『特捜部Q-自撮りする女たち』

「コペンハーゲン警察のカール・マーク警部補」と出会ったのは何時だったか?「人気シリーズ」として現在まで続く“特捜部Q”の第1作に出くわしたのは2012年のことであった…“ユッシ・エーズラ・オールスン”という作者名を見て「何処の国の名前?」と思えば、デンマークの作家であった。

第1作が興味深かったことから、シリーズの新しい作品を眼に留めると、概ねその都度に入手して楽しむようになった小説だ。こういうシリーズに関しては、「馴染み」になった作中人物達に関して「遠方の友人、知人の近況に触れる」という感覚で読むことになる場合も在る…自身の中では、「コペンハーゲン警察のカール・マーク警部補」も既に「遠方の知人、友人」の1人に数えて差し支えない感だ…

↓その「コペンハーゲン警察のカール・マーク警部補」が還って来た!!

特捜部Q―自撮りする女たち─ 上 (ハヤカワ・ミステリ文庫)




特捜部Q―自撮りする女たち─ 下 (ハヤカワ・ミステリ文庫)



↑“異色”という感である、部内的には“左遷部署”的な感でもあるカール・マーク警部補率いる特捜部の面々が、複雑に絡み合う過去の、そして進行形の事件の謎を解き明かす物語だ。

“特捜部Q”とは、警察本部の“殺人捜査課”に附属する体裁でありながら、独立的に捜査活動を展開する「未解決事件担当班」である。踏み込んだ現場でのアクシデントで休んでしまったカール・マーク警部補が職場復帰した際に設立され、その責任者ということになった。当初はシリア移民の不思議な男であるアサドが1人だけのスタッフであったが、やがて非常に優秀でありながら奇妙な言行も見受けられて配属される場所毎に持て余されてしまっていたらしい女性のローセや、未だ若い男性のゴードンが配置されるようになって行く。

“特捜部Q”は精力的に活動を続けて年月を重ねていたのだが、色々な手違いで「殆ど成果を挙げていない」という烙印を押され、俄かに解散の危機に瀕してしまう。そういう問題をどうにかしようとしていれば、ローセが仕事に取り組むことが困難な状態に陥ってしまった。ローセは少女時代の父親との関係で抱えてしまった心の闇、そしてその父親の事故死を巡る一件で深い心的な傷を負っているのである。

そうした問題の他方で、“特捜部Q”は12年前に女性教師が鈍器で後頭部を殴られて殺害され、未解決となってしまっている事件に取り組んでいた。そんな最中、似たような手口で老女が殺害され「或いは繋がり?」ということになった。

その殺害された老女の家庭には、色々と事情も在った。老女の孫であるデニス・ツィマーマンは、失業状態のまま生活保護を受け続けているというような状況に在った。このデニスのような若い女性は多く見受けられる。生活保護等の件で対応する福祉事務所の担当者は、そういう「生活保護を食い物に」というような女性達への憎しみを募らせていた。

というようなことで、12年前の未解決の殺人、共通項が在ると見受けられた現在の殺人、ローセの問題、デニス・ツィマーマンに関連して次々と発生する事件ということになり、カール・マーク警部補、アサド、ゴードンという面々は酷く忙しい状態を強いられながら奮戦することになる。カール・マーク警部補、事件関係者と次々と視点人物が入れ替わりながら物語が積み重ねられ、やがて出来事の相関が明らかになり、種々の事件が解決に向かって行く。こういう辺りが「らしい!」という感の“特捜部Q”のシリーズだ…

今作は、“心の闇”に起因する心身の問題で苦しむローセが「危険な状況」に巻き込まれ、カール・マーク警部補、アサド、ゴードンがそれを救おうという想いを胸に、必死な活動を展開する様子が非常に好い…そして「そういう風になって行ってしまう?!」という按配に展開してしまう、進行中の種々の事件の顛末が面白い…

本作は或る程度長く続くシリーズであるが、別段に続けて読んでいなくても、各作品を「独立の1作」という具合に十分に愉しむことが叶うと思う。このシリーズでは、作品の舞台となっているデンマークで「そう言えばあのような件…“問題”だ…」と少し意識されていると見受けられるような事柄が、作中で発生する事態の背景のように採り入れられている例も在り、そういうのも興味深い。

上巻を紐解き始め、直ぐに残り頁が少なめになり、下巻に入れば展開のテンポが上がるので頁を繰る手も停まらなくなる。そんな感じだ…広く御薦めしたい!!

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