『衝天の剣 島津義弘伝(上)』+『回天の剣 島津義弘伝(下)』

以前、当時は稚内に在った、全国各地へ転勤という展開も在る仕事に携わっていた方が「鹿児島県に所縁が深い」ということで、自身も鹿児島を何度か訪ねていて愉しかったということが在り、話していた時に何となく関連の話題に及んだということが在った。

鹿児島で「昔の殿様」とでも言えば、英邁なことでは同時代の諸侯から抜きん出ていたと評される幕末期の島津斉彬か、戦国末期の「猛将!!」と畏怖されたという島津義弘が「圧倒的!」に有名なのだということだった。換言すれば、「とりあえず2人」が「昔の殿様」とでも言った時に名前が出るということかもしれない。

その「名前が出る2人」の一方である島津斉彬所縁の史跡に<尚古集成館>という博物館が在って、それは島津家の別荘であった経過が在る<仙巌園>という場所に在る。

↓2011年12月、「初上陸」の鹿児島で訪ねた<仙巌園>で出会った…
Sengannen, Kagoshima-HDR on DEC 20, 2011
↑島津義弘が着用したという甲冑を模して造ったモノが、<仙巌園>の入口辺りに飾られていた…

江戸時代の幕藩体制下で薩摩・大隅(加えて日向の一部)を知行した島津家だが、所謂“藩主”としての初代ということになる人物の実父が、「名前が出る2人」の他方である島津義弘なのである。

島津義弘は、戦国時代の終わり頃に活躍した四兄弟の次男だ。長兄は島津家の当主だった島津義久、次兄が島津義弘で、その直ぐ下の弟が島津歳久、末弟が島津家久である。

実は以前に、この四兄弟の末弟である島津家久を軸に展開する物語を非常に愉しく読了した経過が在った…

>>『破天の剣』

『破天の剣』は、薩摩や大隅での勢力争いを制し、日向の伊東氏との抗争を制した島津家が、大友家や龍造寺家と争い、それを制して「九州制覇」を目前としながら、豊臣秀吉の軍門に下るまでの物語だった。この経過の中、大友家や龍造寺家との戦いで劣勢と見受けられた状況を跳ね返す戦いの指揮を執ったのが島津家久だった。そしてこの島津家久は、島津家が豊臣秀吉の軍門に下った頃に急逝してしまった。

そうした『破天の剣』で描かれた時期の「後の時代?!」ということなのだが…それを描いた同じ作者の作品が在ったのだ!

「前置き」が非常に長くなってしまったが、以下に御紹介したい…上下2巻から成る作品だ。

↓こちらが上巻で『衝天の剣』という題である…

衝天の剣 島津義弘伝(上) (時代小説文庫)




↓こちらが下巻で『回天の剣』という題である…

回天の剣 島津義弘伝(下) (時代小説文庫)



↑上下巻を通じて、かなり夢中になって読み進め、頁を繰る手が停まらなくなってしまい、素早く読了に至り…「大変愉しかった!」と深い満足感の中に在る…『破天の剣』が非常に面白かったので大いに期待したが…「期待以上!!」のものだった。

物語は『破天の剣』の末尾の辺り、島津家が豊臣秀吉の軍門に下った少し後の時期から起こっている…島津家、その領国である薩摩・大隅という地域も豊臣政権の体制下に組み込まれようとしている最中であったが、島津家は先祖伝来の薩摩・大隅に在り続けようと必死であるという情勢だ…

そういう状況下、かの「朝鮮出兵」が在り、「庄内の乱」という内訌が在り、「関ケ原の合戦」が在り、合戦後の生き残りを賭けた駆引きが在り、そして琉球侵攻というようなことも在って、江戸幕府の下の幕藩体制という中で島津家が残って行くこととなる。その一連の経過が、主に島津義弘の目線で描かれている。

島津家の四兄弟としては、結局は長兄の義久―本作では「龍伯」という号を名乗るようになっている…―と義弘―途中から「惟新」という号を名乗るようになる…―とが長く生き、色々なことに巻き込まれて、色々なことに心を砕くようになって行く。

弟達や一門の若く有望だった者達が斃れる中、島津義弘は「島津の武威」を体現するようなカリスマ的な指揮官として、苦しい戦いに身を投じて必死に戦い続ける。他方、兄の龍伯(義久)は弟達や一門の若く有望だった者達が斃れ、領国で色々な犠牲を強いられるようになった状況下、深い想いを胸に謀を巡らせる。

この種の物語は、或る程度知られている史上の様々な出来事に一定程度依拠して創られる訳で、「何がどうなって行く」という大まかな流れは「判っている」ということになるにも拘らず、その大まかな流れの隙間を埋める作者の想像の翼が大きく羽ばたき、それが非常に面白いのだ。

結局、本作は『破天の剣』を起こりとする「一連の物語」となっていると思う。「互いを敬愛し、互いを恃みにする四兄弟」が激動の戦国時代末期を潜り抜ける物語…というところであろう。敢えて加えると、本作では脇役ということになる同時代の色々な人達も作中人物として登場するが、それらも各々に味わいが在る…

戦国時代を背景にした物語が好き、その種のモノに一寸興味が在るという方が在れば、本作は「かなり御薦め」である。

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