
富樫倫太郎/松前の花 上 中公文庫

富樫倫太郎/松前の花 下 中公文庫
↑大変愉しく読了した作品である…
箱館の五稜郭に拠って闘った人達、その周囲に在った人達の物語ということになる…
有名な土方歳三や榎本武揚というような劇中人物も登場するが…主役格となるのは、松前の菓子職人である藤吉、松前家中の重臣の娘である蘭子、二人と関る榎本軍の将校ということになる人見勝太郎と言った劇中人物達が主役である。
人見勝太郎が「直接的な発注者」という型になったのだが、箱館の旧幕府系の勢力は“兵糧”としてパンを求める。そのパンを造る者として白羽の矢が立ったのが菓子職人の藤吉だった。藤吉を奨めたのが、蘭子だ。昔馴染みの“姫様”である蘭子の推薦と知り、藤吉は当時は知識が広く知られていた訳でもなかったパンを工夫して製造すべく奮戦を始める。
パン作りに奮戦する藤吉の物語の背後に、蘭子の物語が在る。松前家中は、幕末期に血生臭い内訌を経験する羽目となっていた。家中を掌握した主流派に排斥され、蘭子の父は命を落とし、母も失った。蘭子は、松前家中が新政府側になった中、それと闘うことになった五稜郭の旧幕府軍に協力、否、身を投じた。人見勝太郎は、何時しか蘭子に惹かれた…
両親を害した“仇敵”に立ち向かおうとする悲壮な蘭子の美しさ…それを見守り、惹かれる人見…義理が在る“姫様”に喜んで頂けると仕事に打ち込む藤吉…何か非常に美しい物語だ…
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