を打ち砕かれ、何かを求め続けながら年輪を重ねたジンネマンに対し…大衆の思惟を受容れる器になると称し、何処からどうやって現れたのかよく判らない、何やら“非人間”という印象のフル・フロンタルなのである…

かなりの勢いで10冊を読み進んだ…色々と得るものも在ったと思う。何となく思い付いて紐解き始め、かなり夢中になれた10冊だった…

『宇宙と惑星と』

「十分の八」ということになれば、「全体の8割」である…“全10巻”の小説と聞けば、かなりのヴォリュームであるように思えるが…

↓ここまで以上に勢いよく、愉しく読了した『機動戦士ガンダムUC(ユニコーン)』の第8巻である…



宇宙と惑星と 機動戦士ガンダムUC8

↑タイトルの『宇宙と惑星と』は「そらとほしと」と読む…“宇宙”を「そら」と読むのは、かの映画『機動戦士ガンダムIII めぐりあい 宇宙』以来ではないかと思う…“ガンダム”では定番である…

モビルスーツ<ユニコーン>と、それに乗る主人公のバナージが最初に収容された、連邦軍の宇宙艦<ネェル・アーガマ>であるが、第5巻で描かれた“ラプラス”での戦闘後、地球軌道で「待機」という名目の足止めを喰らってしまっていた。

この艦は“ロンド・ベル隊”の所属ということになっているのだが、工業コロニー“インダストリアル7”での隠密作戦のため、“参謀本部付”という型になっていた。「機密!!」というようなことで、本来の所属である“ロンド・ベル隊”までも含み、自軍の他艦船等との自由な交信もままならない状態だった。<ネェル・アーガマ>と思うように連絡が取れずに不満を抱いているのは、“ロンド・ベル隊”側でも同様であった。“ロンド・ベル隊”司令であるブライト・ノア大佐は、座乗する旗艦<ラー・カイラム>が、寄航中のトリントン基地で旧ジオン軍系のモビルスーツ隊に攻撃を受け、艦に損傷も発生していた“非常事態”を口実に、無理矢理に<ネェル・アーガマ>と交信し、想いを<ネェル・アーガマ>に伝えたのだった…

2週間も足止めという状態に倦み、艦内の空気も険悪になっていた宇宙艦<ネェル・アーガマ>では、ブライト・ノア大佐の密命を受け、独自の行動を開始し始めた。

他方、ビスト財団は「ラプラスの箱」関係の一件を解決するため、連邦軍の宇宙艦<ゼネラル・レビル>を引っ張り出し、それを拠点に宇宙での行動を始める。そこにはモビルスーツ<バンシィ>を持ち込んだアルベルトの姿も在った。アルベルトは「<バンシィ>のパイロット」として、やや意外な人物を従えていた…

モビルスーツ<ユニコーン>に乗るバナージが「ラプラスの箱」の情報を求めて行動する中、フル・フロンタルが率いる“袖付き”も蠢く…やがて事態は意外な進展を見せる…

ということで、この第8巻のあらすじに関しては、「未読の皆さんのお愉しみを妨げない」ことを意図すると…一寸綴り悪い…「そう来る!?!?」という展開を見せる…

この第8巻には“ジオン共和国軍”というものが登場する。“ジオン共和国”というのは、スペースコロニーの独立を掲げて戦争を起こした経過が在る“ジオン公国”の後身ということになる国である。この国に関する作中での言及…読んでいると「何か…“何処かの国”を想わせる…」というものが在る。或いは、同じ作者の手になる『亡国のイージス』に在ったお話しのような…何か不思議な感じがした…

この第8巻で、作中人物達は各々に、何かを乗り越えて新しい段階に踏み出していたり、突き抜けられない何かに鬱々としてみたりと、それぞれの「物語の展開を受けた“変化”」が顕著になってきていると思う。

いよいよ、“独自行動”の宇宙艦<ネェル・アーガマ>に集った人達、フル・フロンタルが率いる“袖付き”、背後にビスト財団が蠢く連邦軍と各陣営が「一件落着」に向けて走り始める感となってきた…

益々、このシリーズを読む時間が欲しくなる!!!

『黒いユニコーン』

『機動戦士ガンダムUC(ユニコーン)』の文庫本は“角川文庫”と“角川スニーカー文庫”の2種類が在る。両者は表紙のイラストなど、一寸感じが違う…後者の方は、多少の挿絵が入っていたり、最初の方に作中人物のことや登場メカの設定等の説明が入っている。そういう違いは在るが、本文は全く同じである…(両者の本文が違うと、一寸妙だが…)

実は…“角川文庫”の方でこのシリーズを入手し始めたのだが…第6巻まで揃えた後、第8巻から第10巻を入手していて、第7巻を入手し損なっていた…「深刻な手違い」である…だからと言って、どうということもないのだが…多少慌てた…

という訳で、近所の書店を何となく覗き…“角川スニーカー文庫”の方で第7巻が在った。“角川文庫”で揃えたいというような気もしたが…「早く続き!!」という気持ちが強く、その“角川スニーカー文庫”の方を入手した。

↓とにかく読みたかった第7巻…非常に愉しく読了した…



黒いユニコーン 機動戦士ガンダムUC7


作品の最初の方で、モビルスーツ<ユニコーン>について、「地球で、重力下運用の試験中」ということになっている“2号機”の存在がさりげなく示唆されていたのだが…いよいよそれが現れる!!<ユニコーン>と同じ形状ながら、外装は黒で<バンシィ>と名付けられている…

<バンシィ>は<ユニコーン>を拿捕してしまう。<バンシィ>は、宇宙艦<ラー・カイラム>に搭載されている。例によってビスト財団の横槍である…<ラー・カイラム>には、アルベルト、その叔母で“当主代行”のマーサらビスト財団の面々、オードリー、<ユニコーン>に乗っていたバナージが顔を揃える…

宇宙艦<ラー・カイラム>は、豪州の連邦軍施設、トリントン基地へ向かう。“辺境”という感の目立たない基地から、ビスト財団の面々は宇宙へ帰還することを目論んでいるようだが、その手段がよく判らない…

<ユニコーン>と別れた工作船<ガランシェール>では、重要機密「ラプラスの箱」に通じるという<ユニコーン>を奪い返すこと、更にビスト財団に連れ去られた“オードリー”やマリーダを取り戻すことを目論む。ダカールの変事を受け、取締りが強化されそうな情勢になってきたことをから、隠し持っている武器を棄てて逃げ出そうとしている各地の旧ジオン軍系勢力に向けて、<ガランシェール>は協力を呼び掛ける…

というような次第だが…この7巻は、実際の時間にして然程長いとも思えない時間―読んだ感じでは1日だ…―の出来事が、濃密に、同時にテンポ良く描かれ、かなり引き摺りこまれる…更に、非常にスリリングな展開になっている…

<ラー・カイラム>が滞在するトリントン基地で戦闘が発生するのだが、その場面がなかなか面白い。旧ジオン軍系勢力が旧いモビルスーツで登場する…更に…脱出を図るビスト財団の面々を追う<ユニコーン>の戦いが好い…奪われたオードリーやマリーダを取り戻すべく、大空での熱闘が繰り広げられる…

この第7巻では…ビスト財団の男、アルベルトと、<ラー・カイラム>に乗務した連邦軍パイロットのリディが各々“キーパーソン”になっているような気がした…

この『機動戦士ガンダムUC(ユニコーン)』を読み始めて間もなく、「“ガンダム”というのはは“こういう感じ”だよな…」と何となく納得出来てしまう展開で、流石に「同世代の“ガンダム”ファン」でもある作者の手になるものだと感心していたが、この第7巻辺りになると、各々の出自や立場や能力の中で劇中人物達が「積み上げているもの」や、物語の展開を受けての“変化”が精緻に描き込まれていて、読む側に迫って来るのを自覚せざるを得ない。正しく「独自に新しいSF大河ドラマという感じで世に問う」という“立ち位置”で送り出されているような作品だ。

『重力井戸の底で』

『機動戦士ガンダムUC(ユニコーン)』の第5巻は、正しく「どうなった?!」という場面で「続く…」になっている…

↓故に、凄まじい勢いでページを繰ることになってしまった第6巻である…



重力の井戸の底で 機動戦士ガンダムUC6


宇宙艦<ネェル・アーガマ>は、地球軌道で待機ということになってしまう。フル・フロンタル隊は地球軌道から脱出した。ビスト財団のアルベルトは、<ネェル・アーガマ>に迎えに来たシャトルで地球に去った。ネオ・ジオン側の民間貨物船を偽装する工作船<ガランシェール>は、大気圏内に突入した。そして、<ガランシェール>はモビルスーツ<ユニコーン>を収容していた…

「ラプラスの箱」を巡り、ビスト財団との綱引きをするリディの父ローナン・マーセナス連邦議会議員は、宇宙艦<ネェル・アーガマ>が本来所属している“有事即応部隊”の「ロンド・ベル隊」の司令官と接触する。「ロンド・ベル隊」の司令官は、同隊の旗艦<ラー・カイラム>の艦長を兼務しており、装備試験のために地球に滞在中であった。その司令官とは、ブライト・ノア大佐だった…

<ラー・カイラム>は、地球に降下したらしいことが判明しているものの、行方が判らない工作船<ガランシェール>を探し始めた…

当の工作船<ガランシェール>は、アフリカ北部の砂漠に不時着していた。直ぐに飛行出来ない状況に陥っていた。ジンネマン船長は、砂漠を歩いて町を目指し、救援を呼ぶことを思い立ち、バナージを同行させた。宇宙育ちのバナージは、初めて地球の砂漠を歩く…

その頃、地球連邦の首都はアフリカのダカールに置かれていた。建設ラッシュの様相も見せるこの街で、変事が発生する…

というような按配だ…

この巻では…かのブライト・ノアが登場する…

ブライト・ノア…“ガンダム”に因縁が深い人物である。シリーズの各作品に顔を出している…

初登場は初めの『機動戦士ガンダム』だった。任官したばかりの新米の少尉として宇宙艦<ホワイトベース>に乗務していた彼は、ジオンの襲撃で艦長以下、彼自身より上位の士官が悉く戦死または負傷で動けない状況になった中、「動ける軍人・軍属で最も上位」という型になってしまったため、止むを得ず“現場責任者”ということになる。避難民の少年少女を現地徴兵した体裁で、モビルスーツ<ガンダム>を擁する<ホワイトベース>は戦隊として活動することになり、ブライト・ノアは“指揮官”というようなことになった…そして、彼はジオン公国が降伏することになる「宇宙要塞ア・バオア・クー」の戦いまで、戦い抜いたのである…

その戦争から数年…連邦を牛耳る軍閥系勢力と、反軍閥系・反連邦政府系勢力の内線の中、ブライト・ノアは後者に参画し、宇宙艦<アーガマ>の指揮官となるが、その艦は<Zガンダム>の母艦である。その状態は<ガンダムZZ>の時期にまで続く…更に『逆襲のシャア』でも、ブライト・ノアが指揮を執っていた<ラー・カイラム>には、艦載機隊のリーダー格になっていたアムロ・レイ大尉(最初の<ガンダム>のパイロットだった…)が乗った<ニューガンダム>が積まれた。「“ガンダム”を擁する戦隊の指揮官」と言えば「この人!!」という感になってしまっている人物なのだ…

そのブライト・ノア大佐は、不穏な事態にまたも身を投じることになった…

ダカールで発生する変事を巡って、連邦政府が統一を強めようとする中、不当な弾圧を受けた怨念を持ち、“反連邦”という意味で「ジオンのシンパ」であり続けたという人達が登場する。こういう人達の描写を通じ、何か“現代世界”が語られていると思えるような部分が在るのが第6巻だ…

この第6巻では、工作船<ガランシェール>のジンネマン船長が凄く好い…

色々と「これは好い!!」というポイントを内包しながら、ダカールで発生する変事が収束…するとここで、また正しく「どうなった?!」という場面で「続く…」になってしまう…

『ラプラスの亡霊』

「かなり面白い!!」ということになった長編小説は「続き!?」ということになって、朝・昼・晩と時間を設けてどんどん読み進んでしまう…

↓この『機動戦士ガンダムUC(ユニコーン)』も、その「どんどん進んでしまう」という状態になり、第5巻に至ってしまった…



ラプラスの亡霊 機動戦士ガンダムUC5


モビルスーツ<ユニコーン>は、連邦軍宇宙艦<ネェル・アーガマ>に戻った。“袖付き”ことネオ・ジオンの拠点<パラオ>での戦いを経て、愈々本格的な補給が必要になった状態の<ネェル・アーガマ>は、連邦軍が拠点とする宇宙港<ルナツー>を目指そうとする。そこに、「ラプラスの箱」を巡る問題で蠢く“ビスト財団”から横槍が入る…

モビルスーツ<ユニコーン>に仕込まれたプログラムは、順次「ラプラスの箱」に関連すると思われる情報を示している。<パラオ>での戦いの後、システムは場所を表す座標を示していた。<ネェル・アーガマ>は、現在位置から<ルナツー>への途中に相当するその場所に立寄ることになった…

立寄ることになった場所とは、“史跡”とされている「宇宙ステーション<ラプラス>の址」であった。宇宙ステーション<ラプラス>とは、“宇宙世紀”に暦を改めようとしていた頃に首相官邸が設置された場所である。建設当時は余り問題にならなかったのであろうが、件の<ラプラス>は、モビルスーツは宇宙艦にとっては、制動を少し誤ると簡単に大気圏に突入してしまう、微妙な位置に在る…

暦を改めるセレモニーの最中、宇宙ステーション<ラプラス>は爆破され、中にいた連邦政府首相を始めとする要人は爆殺されてしまった…後に、その宇宙ステーション<ラプラス>の残骸は“史跡”に指定されていた…

モビルスーツ<ユニコーン>は、その“史跡“に踏み入った。すると、不思議な現象が生じた。暦を改めるセレモニーの際に、当時の連邦政府首相が行っていた演説が、<ユニコーン>の機体から辺りの宙域に発信され始めたのである。

他方、<パラオ>でオードリーを伴って密かに抜け出したリディは、事態打開に向けて父の助力を得ようとしていたが、父からは関わりを持ってしまった機密事項の真相を聴かされ、衝撃を受けていた…

<ラプラス>で爆殺された、当時の首相の演説が亡霊の声のように流れる最中、“袖付き”の一隊が姿を現し、戦闘が始まった。迂闊な動きをすると、モビルスーツが大気圏に突入してしまう状況下での戦闘だった…

というようなことであるが…“少年”が“大人”とぶつかる、または話し合うという場面が、この巻ではなかなか印象に残る…序盤の辺りに、何処となく“悪役”風な雰囲気を醸し出す、<ネェル・アーガマ>に乗務してきた特務部隊の指揮官…この辺りでは、主人公の少年バナージの脇で「大人」とか「男」とか「責任」、「友情」、「信頼」というようなテーマに関して示唆する、「味わいのあるおじさん」という雰囲気になっている。

この巻辺りになると、「アナハイム・エレクトロニクスの役員」ということになっていて、実はビスト財団関係者であるアルベルトが、少し存在感を増してくる…主人公バナージとの意外に深い関係も在る人物だ…

バナージ、彼が事態に巻き込まれて行く切っ掛けになったオードリー、そしてリディやマリーダなど、多くの作中人物が“流転”するようなイメージが強まって行くのが、この巻である…

考えてみると、この巻で“前半”が終わる型だが…益々「続き!?!?」という感じになる…

『パラオ攻略戦』

「面白い!」ということになり、「続きは!?」ということになると、何冊にも亘って綴られている長編も、凄い勢いで読み進んでしまうものである…

↓ということで、「止まらない…」状況になって、『機動戦士ガンダムUC』の第4巻を勢いよく読了してしまった…



パラオ攻略戦 機動戦士ガンダムUC4


第3巻の最後…モビルスーツ<ユニコーン>は戦いの最中に「袖付き」ことネオ・ジオンに拿捕されてしまった…<ユニコーン>は「ラプラスの箱」なる重要機密に繋がっているとされるモノである。連邦軍はその奪回を図る…

「袖付き」の襲撃で大きな損害を被った連邦軍宇宙艦<ネェル・アーガマ>だったが、ここまで従事してきた行動が“隠密作戦”であったことから、補給と応急修理を受けただけで、引き続き任務を遂行する羽目になった…かなりキツい状況だ…

拿捕された<ユニコーン>が持ち去られたと見られるのは、資源採掘を目的にコロニーや地球との往来がし易い宙域に持ち込まれた小惑星<パラオ>であった。<パラオ>は「袖付き」と通称されるネオ・ジオンの拠点となっていたのだった…

<ネェル・アーガマ>は<パラオ>での作戦行動に向かおうとするのだが、「袖付き」の襲撃に生き残ったモビルスーツパイロットのリディと、かの“オードリー”、そしてバナージの友人である避難民だった2人の民間人は、補給に現れた輸送艦に乗せられて移動することになった…そしてここで、リディは大胆な行動に出る…

<ユニコーン>に乗っていたバナージは、「貧しい、古びた鉱山町」の様相を呈している<パラオ>に連れ去られた。パラオでは、ネオ・ジオンに身を投じる人々の様子を垣間見ることになる…

やがて…<ネェル・アーガマ>による作戦行動が始まった…更に、技術の粋が集められた<ユニコーン>に隠された意図が示唆される…

ということで…未読の方のお愉しみを妨げない意味で、これ以上を綴ることは控えたいが、主要な劇中人物達が更に掘り下げられながら、資源採掘を目的に小惑星を組み合わせて構成された人口天体を攻撃するという、SFならではの戦闘がテンポ良く描かれる…

この巻では、主人公のバナージの前に作品の比較的早い段階で登場したネオ・ジオンの女性パイロット、マリーダに脚光が当たっている。哀しい運命を負った人物である…

この巻では、バナージが“戦争”や“テロリズム”や「克服し難い貧しさを負った人々」というような問題を考える場面が在る…何か、“宇宙世紀”という架空の歴史に仮託しながら、「現代世界に淀んでいるもの」を考えるような一面が在る…或いはこの作品の“らしさ”であるような気がする…更に言えば、「架空の世界の物語に仮託して現代を語ろうとする」というのは「“SF”と呼ばれるジャンルの在り方そのもの」かもしれない…

何気なく出くわした作品だが…なかなかの秀作で、益々「続き!?」という状況になってきた…

『赤い彗星』

第1巻、第2巻を一気に読了し、大変面白かったので…

↓第3巻も一気に…



赤い彗星 機動戦士ガンダムUC3

↑比較的薄目な文庫本で、調子よく読み進めると、あっという間―半日や一日…―に読了してしまうような分量である…そして「続きは!!?」ということになってしまう…

工業コロニー<インダストリアル7>で発生した戦闘の後、作戦行動に従事した連邦軍宇宙艦<ネェル・アーガマ>は、恐るべき威力を発揮して場を収拾してしまったモビルスーツ<ユニコーン>と、3人の避難民間人を収容した。

<ネェル・アーガマ>は“待避”、“待機”という指示を受け、混乱が生じた<インダストリアル7>を離れ、過去の戦乱等で破壊されてしまったコロニーの残骸等が漂う“暗礁宙域”に身を潜ませていた。

収容した<ユニコーン>は、戦闘が生じる原因となってしまった<ラプラスの箱>なるものとの関連が在るらしい代物で、中に乗っていたバナージが、何故にこの<ユニコーン>を動かせたのかなど、よく判らない。そして、避難民間人3人の中、オードリーに関しては素性が怪しかった…

そうした中、<ネェル・アーガマ>は襲撃を受けた。襲撃者は、連邦軍が“武装テロリスト集団”と規定する、通称「袖付き」ことネオ・ジオンであった。そして、<ネェル・アーガマ>に襲い掛かる赤いモビルスーツに乗る男は、嘗て人々が畏怖と共に口にした伝説の撃墜王の通り名「赤い彗星」の“再来”と言われる、“袖付き”の領袖格であるフル・フロンタルだった…

という具合で、物語はいよいよ活性化してきた…

<ユニコーン>に乗ることになった、不思議な経過を辿るバナージ…“正体”がこの巻で明らかになるオードリー…有力政治家の一族の出である連邦軍パイロットのリディ…こう言った面々の様子がどんどん掘り下げられる…卓越した技量で<ネェル・アーガマ>に壊滅的打撃を与えるフル・フロンタルの戦いなど、戦闘シーンもなかなか面白い…

未読の方のお愉しみを妨げない意味で、これ以上は内容に触れないが…「そう、来たか…」という場面で次の巻へ続くことになる…

作者は「同世代の“ガンダム”ファン」でもある訳だが…「“ガンダム”というのはは“こういう感じ”だよな…」と何となく納得出来てしまう展開になっているのが素晴らしいとも思う…が、それでも「独自に新しいSF大河ドラマという感じで世に問う」という“立ち位置”で送り出されているような作品だと思う。少年が、或いは青年が、“人生”や“社会”を考え、それらと向き合って行くような様や、“戦い”という“極限”の中での群像が精緻に描かれ、何か非常に「文学!!」という感じが漂っている…

暫く、このシリーズから離れられなくなってしまったような気がする…

『ユニコーンの日』(上・下)

未来の或る時期、人類は暦を“宇宙世紀”と改め、宇宙空間に人口天体を築いてそこに移民を送り込むようになり、何世代か経た辺りで戦乱が起こり…というのは、かの『機動戦士ガンダム』の世界であるのだが…この“宇宙世紀”という世界を舞台にした物語は随分と沢山創り続けられている。

この“宇宙世紀”を舞台に創られた物語の、最も新しいシリーズが『機動戦士ガンダムUC(ユニコーン)』ということになるであろう。

“宇宙世紀”を舞台に創られた物語は、最初のガンダムの「0079頃」、『ジオンの残光』の「0083頃」、Z(ゼータ)やZZ(ダブルゼータ)の「0087-0088頃」、『逆襲のシャア』の「0093頃」、『F91』の「0123頃」、『V』の「0153頃」等々と実に色々と在るのだが…『機動戦士ガンダムUC(ユニコーン)』は「0096頃」を想定している…

こういう具合に、“ガンダム”と名が付くと、何となく「勝手に拡がって、勝手に完結している世界の、一部の愛好者に向けた作品群」という雰囲気も出てしまうような気がするが…本作は決してそういうようなものでもない。“宇宙世紀”という設定や、過去作品で描かれた出来事や人物の事績等を「作中世界での歴史」として採り入れながら、「独自に新しいSF大河ドラマという感じで世に問う」という“立ち位置”を占めることを目論んでいるようだ…

↓“大河ドラマ”的に展開する作品の「最初の2冊」を入手して、非常に愉しく読了したところである…



ユニコーンの日(上) 機動戦士ガンダムUC1





ユニコーンの日(下) 機動戦士ガンダムUC2


“ガンダム”は、メカが活躍するような場面が在るので、アニメーションなど“映像”の作品で愉しむような題材という側面が在ると思うが、“宇宙世紀”という架空の歴史を綴った作品が多数蓄積されていて、「詳しく説く」必要が在るものが多々含まれてしまっている関係上、“小説”という型で展開するのも、なかなかに善いと思う。また“小説”は、劇中人物が直面している状況に至るまでの「積み重ねられた思い」のようなものが、“映像作品”以上に表現し易く、また伝わり易い面が在るようにも思えるので、善い企画かもしれない…

本作『ユニコーンの日』は、人類が暦を“宇宙世紀”に換えることにした、その当日に不穏な事件が起こる場面から綴られている…その不穏な事件に関わった、その当時はかなり若かった男が、相当な高齢者になって改めて登場するというのが“プロローグ”となる…

“ジオン公国”が独立戦争を起こして以来、幾つもの戦いが在った“宇宙世紀”の世界…伝説的撃墜王で、著名な政治思想家の遺児であるカリスマ、“シャア・アズナブル”が率いた“ネオ・ジオン”が引き起こした紛争が終結して3年程経った頃というのが、本作の舞台だ。

未だ造成が続いている部分も含まれる工業コロニー<インダストリアル7>には、巨大企業<アナハイム・エレクトロニクス>が出資する学校、<アナハイム工専>が在り、主人公のバナージ・リンクスはそこの学生であった。

学校の寮で暮らすバナージは早朝のアルバイトに出掛けたが、バイト先の都合で仕事が休みになってしまった。そこで何となく時間を潰すことになったのだったが、彼は不思議な少女に出会った。少女は“オードリー・バーン”と名乗った。

このオードリーと出会った日…<インダストリアル7>では、幾つかの勢力の思惑がぶつかり合い、“事件”が発生してしまった…重大な秘密を収めていると伝えられる「ラプラスの箱」なるものを巡り、戦闘が発生してしまったのだ…

バナージ自身も“秘密”を有しているのだが、彼が出逢うオードリーにも何やら“秘密”が在る…そしてバナージは、<アナハイム工専>の理事長でもあり、政財界の黒幕とも言われるカーディアス・ビストと出会う…

やがて…俄かに発生した戦闘によって混乱する<インダストリアル7>で、謎のモビルスーツ<ユニコーン>が始動し、恐るべき威力を見せた…

「未読の方のお愉しみを妨げない程度に…」と相当に省略した話しで概要を綴ってみたが…本作はなかなかに重厚な感じで“宇宙世紀”世界が描写されていて、主要な人物達の物語が、その重厚な感じの世界の中で展開している。勝手に“了解事項”にしてしまったり、「くど過ぎる…」ということもなく、適切な型で「積み上げられた“作品世界”」を巧く処理している…と読了後に思った。読んでいた時は、何となく夢中になってしまい、そういう「後から批評するような事柄」は特段に気にならなかった…

既にこの小説を原案に“映像作品”も何本か在り、登場メカの模型等も見受けられるようだが…「独自に新しいSF大河ドラマという感じで世に問う」という按配の、小説で展開する“ガンダム”に偶々出逢ったが、これは当分愉しめそうだ!!