“短篇”という仕立ての小説が、「長篇の中の一章」のような体裁を成すというのが、「短篇の連作」というモノだと思う。
↓最近読んだ範囲では、下記のモノが「短篇の連作」に該当するように思う…
>>『撃てない警官』 『出署せず』 『伴連れ』
関係無い他作品を不意に持ち出してしまったが…この「短篇の連作」に該当する、愉しい作品に出逢った。
作品は文庫本で2冊になっている。各々が「“第1巻”と“第2巻”」、または「“上巻”と“下巻”」というような趣であろうか…
何やら「大阪・梅田のショットバーに集う人達の物語」らしいというようなことを聞いて興味を覚え、少し期待して2冊を入手したのだった。今回は、最近在る「シリーズを“逆順”」ではなく、普通に順番で本を紐解いた…
↓こちらが“第1巻”または“上巻”に相当するモノ…
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↓こちらが“第2巻”または“下巻”に相当するモノ…
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本作は、雑誌連載を“底”としながら単行本化、更に文庫化という経過を辿っている。或いはそういう“履歴”の作品には、こうした「短篇の連作」というような体裁がフィットするのかもしれない。
全編を通じた主な視点人物は刑事である三田という男だが、他の作中人物達を主要視点人物に据えた、少し笑える挿話も挟まっている。全編を通じて、少し大きな事件が動くというような感じになっている。
物語は、駆け出しの頃に先輩から散々聴かされ、視たこともないのに「自身の記憶」と錯覚しているような古い事件のこと等を想いながら、三田が街を歩いている場面から起こされる。
大阪の“キタ”と呼び習わされる梅田周辺の繁華街の外れに、<デッドエンドストリート>という通称の路地が在る。(※ 近年の再開発で姿を消したそうだが、実在していた場所だという…)
三田はこの路地の傍で、若い女が少し酔った男達に囲まれるようになっている状況を視掛けた。女性が難儀していると視て、警察手帳をチラリと見せて男達を追い払った。女性はアリサと名乗った。名乗られたので、三田も名乗り返した。
三田は休日の前に酒を鯨飲するというのが楽しみな、30代半ばを超えて独身であるという男だ。警察関係者であることが知れると面倒な場合が在ると考え、特段に馴染みの店を決めるでもなく、何時も街を歩き回って眼に留めた店に入っている。
アリサと名乗った女を助けた後、<デッドエンドストリート>を覗くと<スクウェア>というショットバーが在った。三田は<スクウェア>に入る。
<スクウェア>を切り盛りしているのは、「名無しのリュウ」で通っている若いバーテンだった。そして少し見覚えが在った常連然としていた男は、元は有名なボクサーだった宇多島健一だった…
三田は大阪府警で薬物対策を担当する刑事である。<スクウェア>では、特段に名乗っていないのに「三田さん」と呼び掛けたリュウの様子に少々胡散臭さを覚え、「二度と寄らない」と思っていたのだが、捜査活動中にリュウや宇多島に似た男達を視掛けたような気がして、<スクウェア>にまた寄る。寄ってみれば、アリサとリュウが懇意にしていて、アリサが「絡まれたところで“三田さん”という人に助けられた」と直ぐにリュウに報せていたというだけのことだった。察しの良いリュウが、「この人が、アリサの言う“三田さん”?」と思っただけのことだった。そして<スクウェア>に件のアリサが現れる。
こういうような滑り出しで物語が展開して行く…普通の人達の幸せな日常を蝕む薬物事案に向き合う三田…そして三田が何やらきな臭いモノを感じながら接するリュウや、ボクサーを退いた後にはスポーツ用品店のオーナーとして成功しているという宇多島…三田が少しずつ知るリュウや宇多島の思惑、或いは正体がよく判らなかったリュウの素顔は?
三田が<スクウェア>で出逢った人達との物語と、三田が所属する捜査班が追う事件の顛末とが、少しずつ交差しながら進む本編はなかなかに愉しい。少し夢中になってしまった。
ところで…本作を読んでいると、三田が毎度のように「俺の酒」と呼びながら呑んでいる<タラモア・デュー>というアイリッシュウィスキーが少々気になる…


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