『ピラミッド』

↓慣れ親しんだシリーズの文庫本が久々に登場していた!スウェーデンの小説の翻訳…クルト・ヴァランダー刑事が活躍する作品である…

ピラミッド (創元推理文庫) [ ヘニング・マンケル ]



↑本書は5篇の作品で構成されている。ドンドン読み進めて、素早く愉しく読了した。

クルト・ヴァランダー刑事…1990年代のシリーズで活躍しているのだが、スウェーデン南部のイースタという街の警察署で活動している。1990年代のシリーズでは40代のベテラン捜査官で、作中に色々と個人的なことも描写されていて、やや「冴えないおっちゃん」という風も在るのだが、捜査現場の纏め役的なポジションで、複雑化している社会を反映したような難事件に挑んでいる…

このシリーズの人気が高まって行く中で、「1990年代のシリーズで描かれる時期の以前のクルト・ヴァランダー刑事??」というファンの声も在って、作者のへニング・マンケルはそういう作品を綴った。雑誌に発表されたモノも含めて、そんな「1990年代のシリーズで描かれる時期の以前のクルト・ヴァランダー刑事」が5篇在り、それが集まった1冊が本書である。

1960年代末にクルト・ヴァランダーは警察に奉職していて、そういう時期という設定の作品が在り…1970年代に若手刑事として活躍し始めている時期という設定の作品…それ以降の時期の作品が本書には収められている。

クルト・ヴァランダー刑事のシリーズには、元妻のモナ、娘のリンダ、(何故かファーストネームが設定されていない)画家である「親父」(=父親)という身近な人達も登場する。「シリーズ以前」という本書の各篇にも彼らが登場している。

モナに関しては、交際中、結婚後、別居、離婚へという「関係の変遷」が各篇を読めば判るようになっている。リンダに関しては、後に警察官になってクルト・ヴァランダーの居る署で活動するという作品も在るのだが、本書の一部でも登場する。父親に関しては、互いに反発しているかのような風でありながらも、何やら強い絆のようなものが在るようで、他方で父親は傍目に変わり者に視える面も在る人物だが、それは本書の各篇でもシリーズでも変わらない…5つ目の篇ということになる、書名にもなっている中篇『ピラミッド』では、“親父”が忙しい最中に一寸した厄介事を起こして、クルト・ヴァランダーが気を揉んで急遽奔走するという出来事も在る…

事件が発生し、色々と迷いながら、各々の切っ掛けで突破口が開かれ、解決して独特な余韻…というクルト・ヴァランダー刑事のシリーズの面白さ、魅力が高密度で詰まった一冊で、主人公との「再会」を存分に愉しんだ…

大変に残念だが、作者のヘニング・マンケルは2015年に他界している…故に新しい作品は出ないが、翻訳で紹介されていない作品は多々在るようなので、今後も登場することであろう。それを楽しみにしたい…

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