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↑根が深い問題や、犯罪被害の影響を克服しようとするようなこと等の社会的な要素を深く織り込みながら、人の繋がりが出来上がって行く様子、壊れて行く様子を考えるような内容かも知れない。読後の余韻が非常に深い。
複数の視点人物が在り、適宜それらが入れ替わりながらモノが在りが進む。
夫の執拗な暴力に怯え、傷だらけになっていて、5歳の息子を連れて、思い切ってそこから逃れることにした門脇または宮永裕子。
事件当時17歳の少年で在った人物に妻と1歳の娘を殺害されて以来、7年間もそのことで鬱のようになってしまっていて、苦しみながら少し荒んだ暮らしをする真鍋篤。
用事を足しに出た際の一寸した出来事を通じて、真鍋篤や宮永裕子と知り合い、彼らを雇うこととなる工務店経営の波多野正明。
何か妄執に憑りつかれたかのようになっていて、妻に激しい暴力を振るう、辣腕刑事でもある門脇英雄。
7年前の母子殺害事件で、少年事件としては最も重い無期懲役刑になりながらも仮出獄して来たばかりの川尻乃武夫。
これらの5人が主な視点人物となって、物語は展開する。札幌、函館、旭川、小樽というような北海道内が舞台となり、実在している地名が多々出て来る。
余りにも不幸な出来事に心を砕かれてしまったままであった状況から新しい歩みへ踏み出そうとする、傷だらけであった状態からより自然な状況の中で新たな歩みを始めようとする、そういう人達が偶々出会って“ユニット”となって行く動きが生じる。
こういうのに対して、妄執、思い込みで激情に任せるかのように突き進み、以外が一致しそうだと行動を共にし、それを“ユニット”と称するような動きも在る。
作品そのものは「家庭内暴力」という問題が注目された状況、民家に押し込んだ少年が母子を殺害という事件が実際に起こってしまった様子を踏まえ、2003年頃に初登場したそうだ。更に、本作では敵役的な役割の門脇刑事が色々と職務上で暗躍するような場面も在るのだが、本作の少し後から登場する「北海道警察シリーズ」に繋がる感じでもある。
或いは「浄化する魂」というような動きに対し、「腐敗する魂」というような動きが在って、両者の衝突というような様子が本作のクライマックスなのかもしれない。
宮永裕子と息子、真鍋篤、彼らを雇った波多野正明の「その後」は作中で何となく示唆されている。他方、その様子が登場する小説が在れば是非読みたいという感じだ。
主要人物達がぶつかり合う様を通じながら「人生の中で少し大事にしてみたいこと?」というような、静かな問題提起も在るように感じた。広く御薦めしたい!

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