↓このシリーズについては、シリーズの新作が登場する都度に正しく「遠方の、暫く会っていない友人・知人の近況に触れる」というような、嬉しい気分になる。今般、最近登場した新作に出くわして愉しく読んだ。
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↑4つの篇で1冊という基本的な形は踏襲されている。本作では、秋、冬、春、夏と移ろう季節の中での出来事が描かれているのだが、こういう4つの篇を四季に合わせるという方式もこれまでと同様だ。各篇を1つずつゆっくり愉しもうとするが、頁を繰る手が停め悪くなってしまう。夢中になるのだ。そして1篇ずつ順次進み、あっと言う間に読了してしまう。
このシリーズは初登場から随分と経っている。登場して然程経っていなかった頃に、テレビドラマ化されてなかなかに人気だった。(小説の世界の色々なことが、実写ドラマではかなりアレンジされているのを後から知った。が、テレビドラマで主演した俳優の当時の風貌は、本作の主人公の雰囲気を凄く反映していたと思う。特定の俳優の風貌を思わせるような人物描写は作中には無いが、動き回る主人公の様子が頭の中に思い浮かぶ時、あのテレビドラマの俳優の風貌と重なる場合も在る。)それから随分と年月を経て、アニメ化ということが在った。そのアニメ化を記念して、「傑作選」というのか、アニメ化に際して原案として取上げた篇等を纏めたという文庫本が登場し、それを偶々読んだ。そして凄く気に入って、他の各作品を全部読み、以降は新作登場の都度に読んでいる。シリーズ登場の頃から年月を経て、シリーズの題名に採られている「池袋ウエストゲートパーク」こと、池袋駅西口の公園は様子が変わり続けている。シリーズの作中でその公園の改修工事が進んでいるというような描写が入る場合も在った。アニメ化の頃には現在の様子になっていた。その現在の様子の「池袋ウエストゲートパーク」こと、池袋駅西口の公園について、東京に出た時に眺めに寄ったことも在った。主人公が住んで居るとされているのは、モデルになる何かというモノは見受けられないが「多分、この辺」と推察出来、そこから歩いて公園を眺めたという訳である。
そういうように勝手な思い入れめいたモノも何時の間にか抱いているこのシリーズである。主人公は真島誠という若者だ。池袋駅西口の商店街で、母親が営む小さな果物店を手伝っている。池袋で育って、豊島区内の工業高校を卒業して現在に至っている。果物店の手伝いの他、雑誌にコラムを綴るアルバイトもしていて、こちらも少し好評で長く続けている。他方、街では「トラブルシューター」として少し知られている。困っている人に手を差し伸べたい、相談されると確り聴いて可能な範囲で助言をしたいというような情に厚い人物でもある。独自の人脈や、持ち前の観察力と構想力、話術、機転、胆力を駆使して困っている人達を手助けし、悪辣な者達を懲らしめようとする場合も在る。本作の各篇は、この「マコト」こと真島誠が、経験した出来事を誰かに語る、或いは書き綴って記録して誰かがそれを読むというような雰囲気に纏まっている。「一人称の語り」というスタイルの物語だ。
このシリーズも、最初の方の作品では主人公が明確に「19歳」と称するような場合が在って、次第に明示はしなくなったが、一定程度「年齢を重ねた」というようなことも伺わせるような表現が出ていたと思う。或る時期からそういうのを止めてしまったような気がする。寧ろ、「年齢を重ねた」で到った辺りを度外視しているかのようになっていったように思う。何やら「20歳代後半に差し掛かり、30歳代が見えるかもしれないような年代」という曖昧な感じで、「作品発表時点の、その年代の主人公の若者」という描かれ方になっているうような気がする。最初期の作品で「19歳」と称していたので、「昭和」の終わりの方に産れていると推定出来る。が、後年に「平成産れ」を思わせるような叙述が在る。その辺が、何やら判らないのだが、結局は「時代のテーマに向き合う市井の若者」ということで、その辺を丸めているのだと思っている。そしてそれで構わないと思う。本作は「主人公個人の人生の年月」というようなことではなく、「市井の若者」が「時代」と「社会」を覗く、向き合うという物語で、その物語が作者の「問題提起」でもあるように思う。
今作の4つの篇である。
第1篇は、マコトを訪ねて来た工業高校時代の恩師の相談を受ける。教え子達が、窃盗団に関わってしまったらしい。深みに嵌って行く前に関りを止め、禍根を何とか断ちたいということだった。マコトが奔走する。
第2篇は、マコトの長年の友人でもある「キング」ことタカシから手伝うように声が掛かった事案だ。タカシのグループが付き合いの在る弁護士事務所が受けた相談に纏わることだった。収益化して月々「三桁」という金を得ているというブロガーが在って、脅迫を受けているのだという。フェイクニュースのブログを綴っているという男の自宅が特定されて、脅迫状が直接足を運んだと見受けられる状況で投函されていた。その脅迫者の正体に迫るべく、マコトは動いた。
第3篇は、マコトが女子大生の相談に乗る。女子大生の唯一の親族である姉が、何やら悪質な店に嵌ってしまったのだという。売掛金が80万円にもなっているとして請求されたが、何時の間にかその債権が他の誰かに渡り、請求額が250万円にもなってしまっていた。マコトは女子大生終いを援けようとする。
第4篇が本書の題名にもなっている篇だ。池袋出身のお笑い芸人とマネージャーが、池袋では名が通っている「キング」ことタカシに相談した事案について、マコトが手伝うことになった。「女性嫌い」を「ネタ」にしていた芸人は、それをテーマにしたファンクラブ的なモノを結成していた。飽くまでも笑いの「ネタ」なのだが、ファンクラブ的なモノに集まる人達の中に、本当にオカシイ者が混ざっていた。フェミニスト団体関係者の女性に向かって硫酸を投げつけて大怪我を負わせるという者が現れたが、それを仕出かしたのが件の芸人のファンクラブ的なモノに集まる人達の中に在るという噂が出始めていたのだった。漸く成功への階段を上り始めた芸人は、悪評で機会を喪うということを避けたい。そこでマコトが動くことになった。
というような各篇である。このシリーズ各作品での篇は、以前から発表される時期の巷での問題や話題に絡めた事柄を取上げている。本作でもそれは健在だ。或いは本作の4篇には、何か共通項のようなモノも感じる。「分断」が煽られ、それが先鋭化するような感じや、「普通」な人達が禍々しい何かに巻き込まれて困るような様子が少し目立つような気がするという昨今の傾向を注視しているのではないだろうか。
何れにしても、時代の傾向のようなモノを覗き、その隙間で奔走して困惑する人達を援け、好からぬ連中を懲らしめるような場合も在るというこのシリーズは興味深く、そして愉しい。本作も間違いなく愉しめると思う。広く御薦めしたい。

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