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↑敵対する陣営に在る者同士として出会う道誉と正成は、やがて手を携え、そして袂を分かって行くが…その両者を軸に描かれる『太平記』の世界が非常に面白い!少し夢中になった…
鎌倉幕府の時代の末期、建武新政、そして室町幕府が起こる南北朝時代の始まりというような時期は戦乱が相次いだ。そういう時代の群像を代表するような人物として、本作では佐々木道誉と楠木正成とを取上げて主要視点人物に据えている。
道誉は幕府方から観て“反乱軍”ということになる天皇方を討つ軍勢に身を置いている。そこから物語が起こる。
その“反乱軍”の指揮を執っている陣営に楠木正成の姿が在った。そしてその巧みな用兵で、幕府方は撤退を余儀なくされてしまう…
そういうように一進一退での戦いが続く中、当初は幕府方であった勢力が次第に天皇方に鞍替えして行く。そして時代が動くが…もたらされた“新政”が混乱をもたらし、また天皇方と反天皇方の争いが頻発するようになるのだ。
作中の佐々木道誉や楠木正成は、知行地や縁者の知行地等を結ぶ流通経路や商業に大きな影響力を持って、徴税権を行使して財力を蓄え、それを背景に味方への物資補給を行いながら軍勢を動かす勢力として描かれる。土地の産物を動かす、それに徴税する権利を有するに留まらず、流通商業に影響力を行使する勢力が伸びるという構図が、鎌倉時代末期には既に勃興していたとする訳である。
作中の「戦い」の描写が面白い。合戦そのものは、新旧様々な戦術が出て来て興味深いのだが、佐々木道誉の陣営も楠木正成の陣営も諜報活動を担う“忍者”に相当する配下を擁している。更に、足利陣営に在って本作では謀略を担っている足利直義は、筆跡を巧みに真似て文書を偽造する者まで擁している…
臣下や様々な層の関係者に慕われる人格者で、大塔宮護良親王に心酔して義を貫こうとする楠木正成…剛勇を誇る名門出身の武人でありながら、用兵の駆け引きに巧みで、大胆な謀略を駆使してでも、自由に流通・商業を起こして安寧な領国経営をしながら全国に影響力を行使しようとする野心家の佐々木道誉…作中の2人の中心的視点人物は何れも魅力的だ!
更に、作中の“新政”の時代だが…主流に立った者ばかりが色々な意味で有利になり、様々な利害が余り顧みられず、何やら混乱が深まる様…何処となく「現代」を想起させた…
非常に劇的で興味深い作中世界で、魅力的な中心的視点人物達、周囲の色々な人達が動く訳だが、大変に愉しく読了した!!“時代モノ”の背景になる時代として、この時代のモノは相対的に少ないかもしれないが、かなり興味深い。御薦め!!

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