『「俳優」の肩ごしに』

↓「文庫本が登場」と聞き、「是非!」と思って手にした一冊だ。

「俳優」の肩ごしに (文春文庫 や 30-4)



↑愉しみながら、少し夢中で読み進め、素早く読了に至った。

人には各々の来し方が在る訳だが、それを振り返ったような御話しに耳を傾ける、またはそれを文章として綴ったモノを読むのは概して面白い。本書は著者の話す声が聞こえるような、活き活きとした語り口で綴られた、著者の来し方をその「子ども時代」から「青年時代」、更に現在に至る迄の職業の世界に入ってからの経過を纏めている。著者は俳優の山崎努だ。

山崎努は1936(昭和11)年生まれだ。「子ども時代」は戦時中ということになる。本書はそういう頃の事等から始まり、俳優という仕事に入って、様々な取組をして来た経過、比較的近年の様子に至る迄の「自伝」という内容だ。「俳優」である御自身を、「肩ごし」というような感じの距離で見詰めて、「俳優」の来し方を文章に綴っているという風なのだ。

御本人が綴った本文に加えて、対談や他の方の寄稿も在って、「山崎努」という魅力溢れる「俳優」の姿が浮かび上がるような内容に纏まっている一冊だ。

山崎努が出演した作品で、古いドラマの『新必殺仕置人』というのが強く記憶に残るのだが、本書でも言及が在った。彼が演じた「念仏の鉄」は、着物の下に赤い襦袢を身に着けていて、黒っぽい着物からその赤が覗くという感じで登場していた。これに関して、子どもの頃の記憶が少し関係しているのかもしれないということだった。

独特な、考え抜いたような役作りの経過や、知られている作品への取組等、色々と読ませる内容だ。「俳優」として、「山崎努」という個人としての来し方が、この一冊に巧く纏まっていたと思う。

非常に愉しいので広く御薦めしたい。

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