↑先に読了した『地層捜査』と“シリーズ”ということになる。“未解決事件”の担当となった水戸部刑事の活躍が描かれる作品で、夢中になってしまった…
冒頭…本作の事件がそもそも始まる辺りが描かれる…1995年、代官山で、不動産会社の社員が家賃の件で管理下のアパートを訪ね、住民であった若い女性が死亡していたのを発見する。<代官山女店員殺害事件>と呼ばれることになった…
17年の歳月を経た…前作『地層捜査』の一件以来“未解決事件”の担当を続けている水戸部は、捜査一課に移って来て日が浅い女性捜査員の朝香と共に上司達に呼ばれた。指定の会議室へ行ってみれば…待ち受けていたのは“難題”だった…
<代官山女店員殺害事件>は、殺害された女性と交際の在ったカメラマンが容疑者に擬されたのだったが、捜査に踏み込んで行こうとしたタイミングで、件のカメラマンが水死体で発見されるという事態になった。そのため、警視庁としては「被疑者死亡・不起訴」という形式で事件に決着は着けていた…
しかし、つい先日に神奈川県内で発生した殺人事件の現場で採集されたDNAの中に、<代官山女店員殺害事件>で採取された証拠の中に在ったDNAサンプルと同種のモノが在るらしいことが伝わって来た。こうなると、<代官山女店員殺害事件>の真犯人が17年の時を経て再び犯行に及んだということになり、加えて<代官山女店員殺害事件>の捜査は「大きな間違い」であったことになり、犬猿の仲である神奈川県警に警視庁がこき下ろされる結果ともなる。更に一応決着している事件を掘り返すと、現場の渋谷署の士気も下がってしまう。
そこで非公式に、渋谷署に知られず、神奈川県警に先を越されずという型で、<代官山女店員殺害事件>の真相を探ることになったのだ。証拠の分析を行う科学捜査研究所には、本件の対応を密かに行うよう、手は回してあるともいう…水戸部と朝香は、「ここを使って構わない」と呼び出された小会議室を割り当てられ、直ちに捜査に取り掛かった…更に、この案件を密かに扱う科学捜査研究所の担当者は、水戸部の友人でもある中島ということになった…
水戸部と朝香が当時の捜査資料の整理と閲覧から捜査に着手をすると、当時の現場見取図のコピーが作成されている様子に目敏く気付く人物が現れた。捜査一課の捜査員である時田で、時田は<代官山女店員殺害事件>当時に渋谷署在勤で、事件の捜査にも加わった経過が在ったという…が、彼は“幕引き”について納得行かない部分が在った…その旨を彼は水戸部に伝えた。水戸部は上司に相談し、時田にも仕事に加わってもらおうともしたが、時田は応援要請を受けていた西日暮里のアパートで看護婦の遺体が発見された一件の捜査に出てしまった…
水戸部と朝香は、事件当時の関係者に順次話しを聴いて回る。そうした中、直ぐに被害者と交際の在ったカメラマンが容疑者に擬せられ、カメラマンが変死体で発見されたことによって“幕引き”と進んだ「見立て」に「隙が大き過ぎたのではないか?」と思い至る。そして、「当時は見出さなかった“関係者”」というものの存在に辿り着くこととなる…
夢に向かい、夢が半ば破れというような、若者の哀歓と、周辺の人達に、変貌し続けている街…そこで起きた古い事件の波紋…なかなかに興味深い展開を見せる…過去を探る水戸部と朝香の動き、水戸部の案件で懸命に証拠分析を手掛ける研究員の中島の動き、更に現在発生している別な事件の捜査で駆けまわる時田の動きが並行して描かれる中、「事の真相」が次第に明らかになって行く…
今回、「神奈川県警に後れを取るな!」という訳も在って、水戸部は日中から深夜まで、かなり精力的に動く…何処と無く『24』という感じさえする…<代官山女店員殺害事件>の被害者が勤めていたカフェバーは、17年後でも営業中だが、水戸部はこの店に一晩に何度も色々な相手と立寄るということもしている。勿論、店の中で現在働いている人達は、事件のことや水戸部の事情は承知していない訳だが…
本作は、何か深い余韻のようなものが残るミステリーだ…
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