『マトリ 厚労省麻薬取締官』

↓少し話題になっているらしい一冊と見受けられる。気になって入手し、読んでみた。

マトリ 厚労省麻薬取締官 (新潮新書)



↑「困難な現場で真摯に働き続けた人」だけが発することが出来るような言葉で綴られた一冊で、強く引き込まれるものが在り、大変に興味深く読了に至った。

「薬物禍」という言葉が耳目に触れる場面が時々在る。主に、何かの分野で著名な方が違法な薬物を所持、使用というようなことで逮捕されてしまうというような報道の場面であるが…そういう報に触れる都度、誰でも出来るというのでもないことを成して一定の名声も得た人が「何故?!」というように、誰でも出来そうなことさえうまく出来ない場合も多々在るような自身は思ってしまう。そして、違法薬物の所持、使用で逮捕というのは“著名人”であったが故に報じられているのであろうが、それは恐らくは「氷山の一角」であろうとも思う。こういうような問題は「どういうことになっている??」と時々考える。

本書は“マトリ”という通称で一部に知られる「厚労省麻薬取締官」の仕事を40年間近くに亘って務めていたという筆者が、「違法薬物を巡る問題がどういうことになっている?」ということが判るように、「日本の薬物犯罪の変遷」、「薬物犯罪に対峙する取締部署の仕事の経過」というようなことで、或る種の“歴史”として読むことが出来るように纏めたものである。最終盤の辺りは「危険なモノから人々を護る」という仕事に携わる後輩達への応援、そしてそういう仕事に全力で取り組む人達が在ることを少し広く知って欲しいという呼び掛けの意味も籠っていたように感じた。

筆者は1980年代初めに「駆け出しの取締官」として大阪での任務を振り出しに活動を続け、2010年代に東京で「取締部長」を務めて退官しているようだが、1980年代初めから2010年代の約40年間では世の中が色々と変わり、“犯罪”と“犯罪への対峙”の方法等も変わっている。そういう現場の様子も、律義に「今後の現場に差し支えが無いように」と断りながら、現場を視ている人だけが判るようなリアルな感じで語っているのが本書の魅力でもある。電話連絡用に“10円玉”を何枚もポケットに入れて街を走り回ったという1980年代から始まって、ネットを利用する密売への対峙と時代は移ろう。様々な組織が国際的な連携までして非常に大掛かりな違法薬物密輸を手掛けている事例や、追跡し悪いようにドンドン巧妙化する密売の集団、“脱法”という地点から起こった危険ドラッグの密造等、色々な事例が上っている。

実に興味深い一冊だ…

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