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↑終盤は「時間との闘い?!」というような息詰まる展開になるので、本当に「どうする?どうなる?!」となってしまった程だ…
「“刑事マルティン・ベック”のような警察モノのシリーズは如何か?」という具合に出版社から作者に提案が在り、折から世間を揺るがせていた北海道警察の“裏金”やら“違法捜査”という状況も在り、作者が着手したという経過が在ったとい<北海道警察シリーズ>の新作である…『笑う警官』、『警察庁から来た男』、『警官の紋章』、『巡査の休日』、『密売人』、『人質』、『憂いなき街』と意外に長く続いているシリーズということになる。各シリーズに登場する御馴染みな面々は、この『真夏の雷管』でも健在である。
本作の冒頭…少し寂しそうな様子の少年が登場する。辿り着く先の街を訪ねたいというのでもなく、美しい車輛で運行されている特急列車に何時か乗車してみたいと、札幌駅へ向かって列車が駆け抜けて行った様を眺めていた。そこに現れた或る男と知り合い、連れ立って出掛けるということになった…
そんな様子が描かれた後、夏の或る日、学校の夏休みも始まった真夏の日の様子から物語が起こる…
“大通署”の少年係に在る女性刑事の小島は、“閉店セール”を開催中であった狸小路の趣味のモノを色々と扱っている老舗から、高校生と見受けられる万引き常習者が在って悩んでいるという相談を受けていた。それと見受けられる者が現れたら一報をという話しになり、その一報を受けて店の辺りに出向いた。そうしたところ、問題の常習者は姿を消してしまったが、小学校高学年位の少年が万引きに及び、それを取り押さえることになった。少年が万引きしたのは、如何にも少年が欲しがると思われるようなモノとも言い難い工具セットだった。少年を署に連れ帰り、話しを聞こうとするのだが、少年は所持品を置いたままに、御手洗を使うとした間隙に逃げ出し、姿を晦ましてしまった…
他方、盗犯係の佐伯は、管轄内の園芸用品店へ出向いた。侵入の形跡が認められたということだったが、よくよく探すと「硝安」と呼び習わされる肥料の「硝酸アンモニウム」が盗まれているらしいと判った。佐伯はモノの名を聞いて危惧を抱いた。爆薬を製造することも出来る化学品で、取り扱いに慎重を期すことになっているモノなのである。盗まれてしまったと見受けられる量は30㎏前後と見受けられる。相当に大きな爆弾が造られてしまわないとも限らない。佐伯は部下の新宮と共に捜査を開始した。
というように、御馴染みの面々が扱う「一寸した事案」というのが在って、幾つかの出来事がパズルのピースというようになって、それらが次第に組み合わさって少し大きな画になって行く…このシリーズらしい展開となる…
万引きに及んだ、少し不審な様子の少年…個人経営の園芸用品の店で起きた肥料の盗難…そんな事案が「とんでもない?!」ことに結び付いてしまう…近年の北海道の、JRの色々な事柄や、「子どもの親になり切れない?」というような保護者という問題と、“社会派”な要素も加わる…
札幌が舞台の物語で、個人的には“土地勘”が在り、作中に出て来る場所に関して「これは…明らかにあそこがモデル…」と判るモノも幾分在った。更に…終盤に出て来る札幌周辺の列車の様子も、非常によく判る感じだ…そういうことも手伝って、少し強く入り込んで、夢中になって読んだという一面も在った…
非常に愉しい一冊!!
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