『満潮』

↓この出版社では国外の面白い作品の翻訳を多く出しているのだが、なかなかに人気が高いスウェーデンの作品の翻訳と聞き、入手してみたのだが…凄く夢中になってしまった…

満潮〈上〉 (創元推理文庫)




満潮〈下〉 (創元推理文庫)



↑遠い過去の未解決事件…それを覆うベールを剥がして中を覗こうとした人物が現れ、何やら幾つかの現在進行形の事件と相俟って波紋が拡がる…頁を繰る手が停まらなくなり、上下巻を一気に読了してしまった。

物語は、小さな町の海岸で何やら奇妙なことが行われ、少年がその様子を近くの森で密かに視ているという場面のプロローグから起こされる。1987年の夏に“事件”が起こった場面である…恐らく、本作の題名の『満潮』はこの場面から出ているのであろう…

そして本編へ進む…

本作の最初の方によると…スウェーデンには「警察大学」というモノが在るようだ。警察関係の仕事を志望する人達が学ぶ場で、課程を修了すると、巡査としての半年の実習を経験し、そのまま警察官としてのキャリアに入ることが出来るようになっているようだ…本作の主人公は、その警察大学で学ぶ女子学生のオリヴィア・レンニングである。

6月からの夏休みが始まろうという時期から物語は始まる。オリヴィアは、夏休み明けの学年の課程を終えると、巡査としての実習に入ることになっている。そういう夏休みをどういうように過ごそうかと考えていたが、教官が「任意の研究課題」というモノを学生達に示した。過去の未解決事件に関して、何か“問題”が無いか検討してみる、往時の捜査では出来なかった手法が入り込む余地を見出してみる等、色々と考えてみようということだった。

課題の中に、1987年に発生していたノードコステル島での殺人事件というモノが挙がっていた。犯罪捜査官で、数年前に他界してしまったオリヴィアの父も捜査に携わっていた経過が在ったと聞いている事件であった。砂浜に、首だけ出した状態で妊娠中だった若い女性が埋められ、潮が満ちて水浸しになって“溺死”となってしまったという事件だった。容疑者を特定するに至らなかったばかりか、被害者女性の身元も不詳のままだった。オリヴィアはこの事件に酷く惹き付けられるモノを感じていた…

折角の夏休みに「任意の課題」に勤しまなければならないということも無いのだが、オリヴィアは関係者の話しを聴いてみることや、事件現場であったノードコステル島への訪問等をして、事件関係のことを知ろうとする…

オリヴィアは、事件発生後に長く捜査陣の中心的存在になって活動していた経過が在るというトム・スティルトンとの接触を試みる。そして探すのだが、6年程前に「個人的な事情」というようなことで警察を退職したらしい。退職した警察官であっても、訪ねて事情を尋ねることは出来る訳で、オリヴィアとしては退職していてもトム・スティルトンに会いたかったのだが…警察関係者も元妻という女性も「行方を知らない」と言葉を濁す状況だった。

他方…最近、街では“トラッシュキック”なるモノに多くの人達が眉を顰めていた。無軌道な若者がホームレスを襲撃して暴力を振るい、その様子を動画撮影してネット上に公開していたのだ。被害に遭ったホームレスは酷い重傷を負い、とうとう死亡者まで発生してしまった…

更に…アフリカでの鉱石採掘を巡って、好くない噂も在る企業が、栄誉ある表彰を受けたということが切っ掛けに、その会社を批判する声も高まっていた…

こういう情勢下、オリヴィアは活動を続ける…そして意外な型でトム・スティルトンと出逢う…

そういうような展開を見せて物語は進むが…“コールドケース”(=未解決事件)と“ホットケース”(=進行中の事件)とが交錯する中、余りにも意外な事実、真実が明らかになって行く…

本作を読み進める中、何となく「外国のテレビドラマでDVD数枚に収まったモノを、一気に観ている」時のような感覚を覚えた…本作の作者はスウェーデンで夫妻で活躍している脚本家であると紹介されているが…正しく、多彩な作中人物達の色々な行動が“意外な事実・真実”に収斂されて行くという、“人気ドラマ”のような雰囲気に溢れている。実際…この小説を原案に、スウェーデンで10話構成の連続テレビドラマも創られているようだ…

本当に、頁を繰る手が停まらないという感じで読了した本作だが…本の末尾に在る“解説”によると、作中人物達の「その後…」ということになる小説も登場していて、“シリーズ”となって好評を博しているらしい…それも是非読みたいものだ…

とにかくも、非常に愉しいシリーズに出会うことが出来た!!

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