『刑事たちの聖戦』

面白かった小説に関して、「作中人物達のその後?」というようなことを思うことがないでもない。物語は一応完結するものの、「あんな出来事の後、関わったあの人物はどういう風になって行ったか?」というのが存外に多いものだ…そう思っていると、“続篇”とでも呼ぶべき作品が登場する場合も在る…

↓本作はその“続篇”というタイプの作品である。なかなかに愉しく読了した…

刑事たちの聖戦 (角川文庫)



↑場合によって、この“続篇”を先に読むということも在るのだろうが…それでも随所に前作の件への言及が在るので、感じは判る。そして、その前作を紐解いてみたくなることであろう…

本作は『刑事たちの夏』の“続篇”である。『刑事たちの夏』の物語から7年程後の出来事である。

物語は、禍々しい事件を伝える記事から起こる。退職した元大蔵省高官が、宅配便の配達を装って自宅に現れた人物に妻共々に惨殺されてしまう事件が発生していた。それも連続2件の事件だった。警察は捜査本部を現場を管轄する阿佐ヶ谷署に設置して、捜査を開始していた。

そして本作の主人公である松浦亮右が登場する。『刑事たちの夏』の主人公、松浦洋右の息子である…

『刑事たちの夏』にも松浦刑事の息子である亮右は登場している。両親が離婚を前提に別居中で、母と2人で暮らしていて、小学6年生だった。本作では18歳の青年になっている。

亮右にとって、父親としての松浦刑事は、キャッチボールの相手をしてくれたことや、将棋の手ほどきをしてくれたことが記憶に残るのだが、繰り返し見る夢が在った。キャッチボールをしていて、捕り損なったボールを拾おうとしていると、何者かが現れて父親を襲撃してしまうという内容のモノだった。

その愉快ではない夢を見て、眼を醒ましたところで、亮右は電話を受けた。電話の主は、父の友人でもあった赤松警部補だ。直ぐに伊豆の別荘へ向かえと言う。警察が亮右にとんでもない嫌疑を掛けていて、黙っていると拘束されてしまうのだという。その嫌疑というのは、「元大蔵省高官達の殺害」という、驚くべき内容だった。亮右は直ちに行動を開始した。

亮右は、父である松浦刑事を喪った後、母親も希望していた名門私立学校の入試に成功した。が、高校に進んでから不登校、引篭もりに陥ってしまった。父の友人だった赤松達が心配し、何とか立ち直りを助けようと、赤松は長期休暇を伊豆の別荘で亮右と過ごした経過が在った。そういう周囲の人達の御蔭で、亮右は中退となってしまった高校の卒業資格を得て、現在はアパートで独り暮らしをし、宅配便のアルバイトをしながら大学受験を目指しているところだった。その亮右としては、「元大蔵省高官達の殺害」という事件は、何かのニュースで見て「大変だ…」と思うばかりの案件で、全く関わった覚えなどない。

「元大蔵省高官達の殺害」という事件を巡って、捜査に携わる警察でも色々な背景から混乱が生じていた。当初は捜査一課を中心に捜査本部が立ち上がったのだったが、何時の間にか公安部が捜査を主導するようなことになっていて、公安部は松浦亮右が容疑者であると見込んでいたのだ…

事件の真犯人は何者なのか?全く覚えがない嫌疑から逃れようとする亮右や、友人の悩める遺児が立派になることに期待し、何とか護ろうとする赤松や、女性検事の古沢、そして7年前の事件当時は高校生で、現在は医大を卒業して医師になって大学病院の研修医をしている白鳥の娘…目が離せない展開である…

当然、独立した作品として楽しめるのだが…本作は何処となく『刑事たちの夏』の“補遺”という雰囲気も色濃いかもしれない。前作と共通する作中人物の「その後」に加えて、「前作以前」のことも少し掘り下げられているような箇所も多い…

↓読了済みの「合わせて楽しむ」べき“前作”はこちらである…
>>『刑事たちの夏』

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