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↑ページを繰ってみて…何となく入手して「善かった!」と思った…夢中になってしまうものが在った…
本作に関しては…「スウェーデンの小説の翻訳」ということで“フィクション”として愉しんだ。勿論、それで大変に結構なのだが、読後に「訳者あとがき」に触れると、「“ノンフィクション”と“フィクション”との境目」のような性質を帯びている一面が在ること、「起こった事実をバラバラなピースにして、パズルを組上げるように構成して創った物語」なのだそうだ。1990年代に実際に起こっている事件をベースにしているのだという…
物語は“昔”というパートと、“今”というパートが概ね交互に現れる。“今”の事件に携わっている「家族」の“昔”のことが挟まれながら、“今”の事態が推移するのである。
長兄のレオ、次男のフェリックス、末弟のヴィンセントの3兄弟と、幼馴染のヤスペルという4人の若者達…彼らは軍の武器保管庫から大量の銃器を巧みに奪ってしまい、それを隠匿した。そして、現金輸送車の襲撃や銀行強盗を繰り返す。余りにも鮮やかに、軍隊の作戦行動のように繰り返される犯行から、何時しか<軍人ギャング>と呼ばれるようになった。
警察の側では…ヨン・ブロンクス刑事がこの事件を担当することになった。「プロの犯罪者」に違いないと捜査に着手するが、埒が明かず、銀行に設置されていた、彼らの手で壊されてしまう直前の防犯カメラ映像のような、僅かばかりの現場証拠を頼りに「或いは“兄弟”がグループに居る?」と推理するブロンクスだが、なかなか犯人グループに辿り着けない…
余りにも巧みに犯行を進め、意外な正体の強盗グループと、それを追う刑事という話しを軸としながら、“暴力”で崩壊した家庭と、そこに育った若者達の懊悩というような物語になっている。“暴力”が日常的に常用されるような中で、“暴力”の威力を身に着けるかのようになる…そんな“暴力”が絡め取る若者達の過去と現在との物語だ…
強盗グループ側の関係者の多くには、実在のモデルが在るという他方、事件を担当するブロンクス刑事は完全な創作であるのだという。しかし「“暴力”で崩壊した家庭」を自身の経験として知っている人物と設定される、この「働き盛り」風で仕事熱心な捜査官は、“主役”の若者達と読者とを結ぶ大きな存在感が在ると思った。或いは、著者が別な作品を綴る際に、捜査陣の一員として再登場も在るかもしれないと勝手に夢想もしてしまったのだが…
そして本作で鍵となるのは、3兄弟の父であるイヴァンのような気がする。“昔”というパートでの振舞いの数々…そして“今”というパートでどうなっているのか…このイヴァンと、長兄のレオとの複雑な関係が、事態を産み出したのかもしれない…
或いは本作は…余りにも巧みに犯行を進め、意外な正体の強盗グループと、執念深くなかなかに鋭い担当刑事との対決という体裁でありながらも、“暴力”の連鎖とか、個人や社会と“暴力”とか、様々な価値観の人々が日常的に交差するスウェーデンのような“西欧諸国”の社会というような、何か広く深いテーマを奥底に持っているような気もする。
序でなので御紹介するが…
↓因みに、本作の共著者の1人、アンデシュ・ルースルンドの他の作品で、比較的入手が容易と思われる、出版当時に少し話題になった作品がこれだ!
>>『三秒間の死角』
本作は「なかなかに好い翻訳ミステリー」と人気も高まっているようだが…実際、非常に面白い!!


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