『逸脱 捜査一課・澤村慶司』

↓警察の捜査員が活躍するという感じの小説だ。その種の小説を多々送り出している作者の作品で、偶々眼に留まって入手した。

逸脱 捜査一課・澤村慶司 (角川文庫)



↑紐解いてみると少し夢中になった。頁を繰る手が停め悪くなり、素早く読了に至った。

本作は明確に「〇〇県警」というような設定はなされていない。架空の県というような感じで、街の名も架空という感じだ。他方で、福岡、大阪、京都、東京、成田空港というような実在の地名が作中に出て来る場合が見受けられる。そうした様子で、また港や工業地帯が描写されているので、何か神奈川県や茨城県というような雰囲気だと思った。そういう些か本筋を外れているかもしれないような辺りが気になってはしまったが、それはそれとして作中世界に強く引き込まれてしまった。

物語は刑事の澤村慶司の視点で綴られている。それが殆どなのだが、一部に別な視点人物が登場する短めな部分が挿入される。別な視点人物とは、澤村達が手掛ける事件の犯行を重ね、そして警察の活動を見詰めているという人物だ。この人物の正体を解き明かし、この人物を追って逮捕を目指すという顛末が綴られた物語ということになる。

冒頭、この「別な視点人物」の部分で始まる。禍々しい犯行の様子が描写される。そしてその犯行の結果である事件現場に臨んで捜査活動に着手する警察の捜査員達の様子になって、本格的に物語に入っている。

澤村は県警の捜査一課に所属する刑事である。澤村が在る班の出番となって事件現場に臨んだ。他殺と見受けられる遺体が発見されたのだ。細い線で絞めたと見受けられる状態であったが、首筋に小さなナイフが突き立てられていた。澤村はこういう様子の遺体が出て来る事件が2件在ったところで、眼前の遺体は3件目ということに思い至る。

やがて捜査本部が設けられ、澤村は所轄署の少し若い女性刑事である永沢初美と組んで活動することになった。永沢初美は生活安全課の刑事である。所轄署も投入可能な人員を全て投入する体制で捜査に臨んでいるのだ。

澤村は色々と過去の経過も在って、捜査一課の谷口課長とは長く深い縁が在る。そういう他方、西浦管理官とは折り合いが悪く、熱くなって衝突するというような場面さえ在る。そういうような中で、殺害されてしまった人物について掘り下げる。そして澤村が当初手掛けた事件の被害者だけではなく、他の2件に関しても調べるようになる。

難航しながら捜査が進められる中、澤村は研修留学経験者でプロファイリングをしているという橋詰と出会うことになる。澤村の目線で、橋詰は余り相性が好くない人物だった。マイペースに過ぎて苛立つような面が在る人物なのだ。

夏の暑い盛りという中で澤村達が奔走する。澤村達が見出す事件の真相は如何に?そして被疑者を無事に確保出来るのか?ということになって行く。

過去の出来事が契機で、何か熱い想いで仕事に取組む澤村は、何処か「一匹狼」的な、突っ走ってしまうような男である。動き易い服装が好いとジーンズを常々着用して動き回っている。個人的にはカメラ好きという一面も在るのだが、デジカメを常時持ち歩いて、事件現場や人の顔と名前を覚えると称して出逢う人の顔を写真に撮るというようなこともする。こういう少し際立った男が向き合う本作の事件は「連続殺人」ということになった。しかも、過去に類似事件が発生していて未解決で、その時に一般に報道するようなことをしていない「特徴」の「模倣」というのまで在る。何か、米国辺りの刑事ドラマのような雰囲気も色濃いかもしれない。

際立った感じの澤村に対し、真面目な若手という感じの永沢初美や、マイペースな橋詰という手近で動くような人達とのコンビネーションも好い感じだ。捜査が進み、事の真相に近付く中、次なる犯行を阻止しようと澤村が奔走するような場面の緊迫した様子、被疑者との対決等、本当に夢中になった。

2010年頃に登場した作品だという。少し以前だが、そういう古さは全く感じられない。実に面白かった。広く御薦めしたい。

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