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↑表紙イラストの「如何にも…」という風貌の男性…題名に冠せられた“若頭補佐”という「あの世界」な用語…何やら凄惨な抗争でも起こるような物語を想起してしまうが、必ずしもそうではない。独自の価値観で、正しいと思う道を行こうとする男の物語である…何となく「現代侠客伝」というような趣も在る…
男は新宿の花園神社辺りを歩いていた。赤いスカートの女を眼に留めた。女の脹脛の綺麗な線が印象に残った。
そしてその女が何処かに去り、想い起しながら歩いていれば、その女を再び目にした。2人の若い男達が女に迫り、脇に車が控えている。何やら女を連れ去ろうとしていて、女が抗おうとしているような様子だ。
男は「やめろ!」と割って入った。2人の若い男達が掴み掛り、男は彼らを倒してしまった。女は何時の間にか消えた…そして男は現れた警察に、事情聴取ということで新宿署に連れて行かれた。
この男…白岩光義…大阪の“極道”である。本人は飽くまでも“極道”と称し、“やくざ”や“暴力団”とは言わない。2千人程の組員を擁する二代目花房組の組長で、関西の大勢力である六代目一成会の若頭補佐である。知る人ぞ知る男だった。大阪大学の学生だった頃、チンピラに絡まれた女を助けようと乱闘になり、ナイフで顔を切り付けられた。その物々しい傷痕が顔に残る。その騒ぎの中で先代の花房組長と知り合い、やがて大阪大学を卒業後に花房組に入って頭角を現すようになった。
事情聴取で新宿署に1泊する羽目になったが、白岩は連れ去られそうになっていた女の事情が気になる。
そして白岩は、友人が頼みにしているという情報調査会社の木村と連絡を取り、出くわしてしまった事件の関係者、殊に連れ去られそうになっていた女の情報を得るよう、仕事を依頼した。
この調査の結果、赤いスカートの女が外国人であることや、事態の背後に新宿のやくざ、新宿署、NPO法人、京都から進出した予備校や各種学校を運営する法人、更に色々なモノが蠢いていることを知ることになる。
そんな他方、一成会内部で“反主流派”が担ぐ神輿のような存在にもなっている白岩には、色々と気になることが在る。加えて、先代の花房組長の病気療養に関しても色々と考えなければならないことが在った。
こういう中で物語が展開する…白岩は善行を行うことを看板に、多くの弱い者を泣かせるような真似が罷り通っていることに義憤を覚える。適法とは言い難い手段で稼ぎを得る場合が多いような極道の業界に在っても、許せることと許せないことが在る。そういうことで、大きな組の幹部としてよりも、寧ろ私人としての“お節介”で事態の収拾を図って行こうとする。他方で、自身の周囲の組としての問題も浮かび上がる…
運命が何やら捻じれて極道の世界に身を置く白岩…しかし彼は、そこに身を置きながらも独自の価値観を貫き通そうとする。正しく題名のとおり、「東へ、西へ」と東京や大阪を往来しながら活動を続けることとなる。
偶々眼に留めて、何やら困っている様子なところで声を掛けたという縁で、赤いスカートの女と苦しんでいる人達を何とかしようと奔走する白岩…何か「“旧き善き侠客”が複雑な現代日本を駆ける」という感の痛快な物語になっている。
「面白かった!!」と一通り読んで、後から冷静に振り返れば…白岩が極道という立場ではなくても、例えば「大阪のバーの、怖い顔をした名物マスター」というような立場であったとしても、この物語は成立してしまうかもしれない。しかし、大きな組織で「神輿に乗る」ような立場にも在りながら、飽くまでも自身の価値観に正直に、一寸出くわした人との縁を大切に考え、難局を乗り切ろうとする辺り…なかなかに痛快だ。加えて、白岩の実父は余り好ましくない存在であったとされている他方、顔に深い疵を負ってしまった白岩に眼を掛けた先代花房組長との関係、「義理とは言え“親”」の薫陶の描写がなかなかに好い。白岩と先代、或いは姐とのやり取りが、何となく沁みる感じもする。
何となく、「色々と在る日頃のモヤモヤ」を吹き飛ばしてくれるような白岩の奔走の様…愉しい物語で、多くの人達に薦めたい!

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