『最終退行』

“用事”も在れば“宿題”も在り、何やらパタパタしているが、紐解き始めて面白くなってきた小説を愉しむ時間位は設けたい…

↓“用事”の関連でかなり早めに夕食を頂き、「夜食でも…」と思い付いたことから、その夜食の際に一寸読んで夢中になり、結局読了してしまった…

池井戸潤/最終退行
↑この作家の作品が、なかなかに評判が好いテレビドラマの原案となっているらしく、最近よく視掛ける本である。多少気になっていた一冊だったが、実に興味深く読了した…

“最終退行”というのは、銀行部内の用語らしい。現金や貴重品も扱う銀行では、書類仕事が多く、シャッターが下りて閉店した後、夕方の定時を過ぎても銀行員が仕事を続けている場合が多々在る。そういう時、最後に銀行から出る銀行員が鍵を預かり、確り施錠して退出する。その「鍵を預かって最後に帰る」ことを“最終退行”と言うようだ。本作の主人公は、大手銀行の羽田支店で副支店長を務める蓮沼という男で、連日のように“最終退行”をしている…

物語は1990年代の最後から2000年代初頭辺りを背景としている様子だ…冒頭は、作中人物の一人、蓮沼が勤める銀行の会長である久遠が昔手掛けた事件調査を振り返るというような、少し妙な感じになっていて…やがて、「作中の現在」になり、蓮沼の物語が始まる。

蓮沼の部下でもある塔山…若い頃に周囲に妬まれたような経過が在り、実際には仕事が出来る人物であるにも拘らず、評価が低い…が支店のスタッフ間では好い意味の“名物男”だった。彼が手掛けた融資案件が何やら妙だった…

案件に疑念を抱いた蓮沼は、案件を進めることを停めようとするが、支店長の谷はそれを通してしまった。釈然としない…

蓮沼が勤める銀行は、バブル期の不良債権で苦しんでいたが、バブル時代の頭取だった久遠が「会長に退いて引責」と言い張って、所謂“院政”の状況だった…

蓮沼はそんな状況の中、「少し無茶では?」と感じる“貸し渋り”、“貸し剥がし”の案件に向き合っていくこととなる…やがて、大変に深刻な事態が生じてしまい、「全面的に蓮沼の責任」というようなことになってしまい、蓮沼の中で何かが弾ける…

蓮沼の動き…塔山の動き…久遠の企ての行方…大変に興味深い謎解きが展開する…そして、非常に写実的だ!!

2000年代初頭辺り、或いは最近でも大きな枠組みや流れは変わっていないかもしれない、「永い期間で培われたモノをグチャグチャにしてしまっている」ような事態、その渦中で「俺の人生?」という想いを抱く人々…何か迫るモノが在る…

本作には“卑怯者”が憎々しいまでにリアルに描かれているが…或いはそういう“卑怯者”が必要以上に幅を利かせているのが“現実”なのかもしれない…

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