↑身に降りかかった事件を乗り越え難く、酒浸りのようになってしまい、何年も無為に過ごした感の高城警部が失踪課に異動したという辺りから始まったシリーズであるが、本作はこのシリーズの第5作ということになる。
本作の物語は梅雨時の或る月曜日から木曜日という感じの物語になっている。
高城警部は頭が上がらない存在である元上司に呼ばれて会食をする。席上、高城警部が渋谷中央署に間借りする失踪課第三方面分室に異動して以来、様々な事件の捜査で実績を挙げていて、第三方面分室は評価を上げているというような話しを聴かされる。
そういうことが在った後、渋谷中央署の失踪課第三方面分室に出勤してみれば「課長査察」という事案が待ち受けていた。半年に一度、普段は本庁に在る課長がやって来て色々と確認するという査察で、事前の準備書類が膨大なものになってしまう。室長の阿比留真弓警視と相談しながら取組まなければならないと高城警部は考えた。
そういうことで高城警部は阿比留室長に相談しようとするのだが阿比留室長の姿が見えない。何かの会議に出るということや、「庁内政治」というのか上昇志向の強い阿比留室長は色々な人に会いに行くことが多く、席を外しているという場合も少なくはない。が、行先を誰かが聞いているというのが普通である。今般は誰も知らない。面倒な作業が生じる査察対応準備を放り出して姿を眩ませてしまっている形だ。
高城警部は、とりあえず「時季外れのインフルエンザで高熱が出て休んでいる」という「ことにする」として阿比留室長を探してみようとする。が、阿比留室長は住まいのこと、家族のことというような個人的な事柄を全然話さない人物だった。第三方面分室の中では誰も聞いたことが無かった。世代が近い同性ということで連れ立って昼食を摂るような場面が無いでもない事務職員の小杉公子も、阿比留室長の個人的な事柄は聞いた記憶がないという様子だった。
阿比留室長の件で活動をしようとした矢先、失踪課第三方面分室に相談者が現れた。やって来た若い男性は大学生で、同じ大学に在る交際中の女子学生の行方がよく判らないのだと申し出る。土曜日に会った後、月曜日に相談をしている。少し性急であると思いながら話しを聴けば、訪ねてみた女子学生のアパートは施錠されておらず、扉を開けて中を覗くと誰かが家探しをしたような荒れた状態であったのだという。そこで警察に相談と思い立ったのだという。何かの事件を感じさせる状況であることから、この女子大生の事案にも取組むということになった。
やがて査察に向けて拳銃の保管庫を見ると、阿比留室長の拳銃が持ち出されていることが判った。阿比留室長は拳銃を持ち出して行方を眩ませてしまったということなのかと、高城警部達は危機感を強める。
高城警部を先頭に失踪課第三方面分室の面々は奔走する。「査察」は木曜日の午後3時に予定されていることから、それまでに阿比留室長の事情を探って、本人を見付け出す必要が在った。他方で女子大生の件も気懸りな話しが出て来る。懸命の捜査の果てに辿り着くことの真相は如何に。
という感じなのだが、本作は失踪課第三方面分室の面々が各々に全力を絞り出して奮闘する。そういう様に夢中になってしまう。頻繁に雨が交じる中で駆け回るが、次々と色々なことが起こり、やがて緊迫する展開になって行く。
本作の題名である「裂壊」だが、これは「破れてしまう」というような意味合いだ。「破れてしまう」のは何なのか。色々な意味合いが込められているようにも思う。
高城警部は「訳アリ」だが、阿比留室長も「訳アリ」であり、そこから拡がる波紋が本作の核心かもしれない。そういうような部分の他方、失踪課第三方面分室の面々が力を合せて難しい事態に立ち向かうというような感じが育まれている。益々、目が離せないような感じになって来たシリーズだ。
何本もの警視庁の警察官達が活躍するシリーズを手掛ける作者は、或るシリーズで別のシリーズに登場する部署や主要人物の名を出すようなことをする場合が多く在る。そんな中で「失踪課の高城」というのが在る程度頻繁に出る。そんなことからこのシリーズに関心を寄せたのだったが、出逢えて善かったシリーズである。
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