『池袋ウエストゲートパーク ザ レジェンド』

知名度が低い、もっと単純に言い換えると「誰も知らない」というようなモノでも、偶々知った自身が「素晴らしい!」とでも思えば、モノは素晴らしいのだ。逆に方々で持て囃されていて、色々な人達が話題にしているようなモノでも、自身が偶々出会う機会を逸していたとか、強い興味が沸かない間に時間が流れたということであれば、それは「自分は知らない…」という以上でも以下でもなく、モノに関して言及する術も無い。

小説やテレビドラマや映画や、そういうようなモノは、偶々知った自身が「素晴らしい!」とでも思ったモノが「佳作」であり、他は「知らん…」という以上でも以下でもない。評価するのは自身だけだ。

そんな、自身の中では「自明の理」のようになっていることを想い出して文字に綴っているというのは、相当な長い期間に亘って“人気シリーズ”と言われる作品に関して、読んでみる切っ掛けを逸していて、単純に「知らん…」であったのだが、今般は偶々そのシリーズの作品を読む機会が在ったのだ。

↓或いはシリーズ作品となかなかに好い形で出会えたかもしれない。

池袋ウエストゲートパーク ザ レジェンド (文春文庫 い 47-36)



↑自身の中では「知らん…」という範疇に入っているシリーズの小説だが、何時の間にか「かなり以前?」という感ながら、作品を原案にしたテレビドラマは視た記憶が在る。最近、このシリーズを原案としたアニメ作品が制作されて放映・配信されるということが話題になっているらしい。それを受けて、長く綴られているシリーズの、人気が高いモノを集めた“傑作選”というようなことで本書が登場している。

『池袋ウエストゲートパーク』というシリーズだが、これは一冊の本に何篇かが収まる、短篇、中篇という体裁で殆どの作品が綴られている。今般手にした『 ザ レジェンド』は、作品が人気シリーズへと羽ばたき始めたような頃から、比較的近年の作品までを網羅した中から8篇を選んで1冊にしている。何となく紐解き始めたのだが、各篇に夢中になり、ドンドン読み進んで、気付くと600ページを超える厚い感じの文庫本を素早く読了してしまっていた。

“ウエストゲートパーク”というのは「西口公園」というのを英語に直訳した表現であろう。本作の主人公達が、近所の公園の通称として用いている。モデルになった「西口公園」は実在しているという…(残念ながら、自身では立寄った経過は無い…)

主人公のマコトこと真島誠は、彼が“ウエストゲートパーク”と呼ぶ池袋の「西口公園」の直ぐ傍、「西一番街」という辺りに住んでいる。母親が営む小さな果物店の手伝いをしている若者で、ストリートファッションの雑誌にコラムを連載する仕事もしている。その他方、旺盛な好奇心の故か、実は人が好いからなのか、または正義感が強いからなのか、色々な人達の事件に巻き込まれてしまう。或いは持ち込まれる相談事や、困っているという事の解決に奔走するということもしている。結果として「街のトラブルシュータ―」という具合に密かに知られている。

本作は、基本的にはこのマコトによる一人称の語りで綴られている。冒頭部は、或る出来事等から少し経って、総括的に、またはそれを或る種の挿話のように纏めた述懐のような具合で、やがて池袋の街角での、彼が関わった出来事に入って行く。そして出来事が展開し、一件落着に至り、その後のことに触れられて一篇が纏まるという感じだ。

シリーズは1998年頃に初登場したそうだが、現在も続いている。そういうことで、最近20年間程度の様々な事象が物語の題材に採り入れられている。本書のように、各年代の作品による傑作選を読み進めると「平成の社会史」というような感も受けないではない。勿論、年代に余り関係ないような内容の物語も在るが、それにしても「近年の問題意識だな…」という要素は多く入っている。

初登場から20年も経ってしまっているので、本当に永い期間、自身としては「知らん…」ということであったシリーズだったが、本書に偶々出くわした結果「惜しいことをしていた…」というように感じている。今後は少し、このシリーズにも目を向けたい…

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