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↑続々と起こる出来事が意外な結び付きを見せ始め、その複雑な結び付きが解き明かされて行くことになる。
本作は警察官が関わる出来事を背景とする物語であるが、“刑事部”という部門の“捜査員”が事件の解決を目指すというような感じでもない。犯罪事件の被害者や加害者には手近な家族等が在り、色々な意味で大変なのだが、そういう大変な人達を支援しようという担当部署が“総務部”に設けられている。それが「総合支援課」である。ここでの仕事に携わる警察官は“捜査員”ではなく“担当”ということになる。
本作はその「総合支援課」で活動する女性警察官の柿谷晶が主要視点人物と設定されている。この柿谷晶は、「総合支援課」シリーズを通じての主要視点人物ということにもなっている。
本作の物語は、「総合支援課」のオフィスで柿谷晶が電話を受けるという辺りから起こる。
電話によってもたらされたのは訃報だった。15年前、「総合支援課」の前身であう「被害者支援課」が起ったような頃、小学校教員であった娘が殺害されてしまったという一件で対応した父親で、長く時候の挨拶も交わされ、年に1回程度は書簡も届いていた人物である。御本人は60歳位で最愛の娘を喪い、75歳で他界ということになった訳だ。
現在の「総合支援課」に勤務している関係者の中、松木優里は15年前にも「被害者支援課」に在り、訃報がもたらされた人物を知って居た。事案の直接の担当者でもあった。「総合支援課」から訃報の件で話しを聴くべく、この松木優里が柿谷晶と共に連絡をして来た女性を訪ねることになった。
訪ねた先で判ったのは、亡くなった方の癌の症状が重くなって行く中、娘の事件で世話になった支援課関係者に御礼、御別れを言いたいとしていたことであったが、他に気になる名前が出た。大岡という男の名である。松木優里と一緒に事案を担当した経過の在る人物である。大岡は捜査1課の刑事出身で、支援課での数年の活動の後に捜査1課へ戻り、所轄の刑事課に数年間在って退職し、郷里の御殿場で暮らしているらしいということだった。訃報を大岡に伝えようとしたが、巧く伝わらないということでもあった。比較的最近も連絡を取っていて、見舞に現れたということも在ったということで、遺族は訃報を伝えたがっていた。
大岡は63歳になっている筈だった。退職した警察官で60歳代前半という人物だが、健康上の問題等が生じた可能性も排除出来ない。気になった柿谷晶は、取得せずに残ってしまっている休暇を消化する体裁で御殿場へ向かい、大岡に会ってみることにした。
御殿場で柿谷晶は、元気で普通に暮らしている様子の大岡に会うことが叶ったのだが、大岡が「東京は少し御無沙汰」というように言っていることに違和感を覚えた。そして御殿場の大岡の家を再訪するが、そこで出会った大岡の妻は、大岡が居なくなってしまったと言い出した。
大岡の件が気になる他方、「総合支援課」に対応すべく事案が生じた。散歩中の老夫妻の夫が死亡したひき逃げ事件だったが、ひき逃げした車を近くに居た車が追い、両者が事故を起こしてしまい、ひき逃げした車の運転手が重傷で、追った車の運転手も負傷して病院に収容されたということだった。
過去の事案と大岡の件、進行中のひき逃げ事件関係者のことと、柿谷晶が動き回ることになる。
色々な人達の助言を求める等しながら、柿谷晶が動いて意外な事実を明らかにして行くのだが、何か考えさせられる内容を含むと思う。事の発端に訃報がもたらされるのだが、ここには「余りにも惨い状況」に衝撃を受けた人達が在って、その人達と関わっていた関係者が在る。結局「余りにも惨い状況」に衝撃を受けた人達の心境の変化が在り、関わっていた関係者の一部にも心の動きと行動が在る。その物語を介して「人」を考えさせられる。
このシリーズは「被害者支援課」として起こっていて、そこに刑事出身の村野が登場していた。「総合支援課」に改組後も村野はそこに在ると作中に紹介はされていたが、余り登場しなかった。本作では、熱過ぎるような感でもある柿谷晶の傍らで助言し、支える先輩として少し活躍も目立った。
このシリーズは、登場する事案の背後の意外な事情が明らかになっていくというような展開が多く在るのだが、そんな中で「人」を考えるという感じが興味深い。早くも次作が気になってしまう。

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