『<ヴィジュアル版> ニッポン景観論』

↓<ヴィジュアル版>と敢えて題名に関して在るが、写真が豊富で、豊富な写真を見ながら本文を読んでいる中でドンドン進んでしまい、素早く読了に至る。

<ヴィジュアル版> ニッポン景観論 (集英社新書)



↑「進んでしまい」としたが、内容に引き込まれて、写真を観る眼の動きと、頁を繰る手の動きを停め悪くなってしまい、素早く読了に至るということなのだ。

この本は「2014年9月」に「第一刷」で、「2020年12月」に「第五刷」である。この辺りに少し驚いた。概ね10年も前に初登場で、それ以来何度か刷られている本ということになる。そういう状態だが、本書が提起する問題は「10年位も前の話し」というように看過することが出来ない、または看過しては「ならない」ようなことかもしれない。逆に言えば、10年位前に本書で提起されたような問題に関して、何らかの対応が為されたという話しが聞こえる、その以前に検討が重ねられることが在ったのか否かさえ不明確だと思う。著者が御自身で色々と考えて活動した例が本書に在るのだが、その話しを本書を通じて初めて知ったというような状況である。

本書で論じられているのは、何処の街でも電線等の埋設が進まない状況で、必要以上に看板や自販機が溢れ、周囲の景観を度外視した駐車場の配置や、奇抜な建造物が辺りの雰囲気をオカシイ感じにしてしまうようなことが何十年も罷り通り、なかなか改善されないということである。

電線等の埋設ということに関しては、各地に見受けられる「伝統的建造物群保存地区」等で見受けられる程度であろう。「古都」と呼ばれるような場所でも、必ずしも進んでいないようだ。ロンドン、パリ、香港、シンガポールというような世界の方々の都市で100%実施されているという電線等の埋設、「無電柱化」だが、日本国内では例えば東京23区で8%、大阪市内で6%という様子らしい。方々で計画は出ているようだが、速やかに進んでいるようにも見えない。

こういう問題に力を入れる、或いは妙な看板を外す、奇抜な建造物を増やさずに機会が在るなら壊す、古くからの建物等は可能な限り壊さずに「リノベーション」するというようなことで、そうやって「街の心豊かに、安らかに過ごせそうな景観を護る」ことに意を向けて然るべきだというのが本書の主張だ。

日本の人達は、或いは「自己肯定感」が低い、言葉を換えると「矜持に欠ける」ような面が在って、育まれて来た大切なモノを損なうようなことを繰り返し、積み重ねてしまっているというのが本書の主張に入っているが、これには大きく頷いた。本書のような問題提起に向き合って、問題意識を持つようにするというのは大切なことだ。

繰り返すようになってしまうが、初登場が10年位前という本で提起された「問題」が「縮小」や「前進」したとも思い悪い状態に在ると思う。或いは大規模催事や大規模な街の再開発のようなことが過去10年位で積上げられ、或いはこれからも突き上げられ続けて「問題」が「拡大」や「後退」ということになっているかもしれない。考えさせられる内容だ。本書は「読むべき一冊」だと思う。

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