『新書 昭和史 短い戦争と長い平和』

↓「昭和史」というような題名の本は、何やら難しそうと手に取らないという人も少なくないかもしれない。が、本書はそういうように敬遠する必然性は全く無い。普通の小説やエッセイのような感覚でドンドン読み進められる。そうした意味で素晴らしい一冊だ。

新書 昭和史 短い戦争と長い平和 (講談社現代新書 2767)



↑2025年が「昭和100年」で「戦後80年」ということを踏まえて、「この100年?」というようなことを想い、考える材料を提供しようというのが本書だ。

「昭和」と一口に言っても、「昭和XX年」と明確に言い得る期間だけでも1920年代から1980年代までの60年間余りに及び、色々な要素が在る。加えて、「昭和XX年」の出来事や、「昭和」の或る時期の動きが極々最近迄の様々な事柄に繋がっているというのも多い。本書はそういう問題意識で、1926年頃から2025年に至る迄の「昭和100年」を通史的に論じようとしている。

本書では「グローバリゼーション」、「格差」、「デモクラシー」、「戦争と平和」というような4つの柱を想定し、過去100年の各時期に関して、こうした柱に関連する話題を、様々な人達が遺した証言等を一定の基礎に据えながら論じている。

世界の国々との関係が築かれ、それが進展する「グローバリゼーション」というのは昭和期以降に拡大する。世界の国々や地域間での、また国内の社会の中での「格差」というようなことも、昭和期以降には様々な変化が在る。選挙とその結果というような「デモクラシー」ということに関して、昭和期以降には様々な話題が在り得る。そして実際に軍事行動に携わる、携わらないの区別と無関係に「戦争と平和」というような課題は在り得る。

こうした4つの柱という問題意識の下、種々の“証言”を拾い集めながら論じると、「100年間に国、社会、人々が辿った経過」というようなことを通史的に網羅出来ようというものである。

本書で引かれた種々の“証言”、更に本書そのものを材料とし、過去の世界に踏み入ることを試みて、自分自身の人生等に照らしながら考え、自分自身の言葉でその考えを整理してみるというようなことが「知って学んでみる歴史」ということに他ならないのであろう。本書の冒頭部に挙っている「目指すこと」に通じる話しだが、本書はその「目指すこと」を実現出来ていると観る。

極々個人的な内容にもなる。自身の場合、興味を持って歴史関係の本を読む、テレビニュースや新聞や雑誌で社会の動きに纏わることを知ろうとするということをするようになったのは、恐らく1979年や1980年頃、小学校の高学年であった頃以降であると思う。とすると、本書に在る1979年頃から2025年に至る迄の色々な事項は「自身の人生の記憶に重なる」ということにもなる。

こういうのは読者各々によって些かの差異は在ろうが、多くの読者が共有し得る感覚のように思う。本書は「昭和史」と称して最近100年間程度の通史を打ち出しているが、結局は「あなたの人生の背景」を問うようなことになっているのかもしれない。

本書は、非常に読み易いと同時に、非常に読み応えが在ると思う。2025年が「昭和100年」で「戦後80年」ということことで、歴史への問題意識が少し高まっているかもしれない中、広く御薦め出来る一冊だ。

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