『蝕罪 警視庁失踪課・高城賢吾』

↓紐解き始めると「続き」が気になって落ち着かなくなる。そこで時間を設けてドンドン読み進む。やがて何時の間にか読了だが、気になっていた「続き」を知って大満足という感じである。

蝕罪 警視庁失踪課・高城賢吾 (中公文庫) [ 堂場瞬一 ]



↑2009年に登場した作品で、10冊に及んだシリーズの最初の作品であるという。初登場がやや以前ではあって、その当時の雰囲気を反映している描写も在るように思ったが、それでも古くは感じない。一定程度普遍性を帯びた事案内容と、関わる主要人物達の造形が面白いからなのであろう。

本作の作者である堂場瞬一は、警視庁の警察官が各々の担当部署で活躍するシリーズを何本も展開している。そうした中、近年は或るシリーズの作品と他のシリーズの作品とが「関わる」というような演出が比較的多く見受けられるように思う。他のシリーズに出て来る部署や人物に纏わる言及が在る、他シリーズの人物が一寸した登場をする、更に共演や競演という場合等、その程度は様々だ。

そういうことなのだが、幾つもの作品で「失踪課」という用語や「高城」という人名が出て来る。警視庁部内で少々煙たがられている部署として「失踪課」が挙がるというような感じで言及が在り、「高城」が独自な勘で動いて成果を挙げて来た少し知られている捜査員であったという言及も在る。更に幾つかの作品では、この「失踪課」の捜査員が「他部署の仲間」として現れて少々活躍というのも在った。

そんなことが繰り返され、「失踪課の高城?」と思うようになり、本作を紐解いてみることにしたのだった。

前置きのようなモノが長くなった。本作についてである。物語は、主要視点人物の高城賢吾の一人称の語りという調子で進行している。このスタイルは、読む側が主要視点人物の目線で作中の事案に入り込み易いと思う。雰囲気が外国の探偵モノを翻訳したかのような感じにもなるかもしれない。

冒頭、高城は異動で配属された部署に現れた。酷い二日酔いという様子でようやくオフィスに足を運んでいるという風であった。

異動したのは失踪課第三方面分室で、渋谷中央署の中にオフィスが設けられていた。警部である高城は、分室内では室長に次ぐ立場ということにはなる。失踪課は、失踪人に関して関係者の事情を聴き、必要に応じて捜査活動をするということになっている部署だ。が、当時の都知事の孫が失踪して遺体で発見されたという事件を受け、失踪人に関する捜査活動をしているという「アリバイ作り」のような受け止め方も部内ではされているような部署で、色々と難が在る捜査員が殆どという感じだった。

高城自身も難が在った。或る事件が身に降りかかり、少し私生活が荒んだ。酒浸りのようになってしまっていた。そういうようになって、捜査一課から所轄署に異動で、7年近くも積極的に活動をしていたとは言い難い状態だった。そして失踪課へ異動である。

異動した初日に高城に割り当てられた事案は、婚約者の失踪ということで届出をした女性が、婚約者の母親と共にやって来るということで、その対応をするということだった。高城は同日に異動して来た女性刑事の明神愛美と共に対応することになる。相方となった明神は若くして捜査一課の捜査員に抜擢されることが内定していたのだが、自殺者が発生して色々と人事の“玉突き”が生じてしまい、偶々失踪課に異動という経過を有していた。何か不機嫌で尖った雰囲気の女性である。

相談に訪れた女性は、婚約者の長野県内の実家を一緒に訪ねる約束であった日に予定どおり現れず、連絡が取れない状態になって数日経っていると申し出ている。様子が変なので実家の母親もやって来て、一緒に相談に訪れたのであるという。婚約者は職場での仕事振りも評価され、人柄も好いと評判も悪くない。姿を消してしまわなければならないような事情も全く思い当たらない。女性は婚約者の母親や、年が離れた小学生の妹とも折り合いが好く、新しい家族として人生の歩みを進めようとしている矢先に妙な事態になってしまったのだ。

この話しを聴き、高城と明神は活動を始める。行方不明の男性の辿った人生を遡るように、丹念に調べ、意外な事実に突き当たって行くのである。

身に降りかかった事件を乗越えられていないような、酒浸りに陥ったという辺りを克服したようなしていないような、そして降り掛かった事件に纏わる幻影を見てしまう場合もあるという、序にヘビースモーカーで、そういう他方で「不敵なベテラン捜査員」という一面を持つ高城賢吾の人物造形が凄く面白い。「如何する?高城警部?」という感じで、ドンドン読み進めてしまう感じだ。

高城も「訳アリ」だが、失踪課第三方面分室に居る面々は各々に色々な事情を持っている。そういう事柄もシリーズを通じて描かれる様子だ。本作で高城は、捜査活動に打ち込むという感覚を取り戻して行く感じだ。明神は偶然で不本意な異動をした中から、新たなやり甲斐を見出して活動しようというような感じになって行く。(それでもやや不機嫌で尖った雰囲気は続く様子だが…)

「失踪課」のシリーズそのものに触れ、作者が他のシリーズで何となく言及する、更に「失踪課」の捜査員が他のシリーズに客演ということをしてみる感じが凄く判ったような気がする。当分はこのシリーズの作品に夢中になりそうだ。

この記事へのコメント