『若頭補佐白岩光義 北へ』

“白岩光義”という作中人物…これは別なシリーズの小説で、「主人公の幼馴染で、若かりし日に色々と在った親友」として登場するのが初登場らしい。その白岩が主役の作品が、シリーズになった…こういう“スピンオフ”というのはよく在るモノなのかもしれない。

残念ながら、白岩が「主人公の親友」として登場する別なシリーズの作品は知らないのだが…前作を読み、「“旧き善き侠客”が複雑な現代日本を駆ける」という雰囲気が大いに気に入って、第2作を早速に紐解くこととした…

↓第2作は「北へ」ということになっている…

若頭補佐 白岩光義 北へ (幻冬舎文庫)



↑前作から概ね1年を経た、“東日本大震災”から数ヶ月を経た辺りという舞台設定である…

白岩は東北新幹線に乗車して旅行中だった。客車内で携帯電話の電子音を延々と鳴らしている男と揉める等した他方、老婦人と幼い孫が連れ立って移動していたのに出くわす等していた。

白岩が東北を目指したのは、先代花房組長に関連する用事を足したかったからだ。先代花房組長と縁が在り、嘗ては仙台の組で組長だった成田が、不意に東京の病院で治療を受けている花房を見舞いに訪れたのだった。成田は組長を退き、刑務所に慰問に来たことが切っ掛けで知り合った女性との文通を通じて結婚に至り、現在は青森県の津軽地方に住んでいた。見舞いの御礼のためにこの成田を訪ねるというのが、白岩の用事だった。

白岩は津軽の十三湖を訪ね、夫妻で蜆漁に勤しむ成田夫妻に出くわすが、そこで成田の妻のことを聴く。仙台に居る、永く行き来が途絶えている姉に届け物を頼まれたのだった。そして白岩は驚くことになる。その「仙台の姉」というのが、新幹線の車内で出逢った老婦人その人だったのである…

そして仙台に立寄ってみれば…成田の妻の姉は、地元の老舗建設会社の創業者一族であり、会社や“復興利権”を巡って、不審な男達が色々と蠢いていた…

新幹線で出くわした老婦人や孫の幼女との縁、成田夫妻との縁を大切に思う白岩の“お節介”が始まった…

という展開だ…東北で出逢った人達を巡る案件の他方、強い覚悟で病気療養を目的に東京に移った先代花房組長らの、震災という事態を受けた“揺らぎ”等、「読ませる箇所」が多い…

が、この白岩という男は変わらない…相変わらず痛快である…

早いもので、「“大津波警報”と言うが、“大”とは何ぞや?」と酷く驚いた、あの大震災から何時の間にか6年を迎えようとしている。「“復興”とは何だろう?」と時々思うことも在るのだが…そういう時代や場所を背景に、ささやかな縁に尊さを見出し、好からぬ輩の悪事を暴く白岩の物語…愉しかった!!

或いは、本作が非常に愉しいのは…作中の白岩が、私自身と近い世代に設定されているからなのかもしれないとも読後に考えてしまった…とにかくも「“旧き善き侠客”が複雑な現代日本を駆ける」という雰囲気…これは或いは「切実な時代の要望」なのかもしれない…



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