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↑本当に停まらない、停められないという感じで読み進め、上下2巻の文庫本という量が全く気にならなかった。アッという間に読了に至って余韻に浸る感だ。
スウェーデンの作品の翻訳である。本作はストックホルム警察のエーヴェルト・グレーンス警部が活躍するシリーズの一冊ということになる。シリーズの途中から、凄腕の潜入捜査員であるピート・ホフマンが登場している。作品はグレーンス警部が主要視点人物になる部分、ホフマンが主要視点人物になる部分、その他の作中人物達が主要視点人物になる部分が織り交じって展開する。本作もその形が踏襲されており、ホフマンの部分とグレーンス警部の部分とが織り交じるようになって行く。
グレーンス警部という人物は、ストックホルム警察の現役捜査員では最年長というような年代で、一緒に居て愉しいというタイプでもない偏屈な男であり、事故で植物状態になった妻が長く施設に在って、その妻が亡くなってという複雑な個人の事情も在るのだが、執念深く捜査に取組む非常に老練で辣腕の刑事である。少し不思議な人物という感じがしないでもない。現場に出る、私用で出るという以外は、自宅アパートか警察本部の自室に居ると言われているような変わり者なのだが、勘と“押し”で事件関係者に迫って、事件を解決に導く手腕はなかなかに見応えが在り、シリーズで描かれる「社会の闇」にも関わる、見た目以上に重大な真相に肉薄するのである。
本作の上巻ではこのグレーンス警部の出番は少し少ない。
物語はコロンビアの様子から起こる。ストリートに生きる少年の様子が描かれる序章の後に本編が始まる。エル・メスティーゾと呼ばれる、コカインを方々に売るようなことをしているゲリラ組織の幹部の傍に、ボディーガードでもある側近の欧州人の姿が在る。「スウェーデン人」という意味のエル・スエコという通り名で知られ、北欧の何処かの国の出身らしいが詳しい素性は判らない。このエル・スエコという人物の正体がピート・ホフマンだ。
スウェーデンを出国したホフマンは、ストックホルム警察の犯罪捜査部長であるエリック・ウィルソン警視正が国際研修で知り合った米国DEA(麻薬取締局)のスー・マスターソン長官の仕事を請けることになった。コロンビアの麻薬組織の情報を潜入捜査員として伝え、大規模な麻薬取引を阻み、コカインを精製するプラントを攻撃する手引きをしているのである。
そういう他方、米国ではティモシー・クラウズ下院議長が、麻薬撲滅作戦を推し進めていた。クラウズ下院議長は麻薬に溺れてしまった娘を喪った経過が在る。他界した時に娘は24歳で、そういう悲劇の根を絶つべく、クラウズ下院議長は麻薬対策に努力し、コロンビアに展開した対策部隊の現場視察にも積極に出掛ける程に入れ込んでいた。
そんな或る日、「問題」は生じた。現地視察をしていたクラウズ下院議長が誘拐されてしまい、生死不明になってしまった。米国政府は、トランプの13枚のカードに見立て、コカインを方々に売るようなことをしているゲリラ組織の幹部の名を挙げ、順次彼らを抹殺すると宣言した。その13枚のカードに見立てたリストに「エル・スエコ」が入っていた。
米国のスー・マスターソン長官から報せを受けたエリック・ウィルソン警視正は驚き、何とかしたいと思う。そんな事案に取組もうとしていた時、酔っ払いとの揉め事が拗れて拘置所に入れられてしまったグレーンス警部を、上司として貰い受けるようにという妙な話しが生じる。グレーンス警部を貰い受けたウィルソン警視正は、グレーンス警部に頼むことにした。「エル・スエコ」ことホフマンの支援をである。
下巻は目が離せない展開が続く。
グレーンス警部はコロンビア現地や米国を密かに訪ね、独特な“押し”で関係者と色々と話し合いながら、ウィルソン警視正が何とかしようとしているホフマンの事案に取組む。
グレーンス警部はホフマンを間接的に知っていた。スウェーデンでの荒稼ぎを目論むポーランドのマフィアへの対策に係る潜入捜査作戦でホフマンが活動していて、刑務所内で事件が発生してしまった時、グレーンス警部は警官隊の指揮を命じられて現場に入ったのだった。ホフマンを射殺せよという話しになったのだが、射殺は果たせなかった。やがて、ホフマンが脱出したらしいということはグレーンス警部も把握はしていた。
そういう縁が在るホフマンを、グレーンス警部は何とか支援しようとする。ホフマンの側は、「処刑リスト」から逃れるべく、独自にクラウズ下院議長の一件に尽力しながら、何とかグレーンス警部と共に脱出を図ろうとした。グレーンス警部は、スウェーデンでホフマンが積み残している問題の軟着陸を思案する。
こういうようなことでダイナミックに展開する物語で夢中になってしまった。これまでのシリーズ作品とは、少し色合いが異なるかもしれない。が、凄く面白い!!


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