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↑程好い分量で方々の展示施設を核とした話題が展開する。各篇を興味深く読み進めながら、雑誌連載であると感じていたが、実際にそうであった。そしてその連載記事を下敷きに、幾分のコラムを加えているという構成だ。
本書では戦争に纏わる記憶を伝えようとしている各地の展示施設を14箇所取り上げている。「こういう展示施設が在ったのか?!」と少し驚いた内容が多かった。地元である稚内の、樺太の経過を伝える施設も交じっていたが、これらに関しては既知の内容を確認する感ではあったのだが。
14箇所に関しては、「戦争」に関する展示とでも言った場合に「最も有名」というような場所を取上げているということでもなく、「以外に知られていないかもしれない」を敢えて択んでいるようにも見える。
各展示施設が択んでいる展示テーマは多岐に亘っていて興味深い。毒ガス、予科練、回天、松代の“大本営”、対馬丸、戦争マラリア、満蒙開拓団、樺太という辺りが少し変わっているかもしれない。長崎原爆や東京大空襲というようなテーマも在る。更に美術作品を展示している例も取り上げられている。
何れも、色々な形で様々な世代の人達の命が損なわれる戦争の無惨な様を伝えるものである。同時に無惨な様を産出す「時代の狂気」というようなことを考える材料を提供しているとも言えると思う。そして紹介される、展示施設で伝えられている挿話の中には、気持ちに突き刺さる内容も少なくない。
結局、「戦争を知らない」という意味では、昭和20年代に生まれた70代の人達も、凄く若い10代の人達も同じかもしれない。幅広い年代の人達に、「現在を生きる人達が想像することすら困難かもしれない状況」を伝えるべく、多くの展示施設で努力が続けられているということが本書では紹介されている。
例えば、原爆で負傷者が溢れた状況下で「何故、病院へ行かない?」というように尋ねる人が在るのだという。病院のような医療機関も含めて、何もかも破壊され、当然のサービスが当然に受けられなくなり、破壊兵器の威力で負傷したような人達は途方に暮れる他無いような状態に陥ってしまうのが「原爆」というような状況なのだ。
色々な想いで「伝えるべきこと」を伝える努力を続けている本書で紹介されている施設である。これらに関しては、「未だ世界から戦禍が途絶えた訳でもない」という中であるからこそ、多くの人達に顧みられるべきなのだと思う。
本書で内容を知り、具体的な訪問方法等に関して少し調べて、各展示施設を訪ねてみたいと思うようになった。そういう意味でも、本書は好い内容であると思う。広く御薦めしたい。

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