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↑少し前に読了した作品のシリーズで第2作である。途中に前作の件への言及が在り、1年半程後の出来事ということになっている。
本作に関しては、何か「映像作品的」というように感じた。第1部、第2部と各々の視点人物の目線で綴られ、第3部は両者の目線の部分が概ね交互に積み重ねられて展開するのである。
第1部は犯罪を犯してしまう側の目線になる。日向毅郎という大学4年生である男が動き、その時点へ至る迄の回想が交じる。そして高校の同級生の井沢真菜と出くわし、行動を共にして行く。
第2部は2人の犯罪の結果に直面する捜査員の側の目線になる。捜査一課の澤村慶司の目線となる。或る夜に事件で出動し、とりあえずその件の仕事が段落し、終電時間帯を過ぎた辺りになってしまってファミレスに入っていると、別な事件でまた現場に向かうという様子である。そういう中で2つの事件の捜査が進む。
第3部は逃走を図って動き回っているという日向毅郎と井沢真菜を、澤村慶司達が懸命に探し、身柄を抑えようとする展開だ。動き回る日向の目線で綴られた部分、彼らを探す澤村の目線で綴られた部分が概ね交互に積み重ねられる。
本作の題名の「歪」は何か暗示的だと思う。何処か歪んだ人生から罪が産れてしまい、それから逃れることを試みているが、「この人に話しを聴くしか無い」という事件現場の状況で、警察の捜査員達は行方を追うことになる。そういう状況にある2人が出くわし、行動を共にするという不思議な状況も生じる。こういう類の「歪」に一定の形を与えようとするかのような捜査員達の行動となる。
本作は架空の地名と、実在の地名が混在しているような中で展開している。多分、澤村慶司が勤めている県警は、神奈川県をモデルにしているのだと思う。彼に追われる日向毅郎の故郷ということになる「東北の小さな街」だが、情景や移動の様子の描写から、福島県の内陸部である会津地方か、宮城県の南側の内陸というような感じだと思った。こういう感じなのだが、逃げている日向毅郎の動きの中に東京や新潟という実在の地名も出ているのだ。
本作の物語である。
第1部では、日向毅郎が故郷の「東北の小さな街」の実家で用を足して、乗っている車で引揚げようとしている時に、高校の同級生の井沢真菜と出くわす。市の中では端と端のような感じながらも、同じ街に出ているということを互いに知る。井沢真菜は地元に一寸戻って、また引揚げようとしているとして「交通費を貸して欲しい」というようなことを言い出す。日向毅郎は「それならこの車に乗って行くか?」として、2人は車で移動を始める。そういう中、2人は御互いに罪を犯してしまったことを告白し合い、日向毅郎が思い描いた計画案で、2人で国外に逃走するという相談になる。そして移動を続ける。
第2部では、県警の捜査員である澤村慶司達が2人の罪の現場に臨むことになる。ワンルームマンションの部屋で、ベランダに置かれた箱の中で幼い子が凍死しており、室内で男性が刺殺されていた。部屋の借り主である女性の姿は無く、男性の血で汚れた衣類等を脱ぎ捨て、シャワーを浴びて着替えて何処かへ出てしまったという様子だった。その捜査が段落した後には、ワンルームマンションで異臭という騒ぎになって遺体が発見されたという話しが在り、澤村慶司達は現場に駆けつけることになった。男子大学生が他殺と見受けられる様子、鈍器で頭を殴られ、タオルか何かで首を絞めた見受けられる状態で発見された。2つの事件の捜査が始まるが、大学生の方は、特殊詐欺の“受け子”をやっていたらしいことが判る。
第3部では、計画の実行に向けて移動中の日向毅郎達が、雪で高速道路が通行止めになるというようなことで難儀する中、澤村慶司達が彼らを追う。逃走と追跡の果ては如何に、という物語である。
主要視点人物たる澤村慶司の他、上司の谷口課長、前作で行動を共にした女性刑事の永沢初美、県警のプロファイリング担当ということで澤村が少し鬱陶しいと思っている橋詰というような、前作で周辺に在った人達も健在で、各々に活躍だ。
逃走する日向毅郎と、追跡する澤村慶司という軸が前面に出ているような感では在るが、寧ろ本作は日向毅郎と出くわして行動を共にする井沢真菜が「裏の主役」かもしれない。何か余韻が深い物語だ。

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