『破天の剣』

↓休日の土曜日に、朝から夜で一気に読んでしまった一冊である!!

天野純希/破天の剣 ハルキ文庫
↑かなり面白い!戦国期の九州を主な舞台とした時代モノである!!

本作は、島津家久を主人公に据えている。九州制覇も間近となった、戦国時代の終わり頃の島津四兄弟の末弟である。この島津家久は、島津義久、島津義弘、島津歳久という3人の兄が居る。本作の主人公は末弟の家久ではあるのだが、本作全般を通じてみると、何処と無く「四兄弟の物語」という雰囲気も在る。

余談ながら…島津義弘は何度も名を改めていて、本作では“忠平”、“義珍”(よしたか)と名乗っていた時期を扱っているので、その名で登場している…

四兄弟の祖父が島津日新斎で、人材育成に力を注いだ賢君として敬慕される人物であり、父はなかなかの苦労人だった島津貴久である。家久の3人の兄は、父の正室を母としているが、家久は正室が他界した後に迎えられた側室が母である。家久は3人の兄達から視れば、少し年が離れた弟ということになる。

本作の家久…変わり者で型破りであるが、天才的な戦術家で、「不敗の名将」というようになって行く…そういうように歩んだ家久の底流に在ったモノが何なのか?それが全編の奥底に在る…

そうした家久という人物の心の底を描く他方、「変わり者で型破りであるが、天才的な戦術家」としての活躍ぶりが活写されるのだが、これが凄い。

北薩摩の大口では、長期化してしまっていた戦いに決着を着ける大口城攻略に成功する…父・貴久の他界が公表された後のタイミングを狙うであろう、大隅の敵対勢力による攻勢に関しては、彼らが水軍を用いて鹿児島に襲来する策を採ることを予見し、対応策を練って見事に撃退する…永年対立していて、駆逐してしまった日向伊東家の支援を名目に、同時にキリシタン王国建設という野心を胸に日向侵攻を企てた豊後の大友宗麟の軍勢に対しては、様々な手を打って大軍の進撃を阻み、高城に拠って大軍を翻弄した…そして「五州二島の太守」と号し、「熊」と怖れられる龍造寺隆信との争いでは、島原地方の沖田畷を“決戦場”に選定し、入念な準備の上で戦いに臨み、5千の将兵で3万の軍勢を迎え撃ち、総大将の龍造寺隆信を討ち取ってしまった…

飄然として、掴み所も無いような素振りを見せる家久だが、天才的な戦術家で「不敗の名将」とまで言われた陰で、全身全霊で戦の準備に明け暮れていたという一面が在る…やがて、そうした“無理”で多少体調を崩すような場面も生じるようになっていた頃、豊臣秀吉の九州侵攻を迎えることとなって行く…

本作の題名である『破天の剣』だが…作中の家久が、目立って大きな剣を愛用する場面が在るので、それをイメージしているようにも感じられるのだが…陣営の総帥である長兄の義久が、家久を軍事作戦の切り札、“剣”と看做すのかと自問する場面が在るので、そういうようなことをイメージした題名かもしれない。

家久は、些か“不審”な状況の最期を遂げる…これに関して、幾つか説は在るようだが、定説は無い…物語はそんな家久の最期という辺りで幕を閉じる…何か…「淡い」と同時に「強い」余韻が残る感じだ…

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