『ようこそ、わが家へ』

↓書店で、本書について「少し話題になっている」旨に言及が在った記事を視ていたことを思い出し、何となく入手した。

池井戸潤/ようこそ、わが家へ 小学館文庫
↑頁を繰り始めると…停まらなくなった!!素早く読了してしまった小説である…

物語の主人公は51歳のサラリーマン、倉田だ…東京の中野に在る会社に勤める倉田は、代々木、渋谷と乗換え、田園都市線が乗り入れる横浜市営地下鉄の駅辺りの住宅地に住んでいて、電車で通勤している。極々平凡な、大人しい男である。

この倉田が或る夏の日に帰宅しようと代々木駅で電車に乗ろうとしていた時、電車の乗降口に居合わせた若い女性を突き飛ばすかのようにして割り込み乗車をしようとする男が居た。普段なら「酷い人が居たものだ…」と眉を顰める程度のことなのだが、自分の娘に危害が加えられているような感じがした倉田は、思わず男を厳しく注意して無理な割り込みを止めさせた。

やがて倉田が最寄り駅に到着し、バスで自宅近くへ向かおうとした時、代々木駅の男を視たような気がした…「見知らぬ男に尾行されている?」という、言い知れぬ不快感、恐怖感を味わう羽目になる…

そして…倉田の家の庭の花壇が滅茶苦茶に荒らされていた…平和な住宅街であり、20年近くも住んでいて、一度も無かった出来事である…

他方、倉田は会社でも問題に直面していた。現在の勤務先は、本来所属している銀行からの出向先だった。その会社の幹部による伝票に不審なことが在り、数少ない仕事が出来る部下から報告を受けた倉田は苦慮していたのだった…

倉田、妻、大学2年の息子、高校3年の娘という、家族間の関係も比較的良好な普通の家庭に襲い掛かった奇怪な事件の行方…倉田が苦慮する勤務先の問題…2つの事件が縄をなうように展開する、なかなか読ませてくれる物語だ…

“名無し”という「匿名の個人」が寄り集まった中で、何処か変質した感の社会の中だが、「匿名の個人」にも各々の「大切な家族」、「大切な人生」が在る…そういう「半ば見失っているかもしれないような当たり前」を、見詰め直してみたくなるような物語である…

読後に…「倉田家のその後?」というような思いも少し沸く感じだった…

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