未だNBAのプレイオフは熱い闘いが継続しているが…ウォリアーズの周辺では、新たなヘッドコーチの登場が話題である。
伝統を誇るウォリアーズの歴史を顧みて、決して恥かしくない…否!なかなかの好成績を残したと言って差し支えないマーク・ジャクソンが解任に至り、「何故だ!?」という波紋が広がっていた。
「何故だ!?」という問いへの明確で簡潔な回答は、正直判らない…結局「何時でも、何か新しいモノを導入し、更なる前進を目指す」ということに尽きてしまうのかもしれない…
「新ヘッドコーチ?」ということでは、ファイナル進出経験を有していたり、優勝経験も有しているような、高名なヘッドコーチの名も取り沙汰されていたようだが…ウォリアーズが、フィラデルフィア時代から数えて25代目、1962年の西海岸移転以降では20代目ということになるヘッドコーチとして迎えることになったのはスティーヴ・カーである。
スティーヴ・カーは選手として通算15年間NBAでプレイしている。その間の優勝経験は5回だ。
↓スティーヴ・カーの選手としての在籍チームを挙げておく…
1988-1989:フェニックス・サンズ
1989-1992:クリーブランド・キャバリアーズ
1992-1993:オーランド・マジック
1993-1998:シカゴ・ブルズ
1998-2001:サンアントニオ・スパーズ
2001-2002:ポートランド・トレイルブレイザーズ
2002-2003:サンアントニオ・スパーズ
お気付きと思うが、彼は「二回目の三連覇」を果たしたシカゴのメンバーとして3回の優勝を経験し、移籍したサンアントニオで1回優勝…「4連続優勝」という稀有な経験をしている。1959年から1966年までに「8連続優勝」を果たした頃のボストンに在籍していた選手達を除くと、NBAの歴史の中で「4連続優勝」はスティーヴ・カーだけである…
選手を退いた後、スティーヴ・カーはテレビの解説者を務めたが、2007年から2010年の3シーズンは、フェニックスの球団社長を務めていた。フェニックス時代の戦績は155勝91敗(勝率6割3分)で、2010年にはプレイオフの“西代表”を決めるカンファレンス・ファイナルにも進出した。
球団社長として手腕を振るったが、選手として5回の優勝を経験した経過の中、スティーヴ・カーはフィル・ジャクソン(シカゴの三連覇を指揮していた…)やグレッグ・ポポヴィチ(サンアントニオの指揮官として名高い…)という“名将”の薫陶を受けている。ヘッドコーチを務めるのは、今般のウォリアーズでの仕事が初めてではあるが、大変に期待されているところである…
選手時代のスティーヴ・カーは「3点シュートの名手」として知られていた。選手生活全体を通じた通算3点シュート成功率(4割5分4厘)、シーズン3点シュート成功率(1994-95シーズンの5割2分4厘)は「NBA歴代1位」であるという。驚異的な数字だ…こうした記録を残す他方、スティーヴ・カーは“大舞台”で「値千金!!」なシュートを決める等、記憶に残るようなプレイ―1996-97シーズンのファイナルで、シカゴが優勝を決めた第6戦「残り3秒のシュート」を放ったり…2002-03シーズンのファイナル第5戦では「残り3分、2点差を逆転」を果たしたサンアントニオの3点シュートを放っている…―も見せている。なかなかに勝負強いのだ!!
更に…伝えられている挿話から伺える人物像…私は非常に好感を抱いた…
スティーヴ・カーの父は中東関係の研究者で、彼は父が仕事で滞在していた中東諸国で育っている。産れた場所はレバノンのベイルートだという…バスケットボールを始めたのはエジプトの高校に居た頃で、米国の高校に編入し、アリゾナ大学に進んで注目されてNBA入りを果たすことになる…
大学時代、スティーヴ・カーの父は不幸なことに殺害されてしまった…イスラム過激派による事件であったという…
そういう経験を有していながら、スティーヴ・カーはイスラム教徒批判のようなことはしていない。父を急に失って打ちひしがれる彼を励ましてくれた友人達の中に、イスラム教徒も居たからだ。信仰や思想信条と、テロリストの暴力とは区別すべきモノということなのである。2001年の「あの事件」の中、何か「イスラム教徒悪漢論」的な空気さえ在った中、「善良なイスラム教徒とテロリストは区別しなければならない筈だ」と彼は訴え続けていたという…
「信仰や思想信条と、テロリストの暴力とは区別すべきモノ」という“正論”を吐き続ける…個人の経験の中で出会った多くの善き人達への信義を貫く行動でも在り、「芯の強さ」を窺わせる…また2001年頃の“空気”の中で、「当たり前と言えば当たり前」な“正論”であっても、それを吐く事には多少の「勇気」さえ必要だったかもしれない…だがその「勇気」さえ、彼が信義を貫こうとした善き人達が彼にもたらしたものなのであろう…更に、こうした「芯の強さ」が競技者としての「勝負強さ」にも通じているような気がする…
私がウォリアーズに勝手な思い入れを抱き、「何時かはこのチームに栄光を!!」と熱心に応援するに至ったのは…オークランドの会場に、小さな子どもを連れた親子連れ、スポーツ好きな若者、近所のお年寄りと多くの人達が詰め掛け、「何物をも怖れぬ我等がウォリアーズ!」のビデオクリップが流れる中、劣勢を強いられても声援が途切れなかった、あの雰囲気に触れた経験の故だ…そのウォリアーズは漸く「プレイオフへの連続進出」を果たしたばかり…「これから!!」だ…
NBAはなかなかに苛烈なリーグで、如何に“球団社長経験者”とは言え、“ヘッドコーチ”はなかなかに難しい役目で、「初めて」というスティーヴ・カーも苦心するのかもしれない。しかし、それでも「芯の強さ」でチームを盛り立て、「勝負強さ」を活かした采配で栄光を呼び込んで頂きたいものだ…善き人達との出会いでもたらされた「勇気」を背景にしたと思われる「芯の強さ」を窺わせる、記録にも記憶にも残る男…「何物をも怖れぬ我等がウォリアーズ!」の指揮官として必要な男である!!
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