武芸がぶつかり合うようなアクション…妖しい術を弄する忍者の暗躍…軍勢が勇壮に戦う合戦…誰かをはめようとする謀略の仕掛け合い…事件の謎解き…家族…恋愛…青春…と、「エンターテイメント」のあらゆるモノが入っていて構わない訳だが…
↓上述の「エンターテイメント」のあらゆるモノに加えて、「往時の対外国関係」を加味した仮説による、有名事件の「本当はこういうことだった?!」まで含めた、なかなかに壮大な物語だ!!
↑大変に愉しく読了した!!
本作の主人公は“長岡与一郎”である。この名を示すよりも“細川忠興”と言った方が、時代モノ好きには判り易いかもしれない。与一郎の父である細川藤孝―隠居後の“幽斎”の名の方が、少し知名度が高いかもしれない…―は、足利義輝に仕えていて、足利義昭擁立にも奔走したことが知られる人物だが、足利義昭が織田信長と袂を分かつことになった辺りで、細川姓を避けて、居城の青龍寺城―現在では寧ろ“勝龍寺城”という字を用いている…JR長岡京駅に近い…私自身、一度立ち寄ったことも在った…―が在る地域に因んで長岡姓を用いていた。本作で描かれるのは、この長岡姓を用いていた時期なので、主人公の名は“長岡与一郎”なのだ。
与一郎は織田信長の小姓を務めていて、後に「若き寵臣達」の一人として活躍していくことになる。この小姓を務めていた時期の仲間に万見仙千代、荒木新八郎が居る。本作は、この3人が対立したり、手を携えあったりというような「青春ストーリー」というようなものを一つの軸にしている。
与一郎、仙千代、新八郎の「青春ストーリー」を軸にしながらも、その底には「何故、織田信長は本能寺で謀殺されることになったのか?」という、「大きな謎解き」が在る…
所謂<本能寺の変>だが、これは実に“謎”が多い事件である。直接に現場で動いたのは、明智光秀の兵である。明智光秀が、何故この挙に及んだのか?様々な説が在り、その様々な説に依拠する物語が多く綴られている…
本作では、その<本能寺の変>の“謎”に「往時の対外国関係」を加味している。織田信長の軍勢と言えば、鉄砲を多用して火力で敵を圧倒する戦術を用いたことが知られるが…それが可能だったのは何故なのか?そういうような、深く広い考察を交えて物語が綴られている…それらが実に佳く出来ている!!“日本史”もまた「“世界史”の一部」なのだから、本作の仮説のような考え方も肯ける…
時代モノに登場する史上の人物達…少しくどい表現になるが「史上の人物達をモデルにした劇中人物達」というものは、作家によって、作品によって、色々な描かれ方をしている。私はその「大きな差異が在る“色々な描かれ方”」を多少比べながら愉しむのが好きだ…
本作の織田信長…作品によっては、やや狂気を帯びたような描かれ方になるように思うが…本作の信長は「理想を秘めた、思慮深い、“若き寵臣達”の“善き親父”」である…「対外国関係」を思案しながら、宣教師達から贈られて気に入っていたという地球儀を見詰める場面が在る…地球儀の中で“極小さな島々”にしか見えない日本で、彼はその“三分の一”程度に威令を発するばかりだ…苦慮しながら、地球儀の殆ど全てを自在にする夢想をするという場面だ…こんな様子に「思うままに出来るでもない中で如何にするのか?」を思案する様が強く感じられる…やがて、信長の思案の結果として、彼は陰謀に陥れられて行く…
そして与一郎…“細川忠興”がモデルなのだが…“細川忠興”は、他作品では「暴君」とか、「傲岸な印象」とか、「美しく聡明な妻に執着し、非常に嫉妬深い振る舞いに及んだ」というように描かれるのだが…本作の与一郎は、主君の信長が秘めた理想に心底共鳴し、それに一命を賭すような、理想家肌で熱い青年として描かれている…
本作は、とにかくも「様々な要素」が満載の、非常に愉しい作品だ!!他方で…「対外国関係」の“重さ”を寓話的に今日の読者に語り掛けるような一面も在るかもしれない…
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