『コーチ』

↓拙宅から少し離れた辺り書店に寄道し、気に入っている作品を多く出している作者による作品の新しい文庫本と気付いた。入手して紐解き始め、素早く読了に至った。

コーチ (創元推理文庫)



↑不思議と言えば不思議な感じの挿話が折り重ねられる篇が3つ集まった第1部が在り、3篇の主要視点人物達が集まるという第2部に繋がる。「次は?」と気になって、頁を繰る手が停められなくなり、素早く読了に至った。

第1部、第2部、共に警察の捜査員達が活躍するという小説である。となると「コーチ」という、スポーツ関係のような事柄を想い起す題名がやや不思議な感じにはなる。そこが物語の“肝”でもある。警察部内で少し独特な活動を展開する男と、その人物に関わった経過の在る3人が動くという物語なのである。

3篇から成る第1部は3人の主要視点人物が在る。警視庁の各々の所轄署で活動する若手の刑事達だ。

益山瞳は、同期では最速な部類で警部補に昇進し、所轄署で係長となったのだが、色々と課題が在るような感で、何かスッキリとしない。繁華街の所轄署に在る所貴之は、暴力事件の被疑者を取り調べるのだが、何か巧くことが運ばずに悩んだ。住宅街の所轄署に在る西条猛樹は、侵入盗の常習犯を追跡する作戦に参加するのだが、185㎝の長身で目立ち易いというようなことも在って、尾行が巧く出来ない等の悩みが在った。

こうした3人の前に「本部からの応援」という名目で現れたのが向井光太郎だった。40代半ばのベテラン捜査員という風情で、3人の各々の課題に助言を与え、各々が自身や意欲を取り戻す切っ掛けを創り出す。聞けば所属は「人事二課」という、警部補以下の人事を扱うという部署であった。何やら不思議である。

第2部で、益山、所、西条の3人は本部の捜査一課に異動となっていた。警視庁は異動が或る程度頻繁な場所ではある。が、本部の課の係で、班長の益山と班員の所と西条というように、一度に3人が新たに入るというのも少し珍しい。そこで、同時期に本部に移った3人で親睦をという相談になって3人は食事に出た。

その席上、3人は各々に所轄署での記憶に残ること等を話したが、共通の話題が在った。向井光太郎である。なかなかに有能なベテラン捜査員で、若手に適切な助言を与えることも出来る好人物なのだが、「人事二課」という部署に在るのが少し判らず、そういう辺りに関して知りたいという話しになった。

やがて女子大生がアパートの部屋で殺害されてしまうという事件が発生し、益山の班は特捜本部に参画することとなる。向井の件は如何なって行くのか?そして益山達が向き合う事件の行方である。

若干の「変化球」という感じだが、若い捜査員達が意欲的に仕事に取組むという物語で、何か凄く爽やかな読後感という物語である。読後、本作の第2部の一件の後の彼らというのも、何となく気になった…

なかなかに御薦めだ。

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