↑興味を覚えて第1作を読んだ後、順次各作品を読んでいる「鳴沢了」のシリーズの第7作である。このシリーズは、第1作で新潟県警、以降は東京の警視庁で刑事として勤めている鳴沢了が主要視点人物で、一貫してその第一人称で綴られている。本作もその例に洩れない。
物語の冒頭である。リョウ・ナルサワがミックことミケーレ・エーコと夜の街で、要注意人物の行動確認、所謂“張り込み”をしている場面から起こる。「リョウ・ナルサワ」とは「鳴沢了」に他ならない。鳴沢はニューヨークで活動しているのだ。
前々作(シリーズ第5作)で交際している内藤由美が息子の勇樹と共にニューヨークで活動する話しが持ち上がっている。前作(第6作)では、優美と勇樹は既にニューヨークで活動していて、思った以上に成功している。そうした中、鳴沢はニューヨークへ渡り、暫く滞在する術を模索しているということが示唆されていた。今作(第7作)でその鳴沢が模索していた術が明らかになった。警視庁からニューヨーク市警へ研修に出るという話しに乗り、鳴沢はニューヨーク市警で研修中なのだ。
ニューヨークで研修中の鳴沢は、ニューヨーク市警の色々な人達の話しを聴く他、様々な活動の現場に出て動き回り、見聞を拡げて様々な経験をしていた。ミックの張り込みの相方を務めるというのもそうした研修の一環であった訳だ。そうした研修の件の他、鳴沢は優美と勇樹のコンドミニアムを頻繁に訪ねる等して、パートナーや義理の息子と過ごすというような私生活の充実も満喫していた。優美にプロポーズして結婚するということも思い描いたが、タイミングがズレて正式な結婚ということにはなっていなかった。
優美の兄である内藤七海は、鳴沢が米国中西部の大学に1年間留学した時のルームメイトで、互いに親友と呼べる間柄だった。この内藤七海は将来を嘱望された野球選手でもあったが、怪我で野球選手としての活動を断念していた。そして故郷のニューヨークで警察に奉職し、刑事として活動していた。ニューヨーク市警の現場の刑事達の一部で、鳴沢は「ナナミの古くからの友人で、妹のパートナーで、甥の義理の父になるというリョウ」として馴染んでいた。
優美の息子の勇樹は、人気テレビドラマに出演する子役俳優として活動して成功していた。日頃のレッスン等と自宅を往来する際には関係会社の社員が同行していた。そういうことなのだが、最近は単独で寄道をしたがることが在って、そういう中で行方を見失うという状況が生じてしまったのだという。優美は動揺する。鳴沢も連絡を受けた。
鳴沢が優美と勇樹の自宅へ駆け付けると、内藤七海が何人かの親しい仲間を率いて現れ、勇樹を何とか探し出そうということになる。鳴沢も加わって動き回ると、勇樹が誰かに追われるようにしていて、路線バスに乗り込んだらしいと知れる。そして、そのバスがバスジャックされてしまい、通常の運行経路を離れて動いているらしいということも判明した。
鳴沢、内藤七海と仲間達はバスジャックされてしまったバスが入り込んだという倉庫に駆け付ける。銃声が聞こえたと、慌ただしく警察関係者が踏み込んだ中、バスジャックの容疑者が射殺された状態であった。そしてバスに乗っていたと見受けられる勇樹の姿は現場には無かった。やがて、姿を消した勇樹の周辺にチャイニーズマフィア関係者と見受けられる人物達の影が見え隠れする。
如何いう思惑なのか、勇樹を誘拐したらしいチャイニーズマフィア幹部の関係者達という様子の中、鳴沢は内藤七海と仲間達の支援を受けながら勇樹を探し出して救出しようと走り回る。
こういう物語なのだが、本作は「誘拐された義理の息子を取り戻すべく、親身になってくれる協力者達に援けられながら方々を動き回って奮戦する刑事」という「米国の刑事ドラマ」の主役を「東京の警視庁の鳴沢」が英語と日本語混じりで演じているというような、何か独特な様子である。そういう様子が凄く面白い。事件解決に向けて「真直ぐ!」で、クールなようでいて酷く熱いという鳴沢は、米国でもそのままだ。そしてパートナーたる女性の息子で、「大切な友人」としょうして鳴沢にも懐いている少年を無事に救出したいという一途な想いで戦う様は麗しいとも思う。
事態の進展に連れて、ニューヨーク以外の地域に迄踏み出して奔走する鳴沢が行き着く先が気になり、夢中で読んで素早く読了に至った。御薦め!
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