↑身に降りかかった事件を乗り越え難く、酒浸りのようになってしまい、何年も無為に過ごした感であった警視庁の高城警部が失踪課に異動したという辺りから始まったシリーズである。失踪課は架空の部署であるようだが、そこに所属して活動する高城警部が主要視点人物となり、一人称の語りのように綴られているこのシリーズ各作品である。シリーズ各作品には、探偵が活躍する所謂“ハードボイルド”を想起させる雰囲気も漂う。
物語は前作の出来事の少し後という時期2月、3月頃というような様子の中で進む。
冒頭、高城警部が自宅ソファで酔い潰れたように眠っていて、「夢の中?」という男女の話し声のようなモノが聞こえるという気がしているというような辺りがら始まる。
男女の話し声というのは、高城警部が配属されている失踪課第三方面分室の醍醐刑事と明神刑事だった。施錠せずに眠ってしまっていた高城の家に上った2人は、少々手荒なやり方で高潮を起し、支度をさせて連れ出す。
高城は、身に降りかかった事件を乗り越え難く、酒浸りのようになってしまい、何年も無為に過ごした時期も在った。事件とは当時7歳の娘の失踪だった。失踪課での活動を続ける中、高城は生存を信じて娘を探そうとするようにもなっていた。が、その死亡が確定した。娘の失踪当時は建築中だった戸建て住宅で火災が発生して全焼してしまうという出来事が在った。その基礎部分から子どもの白骨遺体が見付かった。DNA鑑定等の結果、高城の娘であると確定した。
高城はこの娘の葬儀を済ませた辺りで酒浸りになってしまい、無断で欠勤して自宅で酔い潰れていたのだった。「全員出動」という事案の発生を受け、朝一番に醍醐刑事と明神刑事が連れ出しに現れたのである。失踪課第三方面分室の中では、高城は無断欠勤していたということには「なっていない」というのだ。戸惑いながら高城は捜査に参加する。
失踪課第三方面分室の全員で動くことになったのは7歳の少女の失踪であった。ピアノ教室から帰らないので探し、小学2年生の未だ幼い女児が動き回るような時間帯を過ぎていると夜遅くに交番に相談が入り、所轄署に加えて失踪課へも連絡が入って、第三方面分室の面々が活動を始めた。高城は自身も「7歳の娘が失踪」という経過を経験していることから、事件を何とか解決することを願いながら捜査活動に参加した。
やがて女児は絞殺死体で発見された。最悪な結果である。高城は娘を喪った両親に寄り添おうともするが、殺されてしまった顛末を解き明かすことが必要であると、執念深く事態を調べようとする。そうしていると、女児絞殺の一件が在った地区から然程遠くない辺りで、また女児の失踪が発生したという報せが在った。高城は走った。
こういうことで、自身の身に降りかかった事態であったような、7歳女児の失踪というような事態が相次いだ中で、脱力状態から立ち直る高城が執念深く証言を追って被疑者を特定し、取り押さえる顛末である。被疑者を捜査員達が追跡して犯行を繰り返しそうな場面での逮捕を試みる。その場面が凄く緊張感溢れる感じで夢中になった。
本作では、高城とコンビで動くことが多い明神愛美刑事に個人的な問題が生じてしまうというような場面も在る。また高城が長く付き合う居酒屋の店主が事務局長を務めているという「犯罪被害者の会」関係も出番が多い。こういう辺りは、同じ作者による少し後の、犯罪被害者の支援を担当する人達の物語のシリーズに通じるのかもしれない。
自らも無念を胸に、許すべからざる卑怯で歪んだ犯罪者を執念深く追って奔走する高城達の様子は、読んでいて力が入る。また前の巻の事案について、この巻での事案に少し関連が生じる。そういう辺りはシリーズらしい。
同じ作者の他シリーズに「失踪課の高城」と出て来るというのが在って興味を覚え、シリーズ各作品を紐解き始めた。そういう切っ掛けだが、各作品に出会えて善かったと思う。最も身近な家族が失踪し、それを巡って考え方や感覚の違いが判明して徹底的に不和となった配偶者と別れ、何やら酒浸りのようになっていた高城が、失踪課での活動や仲間達の支えで立ち直って行くシリーズだ。色々な人達の物語を解き明かすような捜査活動なのだが、許すべからざる悪には厳しく立ち向かっているという感じが好い。この愉しいシリーズは10作ということだが、終に第9作に至ってしまった。
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