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↑長く親しんでいるシリーズの新作で、全体としては第11作ということになる。「親しんでいるシリーズの新作」となれば、「少し離れた場所に在る友人や知人の近況に触れる」という感覚で愉しめると思うのだが、本作も正しくそういう感だ。
本作は北海道警察を舞台とするシリーズである。第1作は警察部内での妙な出来事を何とかしようとする様子が描かれ、やがて第1作以来の面々が各々に動き廻る事件モノというようなシリーズ展開となる。
第1作の一件等も在って、主流を外れるような感じになった佐伯警部補は、大通警察署の盗犯係なのだが、関わる事案で手腕を発揮し続けている。少し若い新宮は佐伯の下で活動している。同じ大通署の少年係には女性刑事の小島が在って、佐伯との関係の変遷がシリーズの中で見受けられる。そして佐伯とは古くからの仲間である津久井は、第1作の一件の故に閑職に在ったのだが、長正寺警部の引きで機動捜査班に配置されて活躍している。
本作でもこうした主要人物達は健在である。そして各々の活躍が描かれ、物語が展開する。
佐伯は、老いた父親の介護というような個人的な課題も抱えるようになっている。他方、上司から警部昇任試験の受験を強く勧められていた。昇任した場合の研修で、少し長く家を空けることになるという事情も在り、佐伯は受験を逡巡していた。そういう中で佐伯は事件に関り始める。
佐伯が着手した事件は、設備工事会社が現場で使っていた古い車輌の盗難という騒ぎだった。車輌そのものは高価なモノではない。どうやら車輌ではなく積まれていた工具等が盗まれたようだった。
他方で、街での危険な事案に駆け回る津久井達の動き、女子高生のスマートフォンがひったくられたという事案や、女性を支援する団体への嫌がらせという事案に対応する小島の動きが在る。
そんな時に事件は起こる。馬産地で牧場を営む夫妻の家に強盗が押し込んだ。4人組による犯行だが、犯行時に牧場主の男の頭を強打した者が在り、牧場主は死亡してしまった。結果的に「強盗殺人事件」となってしまった。
「強盗殺人事件」の捜査が始まった他方、札幌市内の千歳線沿線である上野幌駅で不審な車輌が発見された。そして遺体も発見された。不審な車輌は新千歳空港に早朝に現れていたことが確認され、「強盗殺人事件」の犯行グループは札幌方面に入り込んだと推定された。
津久井の所属する機動捜査班はこの「強盗殺人事件」に関連すると見受けられる事案を精力的に追っていた。他方、佐伯達は盗難または紛失の届け出が全く無いスマートフォンが8台も纏まって見付かったという不審な事案を捜査していた。
各自が関わる事案が次第に交錯し、事の真相が明らかになって行く。
本作は佐伯、津久井、小島、更に「強盗殺人事件」に関わってしまった4人組の1人と、次々に視点人物を換えながらスピーディーに展開する。目が離せない…
このシリーズでは、狸小路8丁目に在ると設定されている<ブラックバード>というジャズバーが頻繁に登場している。本作でも登場し、このエピソードの中での重要な出来事が起こる。
このシリーズでは札幌等で作中の出来事が起こっている。極個人的な事情ではあるが、土地勘が在る場所が多く出て来るので、各部の描写が凄く迫る感じだ。勿論、フィクションの小説なので、多少のアレンジは在る訳だが。
ここまでの11作は或る程度の一定間隔で登場したように思う。今作を読了してみると、次作が在るなら少し長く間隔が開くかもしれないという気がしてしまう。或いは、装いを新たにした「道警シリーズ」に模様替えも在るのかもしれない。
何れにしても、夢中になれる作品で、凄く愉しいので御薦めしたい。

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