↓本作はその“伝奇”ということになる。
神威の矢(上) 土方歳三蝦夷討伐奇譚(中公文庫)
神威の矢(下) 土方歳三蝦夷討伐奇譚(中公文庫)
↑あの箱館の戦いの時期を背景に展開する“伝奇”で、なかなか愉しく、一気に読了してしまった。
本作を一言で紹介するなら…戊辰戦争の時期、日本の何処かで封印されている魔物を甦らせようという思惑を持った外国人が紛れ込み、魔物を封印していた人物や、その時代の人々が絡まって、魔物を巡る密かな闘いが繰り広げられる…というようなことになるであろう。
日本の何処かで封印されている魔物を甦らせようという思惑を持つサン・ジェルマンは、配下のカリオストロと共に、幕府が迎えた軍事訓練の教官を務めるフランス人将兵になりすまして来日した。揺れ動く情勢の中、サン・ジェルマンとカリオストロは、魔物が「日本の北に封印されている」と気付く。
そうした中、館山の漁村の少年、雄吉は「大きな軍艦に乗りたい」と幕府艦隊の船員見習いとなる。開陽丸で仕事を始めるが、そこに彼の兄弟同然の幼馴染である善治が、一人で村を抜け出してやって来た。善治は雄吉と一緒に居たいと言い出し、彼も幕府艦隊の船員見習いとなった…
やがて幕府艦隊は蝦夷地に入る。幕府系の軍の幹部となっていた土方歳三は、兵を率いて転戦していたが、蝦夷地の人達がアイヌを虐待していた様に心を曇らせる。そして、滞在した村で、弱っている青年が野犬に襲われそうになっている場面に出くわした。土方は野犬の群れを斬り、アイヌの青年、タリコナを助けて箱館に高松凌雲が設けた診療所に連れ帰った。
タリコナは、自分を助けた土方達に恩義を感じながらも、高松凌雲の診療所を脱け出した。タリコナは、生き別れになった許嫁のホントルスや、その妹のイスカラヤを探し出し、安全に暮らせる場所に連れて行きたかったのだ。やがてイスカラヤの行方の情報を得て、タリコナは土方と再会する。
土方はタリコナに協力し、イスカラヤを救出した。イスカラヤを安全な村に連れて行ったタリコナはホントルスを探す。そして、ホントルスはアイヌ達が“シサム・カムイ”と呼ぶ、山に住む謎の人物の所に身を寄せていたことを知る。そして“シサム・カムイ”が密かに続けていた重大な役目についても知ることになった。
こうして“魔物”を巡る密かな決戦に突入していく…
“ネタばれ”を避けながら、大まかな物語を紹介した…不老不死の怪人が蠢く“ファンタジー”に戊辰戦争の情勢が絡まるという物語なのだが…何か「歴史の“闇”と“光”」を見詰めてみようとするような内容と、時代を超えても尊さが全く損なわれないモノが描かれているように思う。虐げられ、惨めな境涯になっても矜持を維持し、命を賭して護るべく者を護ろうとする勇士タリコナ…雄吉と善治の友情…無法には刃を向け、己を強く律し、困っている者を必死に助ける土方歳三…数多くの劇中人物達に心動かされる…
函館出身の作者による、箱館が関連する作品が3作在るということで、文庫化に際して“3部作”というような売り出し方がされているようだが…本作は他の2作品とかなり趣が異なる…
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