『聖刻』

↓少し読んでみたくなって、取り寄せてみた一冊だった…

聖刻



↑休日の早朝に紐解き始め、夜遅くまでの間に時間を設けて随時読み進め、素早く読了に至った。というより、これは紐解き始めると、ページを繰る手が停め悪くなり、そして「続き」が気になって仕方ないという感じになる。

つい最近、『誤ちの絆 警視庁総合支援課』という作品を読了した。犯罪事件や事故に携わった人の周辺に在る人達全般、被害者、加害者を問わずに何らかの支援対応を行うべきであるとして“総合支援課”が登場し、配属された捜査一課に居た女性刑事の柿谷晶が奮戦するという物語であった。本作、『聖刻』は『誤ちの絆 警視庁総合支援課』の「前日譚」というような内容となっている。“総合支援課”が登場する前、構想段階、準備段階である時期という設定だ。柿谷晶刑事は捜査一課の捜査員である。

物語は、練馬の警察署に設けられた事件の特捜本部に在る柿谷晶が、飛び込んで来た報せに驚くというような場面から起こる。

練馬の警察署に特捜本部が設けられた事件とは、管轄内で若い女性が殺害されたと見受けられる事件であった。捜査一課の捜査員も特捜本部に入ることとなり、柿谷晶の所属する班が本部に入ることとなった。その本部に飛び込んだ報せとは、「女性を殺害した」という若い男が六本木の警察署に出頭したのだということであった。偶々他の捜査員が居なかったというようなことも在り、柿谷は同僚の井端を伴い、六本木へ出て出頭して来たという男に在って事情を訊くこととなった。出頭して来た男は、女性と口論になって押し倒した時に死亡してしまったという犯行そのものに関しては供述をした。女性は過去に交際した経過も在るのだという。が、その殺害に至ってしまった動機等に関して、男は言葉を濁し続けた。そしてその男は、高名なテレビ司会者の長男で、俳優活動をしていた経過も在ったという人物であった。

捜査の焦点は犯行動機の解明というような事柄となって行く。柿谷は被疑者の周辺を調べるということで、高名なテレビ司会者である父親、その妻である母親、更にモデル活動をしているという大学生の妹という家族に接触して行くこととなる。

出頭した男の犯してしまった罪を受けて、家族は非難や悪意に晒されてしまうようになる。父親は出演番組を直ぐに降板し、司会者の活動から退くとした。妹は、高名な父親との関係を明らかにせずにモデル活動をしていたのだが、その関係が暴露されたことも在って、結果的に活動を休むこととなった。結果的に“加害者家族”となってしまった人達に柿谷は向き合いながら、捜査を続けることとなる。そしてこの一家を巡って、幾つかの事件が発生する。柿谷はそれに取組む。

そういうようなことで展開する物語で「如何なる!?」と本当に夢中になる。

本作の一件の後に展開するということとなる“総合支援課”だが、それは“犯罪被害者支援課”のシリーズの「シーズン2」のような感じにもなっている。そういうことで、“総合支援課”の「前日譚」という感の本作には、“犯罪被害者支援課”のシリーズの主要人物が一部登場する。“犯罪被害者支援課”の主要視点人物である村野、行動を共にする場合も多く在る少し若い女性の安藤梓、被害者支援業務のベテランである女性職員の松木という人達が、本作の作中で各々に役目を果たしている。

ヒロインの柿谷が向き合う一家は、「加害者家族」として非難や悪意を向けられてしまう一面が在ったが、その故に妙な事態に巻き込まれて「被害者家族」という性質も併せ持つこととなってしまう。こういうような、在り得る、または有り勝ちな事態の複雑化を踏まえて、“総合支援課”が構想されて行ったような感である。実に安直に悪意が拡散するような一面も在る様相…そういう中で懸命に闘おうとするヒロイン…これは酷く魅力的だった。

題名の聖刻(せいこく)という語である。この聖刻とは 古代エジプトの文字「ヒエログリフ」(象形文字)を指すということであるらしいが、何か「読み悪い記録」というような含意で題名に用いられているのかもしれないと思った。真意が読み取り悪い情報が、訳が判らない程度に溢れている中での出来事というようなことか?後からそういうことを考えたが、本作を読み進めている中では然程気にしなかった。自身で面倒な過去を抱えながら、刑事の仕事に邁進し、女性が些か不利な場合も在る警察という業界で少し突っ張って頑張るという感じ、巷で色々と言われる御洒落に無頓着なようでいて、独自なライフスタイルを大事にしているというような、傍目に「カッコイイ!」という感じの柿谷晶というヒロイン…強く引き込まれる。

なかなかに愉しかった!!広く御薦めしたい!!

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