↓幾つものシリーズを愉しんで来たのだが、最近になってシリーズ第1作を読み、気に入ったので既刊10作を順次読み進めている。その第7作ということになる。各作品が非常に愉しいのだが、本作も夢中になった。
↑身に降りかかった事件を乗り越え難く、酒浸りのようになってしまい、何年も無為に過ごした感であった警視庁の高城警部が失踪課に異動したという辺りから始まったシリーズである。失踪課は架空の部署であるようだが、そこに所属して活動する高城警部が主要視点人物となり、一人称の語りのように綴られているこのシリーズ各作品である。シリーズ各作品には、探偵が活躍する所謂“ハードボイルド”を想起させる雰囲気も漂う。
本作の物語は寒くなって行く時季の或る日ということで始まる。
冒頭、高城警部は名刺を示しながら高校1年生の少年に話し掛けている。少年が小学1年生位であったような頃に関する話しをしている。
高城が酒浸りというような状態に陥ってしまい、更に離婚に至る切っ掛けとなった、乗り越え難かった身に降りかかった事件というのは娘の失踪であった。姿を消してしまった当時、娘は7歳の小学1年生だった。その娘の失踪から7年程を経た頃、高城は失踪課へ異動し、その活動を続ける中、間違いなく死亡したということが判明したのでもない限り、娘を探すことは続けるべきだと考え、行動するようになっていたのだ。
高城の娘が失踪して、通算9年となり、同じ年だった子ども達は高校1年生という年齢になっていた。そういうことで、娘が失踪した当時に近所に住んでいた子ども達の話し、遠い記憶を探ろうと高城は手が空いた時間に活動していた。
そんな最中、失踪課第三方面分室に相談者が訪れ、事案が発生したという連絡を受けた高城は分室へ向かった。
相談が寄せられた事案というのは、IT系企業で仕事をしているインド人のエンジニアが行方を眩ませてしまったというものだった。勤務していた会社の総務部長の話しを聴き、インド人エンジニアを探すべく活動を開始しようとした時、また別な連絡が入った。
連絡が入ったのは、厚労省から警察庁、警察庁から警視庁、そして警視庁の部内で失踪課にという経路で寄せられた事案であった。厚労省の六条審議官が行方不明になってしまったのだという。六条審議官は、昼食を摂るとして厚労省のオフィスを出ていて、午後からの出席予定であった会議に現れず、連絡も取れないというので厚労省部内で問題が生じたと考えた。やがて自宅にも戻らず、更に家族とも連絡が取れなくなってしまっていた。六条審議官の自宅が在る辺りを管轄する第三方面分室に加え、厚労省等の官庁が在る辺りを管轄する第一方面分室が捜査員を出して事案に取組むということになった。
六条審議官というのは、失踪課第三方面分室に在る女性捜査員の六条舞の父親である。第三方面分室の六条舞の母親は大手製薬会社創業者一族の出で、所謂「御嬢様」で、何故警察官になって働いているのかよく判らないという様子で、定時退庁が常で合コンやら習い事と出歩いていて、外での捜査活動を積極的にするのでもなく、オフィス内でデータ整理を専らとしているような様子だった。父親の行方が判らなくなってしまったということで、六条舞はとりあえず自宅待機ということになっていた。
インド人エンジニアの事案には、交通部から異動して来ていて、掴み処の無い人物として余り評判が芳しくない田口警部補を取組ませるということになり、高城警部以下の第三方面分室の面々は六条審議官の事案に取組むことになった。
六条審議官は労働省に入省して官僚としてのキャリアを歩んで来た。近年は国外のエンジニアや研究者を迎え入れる「高度人材」というような事案等に取組んでいたのだという。その関連で接触した企業等の中に、行方を眩ませたインド人エンジニアが勤めていた会社も在ったらしい。2つの事案に意外な接点が生じたかもしれないという状況だった。
少し前の事案の後、何か覇気が無くなってしまっていた第三方面分室の阿比留室長だったが、父親の件で衝撃を受けている六条舞を援けようと、また高級官僚である失踪者の件で警視庁部内の方々からしつこい問い合わせが入って対応しなければならないことから、以前の精力的な様子が少し戻っていた。阿比留室長は、六条舞の様子を見舞うと称して六条邸を訪ねた。
その六条邸を訪ねていた阿比留室長から、高城は連絡を受けた。六条邸に脅迫電話が架ったのだという。六条審議官を誘拐したので、1億円の身代金を用意せよということなのだという。高城を含む関係者に衝撃が走った。
というように「六条審議官が姿を眩ませた!?」という事案の波紋が拡がって、次々と様々な出来事が起こり、それらの渦中で高城や、仲間の明神刑事や醍醐刑事が奮戦する。眼が離せない展開が続き、頁を繰る手が停められなくなってしまって、素早く読了に至った。そして読後の余韻に少々浸った。
本作は「そう来たか?!」と次々と色々なことが起こりながら展開し、失踪課第三方面分室の捜査員達が奔走し、警視庁の各課の捜査員達の動きも在って、事態が意外な方向に向かって収束するのが面白いのだが、途中の様々な細かい描写も凄く面白いと思った。行方を眩ませたエンジニアの会社の総務部長による「役所が絡むと」というような話し、六条審議官による行政や政治を巡る話し、評判の芳しくない田口警部補が動き回ってみた顛末等、興味深く読んだ。そして、六条舞が警察官として勤めようとした経過の噂に、父親が渦の中心になった事案と向き合う中で経験する心境の変化や行動というような辺りも興味深い。
身に降りかかった事件を乗り越え難く、酒浸りのようになってしまっていた高城警部は、シリーズ各作品での出来事や活動を通じ、少しずつ変わって来た。如何いうようになって行くのか、益々夢中になりそうだ。
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