『アクトレス』

↓テンポ良く進む物語に夢中になり、素早く読了に至った一冊である。

アクトレス (光文社文庫 ほ 4-21)



↑何人かの視点人物が作中に在り、各々の視点人物の部分が順次展開し、拡がり、または収斂して作中の事態が動いて行く。何か「映像」が読みながら思い浮かぶような感じでもある。或いは、この作者の作品では多く見受けられる雰囲気かもしれない。

奈緒(なお)、希莉(きり)、琴音(ことね)という視点人物にもなっている作中人物達が在り、更に別な視点人物達も幾分設定されている。

奈緒、希莉、琴音は栃木県内の街の出身である。5年程前の高校生の頃に、奇妙な事件に巻き込まれた経過が在った。互いに友人同士でもある。

前半の2割5分程は、彼らの歳月が語られる感である。高校生の年代であった女性達が、20歳代に入って、各々の路を歩んで行くまでの物語が在る。そして各々の路がまた交差して行くこととなる。

彼らの中、希莉は東京の大学に進んで演劇や脚本の執筆、更に小説を綴るというような活動をしている。色々な経過で大手の芸能事務所に一応所属するようになるのだが、少し変わった話しが起こる。希莉が過去に綴った小説の習作に関して、同じ事務所の人気女優の作品として、出版を前提にウェブ配信で発表するというようなことになったのだった。言わば「ゴーストライター」である。希莉は複雑な想いを抱く。

小説は怪異な事件が次々に起こるミステリー仕立ての内容である。連載というような体裁で発表されるのだが、第1回の配信後に小説に在るのと似たような、猫の死体が出て来る騒ぎが起こった。更に第2回の配信後、また似たような騒ぎが在った。

1回騒ぎが起こったのであれば偶然ということになるのかもしれないが、続けて2回である。何者かが小説を模倣する騒ぎを起こしているのかもしれないと気になった希莉は、独自にこの件を調べてみようとするのである。

希莉が調べ始めた一件は意外な展開を見せて行く。その行方を探ることが物語の核となるのだが、視点人物達の様々な物語が交差しながら事態は推移して行く。

事件の謎を解くという核は在るのだが、本作は女性達の仕事、家族、友人関係や男女の交際等、様々な「人生」が描かれる。加えて、作中に小説等を綴る希莉や人気女優、その関係者が登場するので、「表現すること」というようなテーマも入り込んでいるように思う。これが非常に面白い。そういう部分が少し深い余韻になる。

序に言えば、同じ作者の別な人気作品に関係する人物が一寸登場するので、にやりとしてしまった部分も在った。

もしかすると本作に登場している仲間達の、更に何年か後というような物語も登場するのかもしれないというような淡い予感も抱かせるような幕引きにもなっていた。なかなか愉しかった。

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