↓第3作である。これも非常に愉しく読み進めた。そして夢中になり、素早く読了に至った。
↑警視庁の架空の部署に所属して活動する警察官が主要視点人物となり、一人称の語りのように綴られている本作は、探偵が活躍する所謂“ハードボイルド”を想起させる雰囲気も漂う。そういうのもかなり気に入っている。
題名にも示されているが、物語を語る主要視点人物は高城賢吾である。警視庁の警察官で階級は警部だ。同期の中でも早めな時期に警部へ昇進した高城であったが、そこに個人的な事件が降り掛かる。降り掛かってしまった事件を乗り越え切れなかったような面が在り、酒浸りのようになってしまい、幾つかの所轄を異動し続けていたという「訳アリ」な人物だ。高城は現在でも酒は止められず、序にヘビースモーカーである。
この高城が「失踪者捜索の願いに関する聴取を真摯に行い、必要に応じて捜査を行う」という建前の失踪課、渋谷中央署に間借りする同課の第三方面分室に配置されている。建前は建前だが、警視庁部内では“盲腸”呼ばわれする者も少なくないような部署で、本流は外れてしまっている感は否めない。そういうことで、高城自身も含めて「訳アリ」な捜査員達が配置されていると言われている。
このシリーズは、この失踪課の高城警部や仲間達が出くわした様々な事件の顛末、向き合う人々の様子等が描かれているということになる。
本作の物語である。8月の或る日の出来事だった。
酷い暑さに辟易している最中、高城は酷い二日酔いであり、倒れてしまいそうな酷い状態でオフィスに在って書類仕事に取組もうとしているが、全く捗らず、周囲は飽きれる、または苦笑を漏らすという様子だった。
そこに法月が現れた。仙台へ出張し、用務を終えて戻ったのだという。捜査に着手した行方不明だった女性と見受けられる遺体が仙台市内の川の中州で発見された。法月は現地を訪ね、失踪課に相談していた本人の妹と一緒に遺体を確認し、捜していた女性で間違いないということになり、とりあえず用務終了であったのだ。
法月は心臓を患った経過を持っている。妻はかなり以前に病死していて、弁護士を務めているという娘が在る。その娘が高城に連絡を寄越す。高城は会った。上司として法月の心身に負担が掛かり過ぎないように配意願うという申入れが娘の用件だった。高城も少し気になっていたが、法月は周囲が少し懸念する程度に精力的に仕事に取組もうとしているように見えた。
そういう出来事が在った日の退庁時間に近くなった頃、失踪課に相談者が現れた。高城は女性捜査員の明神と2人で相談者に対応した。
現れた相談者は年配の女性で、息子が不在で全く連絡が付かない状態になって1週間程になるということだった。息子というのは大学の理事長を務めている。仙台近郊の街に在る中学・高校を発祥としていて、30年程前に東京に大学を開いたという学校法人で、現在の理事長は5年程前に理事長に就任した「3代目」であった。東京の大学の他に仙台近郊の中学・高校も経営していることから出張のようなことも多いが、それにしても不自然に過ぎるというのが相談者の訴えだった。そして社会的に高い地位を占める人物でもなる訳で、何としても問題の解決を図って頂きたいと強い調子だった。
高城は明神と組んでこの件に取組むことにした。翌朝に早速に相談者が大学理事長の息子と一緒に住むという邸宅を訪ねて捜査を開始した。高圧的、或いは強圧的な迄に息子の件の解決を促した相談者であったが、携帯電話に連絡が1本入った辺りで、不意に少し冷淡になった。高城や明神は不自然さを感じた。
高城達は行方が判らなくなった理事長の大学を訪ねた。大学の事務局で関係職員達の話しを聴こうとするのだが、「話すこと等は何も無い」というような酷い対応をされてしまう。益々妙な状態である。
不可解な状況が続く中、高城はこの大学の理事長の事案に向き合い続ける。そして明らかになる意外な真相は如何に?
という物語なのだが、今回は関係者の事情や想いを探って真相に近付くべく、老練な高城が執念深く動き回る。仙台方面へ出て色々と動き回る場面や、緊迫する展開も在って引き込まれる。或いは「ややほろ苦い?」という事件の結末かもしれない。
本筋から逸れるが、本作に仙台の街の食事を摂る場所や呑む場所が出て来るのだが、モデルになったような場所でも在れば、訪ねてみたいというようなことも思った。この作者の各作品に見受けられるが、作中人物達が飲食店等に立寄る場面の描写が凄く細かい。好き嫌いが判れるように見受けられるが、自身は嫌いではない。
作中での高城は幻影を見る場面が在る。このシリーズに少し夢中な自身は、高城が何やら動き回っているという幻影を見るようになってしまうかもしれない。何れにしても「訳アリ」なベテラン捜査員が執念深く事案を追う様子が一人称で語られるこのシリーズは、出逢えて善かったシリーズだ。
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