↑本作は複数の視点人物が入れ替わりながら綴られるという物語であると思う。有名な「応仁の乱」に突入する少し前の時期を背景にした物語である。
主要視点人物は17歳の少年である才蔵、才蔵と出会う骨皮道賢や蓮田兵衛、道賢や兵衛と関わる女性の芳王子だ。蓮田兵衛に関しては、寧ろ他の主要視点人物達との関りで言動が見える感なのだが、本作で描かれて行く事態の鍵を握る人物として大きな存在感を示している。
上巻に関しては、才蔵が主人公的に感じられる。完全に零落した武家の出で、子どもの頃から苦労が絶えない生き方であったが、土倉の用心棒をするようになっていた。その土倉で骨皮道賢と出くわす。連れて行かれるのだが、結局は蓮田兵衛に貰われる。その蓮田兵衛は、才蔵が独習していた六尺棒を使う武術に関して、その道を究めるべく修行をせよと唐崎に在る師匠の下に送り込む。
この才蔵の物語の合間に、骨皮道賢の動きや、来し方を振り返りながら骨皮道賢や蓮田兵衛と関わる芳王子の様子が描かれるというような様子だ。
上巻は室町時代の半ばを過ぎたような頃の世相という中で、骨皮道賢や蓮田兵衛と出会って行く才蔵や、独特な生き様の芳王子を掘り下げるようなことで、「人生と共に在る社会」ということ、逆に「社会の状況故の人生ということがじわりと伝わるような物語になっているという気がした。
また蓮田兵衛が才蔵に色々と語る場面が在るのだが、そういう場面が何か好い感じだと思った。この蓮田兵衛が未だ17歳の才蔵に向って語る「世の中」という話しは、現代に在っても「言えている…」ということかもしれない。
映画で描かれた“事態”が発生して行く前の時期というような上巻である。下巻が愉しみだ。
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