最近の起床時間の傾向としては「若干遅め?」な時間帯に起き出した朝なのだが…珍しく眠気を余り催さず、時間の経過も忘れて夜を過ごした後なのだ…
↓そういう原因になったのが、この一冊だ…夕食を愉しみながら紐解き始め、何やら「つづき」が酷く気になった…休もうとして、「休む前に少々…」と頁を繰り始めると、益々「つづき」が気になった…そして…読了に至った…
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↑何やら「禍々しい」感じの題名が冠され、或る種の“ホラー”のような印象も受けてしまうが、決してそういうような感じの作品ではない…少し不思議な出来事が作中では展開するのだが…引き込まれてしまった…
物語は主人公の大路樹(おおじ いつき)が会社へ出勤するような辺りから起こされる。
樹は大手レコード会社の社員だ。社歴は未だ浅めだが、売り出していく作品を発掘したり、制作するディレクターの仕事に就いたのだ。
樹自身は、やや複雑な心境で受け止める表現だが、彼は“元ミュージシャン”だった。3人組の人気バンドのメンバーだった。スタジアムツアーをやるような、ヒット曲を抱えたバンドだったが、樹以外の2人が離れてしまい、バンドが解散し、ソロ活動をしていたが成功出来ず、レコード会社から声が掛かって現職に就いたのだった。
レコード会社には、デビューを夢見る多くの人達から音源が寄せられる。それを視聴して、集まって検討して、「佳い!!」ということになった作品を世に送り出すという仕事が在り、樹はその部門の仕事に参加した。
樹は玉石混交な音源を視聴し始めたが、酷く引っ掛かる作品に出くわした。CD-Rに多数の作品が収められた型が多かった中、たった一曲を収めたCD-Rに<ひとごろしのうた>が収められていた。
デビューを夢見る人達がレコード会社に寄せた音源には、制作した関係者の氏名や連絡先の情報が添えられているのが普通だが、<ひとごろしのうた>に関してはそんなモノは無く、「瑠々」という名前だけが判る状況だった。
<ひとごろしのうた>は奇妙な題名だが、歌の歌詞自体がそういうことを示唆している訳でもなんでもなかった。哀切感が在る少女の歌声に、何とも言えない魅力が在った。加えて、バックの演奏で聞こえるギターが素晴らしかった。樹も嘗て愛用していたレスポールのギターの音で、素人が演奏しているとは思えない。
樹は、何とかこの<ひとごろしのうた>を送り出したいと強く望む。そしてラジオ番組の企画として「“瑠々”を探せ」というコーナーを立上げ、曲を流しながらこのアーティストの情報を寄せてもらえるようリスナーに呼び掛けた。
そうした行動を2ケ月程続けても瑠々というアーティストの情報が集まらない中、ネットを介して楽曲のダウンロードを可能なようにし、終にインディーズレーベルを起こして「1曲収録500円」CDの販売にも踏み切った。
その結果、<ひとごろしのうた>は大ヒットとなった。ダウンロードもCD売上も伸びていたが、それでも瑠々に関しては何も判らない状態が続いた…
やがて…このCDを店頭から引き揚げなければならないような騒ぎが起こる…
騒ぎの波紋と瑠々の正体を探る動きとが並行して進み、意外な型で真相が明らかになって行く…他方で、樹を始めとする作中人物達が、この一件で揺れ、何かを見出して行くような感じの物語でもある…
本作は、少々“奇譚”というような風で、“謎解き”という風で、他方で遠い過去を引き摺る関係者と、然程遠くない過去を引き摺るような感も滲む主人公の“人間ドラマ”で、色々な要素が絡んだ「ビッグバンドの音」のような物語かもしれない…強く引き込まれ、時間を忘れて読み耽ってしまった一冊だ…

この記事へのコメント
松浦千恵美
何卒、よろしくお願いいたします。
Charlie
えっ?!作者御本人!?一寸、驚きました。消雪の感想を綴った拙文を、作者御自身の眼に留めて頂いたというのは嬉しいことです。
拙文を何かで御紹介頂くのは一向に差し支えは在りません。
『ひとごろしのうた』に関しては、久し振りに、時間経過を忘れて夜遅くまで読み耽ったという小説でした。不思議な感じの物語でした。友人、知人に薦めています…
松浦千恵美
Charlie
「自身の備忘録」と言うのか、「気に入った本の内容を自身なりに整理」と言うのか、本の感想等を綴ってみるようになって、何時の間にか年月が経ちました。が、読んだ本の作者御自身からコメントが寄せられたのは初めてです。
この『ひとごろしのうた』は御自身の過去の御仕事の御経験も交えながら、独特な“奇譚”という調子に纏まっていますが、それ以上に「実に妙な騒動」の渦中―「CDを店頭から回収」というような事態は、レコード会社の社員としては「悪夢!!」だと想像します…―に身を置くようになった主人公の樹が「踏み出す!」ような感じが気に入りました。
本作の更なるヒット、そして更に面白い次回作に期待しています。
今般はありがとうございました。
松浦千恵美